重心
三角形に対して、辺の中点をとする。辺, 辺についても同様に考えてを定義する。
定理: 直線は一点で交わる。
この一点を重心という。
特徴: 重心をとすると、が成り立つ。
垂心
三角形に対して、点から辺への垂線の足をとする。辺, 辺についても同様に考えてを定義する。
定理: 直線は一点で交わる。
この一点を垂心という。
外心
三角形に対して、辺の垂直二等分線をとする。辺, 辺についても同様に考えてを定義する。
定理: は一点で交わる。
この一点を外心という。
特徴: 外心は三角形の外接円の中心である。
内心
三角形に対して、の二等分線をとする。角, 角についても同様に考えてを定義する。
定理: は一点で交わる。
この一点を内心という。
特徴: 内心は三角形の内接円の中心である。
傍心
三角形に対して、の二等分線をとする。また、角の外角、角の外角の二等分線をそれぞれとする。
定理: は一点で交わる。
についても同様に考えることによって得られる三角形の外側の三つの点を傍心という(つまり、傍心は三つある)。
特徴: 定理で定まる点は辺, 直線, 直線に接する円(傍接円)の中心である。
第一Fermat-Torricelli点
三角形に対して、を一辺とする二つの正三角形のうち直線について点と反対側にあるものをとする。辺, 辺についても同様に考えてを定義する。
定理: の外接円との外接円との外接円は一点で交わる。
この一点を第一Fermat-Torricelli点という。
特徴: 三角形が内角が以上の頂点を持たないとき、第一Fermat-Torricelli点は三頂点からの距離の和が最小となるような点になっている。また、になっている。
第二Fermat-Torricelli点
三角形に対して、を一辺とする二つの正三角形のうち直線について点と同じ側にあるものをとする。辺, 辺についても同様に考えてを定義する。
定理: の外接円との外接円との外接円は一点で交わる。
この一点を第二Fermat-Torricelli点という。
参考記事: 三角形の五心の話(10)Fermat点
Napoléonの三角形とNapoléon点
第一・第二Fermat-Torricelli点の記号を利用する。
定理: の重心をそれぞれ結んでできる三角形は正三角形である。また、の重心をそれぞれ結んでできる三角形も正三角形である。これら二つの正三角形の重心は三角形の重心と一致する。
これらの正三角形をそれぞれNapoléonの外三角形・内三角形という。
定理: の重心をそれぞれとする。このとき、直線は一点で交わる。
この一点を第一Napoléon点という。
定理: の重心をそれぞれとする。このとき、直線は一点で交わる。
この一点を第二Napoléon点という。
参考記事: ナポレオンの定理とナポレオン点
Euler線
三角形の重心・垂心・外心をそれぞれをとする。
定理: は同一直線上に存在する。
が正三角形でないとき、この直線をEuler線という。
特徴: が成り立つ。
九点円
三角形に対して、重心・垂心の項目で定義した点を考え、を垂心とする。の中点ををそれぞれとする。
定理: 九点は同一円周上に存在する。
この円を九点円という。
特徴: 九点円の中心はEuler線上にあり、外心と垂心の中点である。
Feuerbachの定理
定理: 三角形の内接円と九点円は内接し、傍接円と九点円は外接する。
沢(澤)山勇三郎はこの定理の証明を二十二通り与えたらしい。
Lesterの定理
この定理によって存在する円のことをLester円という。要は次のようになっているということだ:
この記事ではN. I. BeluhovによるLesterの定理の証明を紹介する。
Beluhovの補題
だとが存在しない。
証明. に関してと対称な点を, と対称な点をとする。
示すべきことはが直線上にあることである。理由: に関する対称変換でと対応しており、直線は直線に移るため。
各点の定義からが成り立つ。
また、
と角度を追跡できる。よって、
三角形と三角形は互いに相似な二等辺三角形であり、底角はに等しい
ことがわかった。
接弦定理より三角形と三角形は相似である。この相似が定める変換 によって、点をと定義する(とが対応する)。このとき、
という相似があるため、であることから
が従う。すると、三角形が二等辺三角形であることを思い出すと、二組の対辺がそれぞれ等しいので四角形は平行四辺形である。
また、
と角度を追跡できるので、点は直線上にあることがわかる。よって、直線と直線は平行である。
点をベクトルの等式
が成り立つように導入する。すると、三辺相等によって
が成り立つ。よって、
が成り立ち、直線と直線は平行なので錯角を見ると
が得られる。三角形の外接円と直線の交点をとする。示すべきことはである。
円周角の定理よりなので、.
同様に、
および円周角の定理からわかるよりを得る。
よって、一辺両端角相等よりが成り立ち、これはを示している。 Q.E.D.
第一・第二Fermat-Torricelli点とNapoléonの三角形の関係
証明. 三角形を考える。第一・第二Fermat-Torricelli点の定義で使った正三角形の記号を用いる。これら六つの正三角形の重心をそれぞれとする。第一Fermat-Torricelli点を, 第二Fermat-Torricelli点をとする。Napoléonの定理よりおよびはともに正三角形である。
と分割する。
は同一円周上にある。理由: 定義よりが成り立つので、はの外接円上にある。よって、定義よりもこの上にある。
よって、円周角の定理より.
同様には同一円周上にあるので.
故にが成り立ち、円周角の定理の逆によっては三角形の外接円上にあることがわかる。
次に、と分割する。
は同一円周上にある。理由: 定義よりが成り立つので、はの外接円上にある。よって、定義よりもこの上にある。
よって、円周角の定理より.
同様には同一円周上にあるので.
故にが成り立ち、円周角の定理の逆によっては三角形の外接円上にあることがわかる。 Q.E.D.
Lesterの定理の証明
不等辺三角形を考えて、上記定理と同じ記号を用いる。正三角形およびの重心は三角形の重心に一致する。
主張の証明. 上述の定理およびの定義よりは中心の円と中心の円の共通弦となっており、従っては直線に関するの対称点となっている。また、は中心の円と中心の円の共通弦となっており、は直線に関するの対称点となっている*1。定義よりとは互いに直線に関して対称な位置にあるのでである。これよりがわかり、よりは直線上にはなくは三角形をなしていることからおよびも三角形をなすことわかり、直線が三角形の外接円のにおける接線と平行でないことがわかる。よって、三角形に対してBeluhovの補題を適用することができ、帰結としては直線上にあることが従う。, に対しても同様に考えることによっては三直線の交点であることが示された。ところで、定義からはそれぞれ辺の垂直二等分線である。つまり、は三角形の外心である。 主張の証明終わり.
三角形の九点円の中心をとする。三角形の垂心をとすると、はEuler線(=直線)上にあり、, が成り立つのであった。つまり、=であり、もEuler線上にあってはの中点となっている。よって、方べきの定理より
が成り立ち、方べきの定理の逆より四点は同一円周上にあることが示された。 Q.E.D.
*1:この時点ではの可能性を論じていないが、仮に等号が成り立ったとしても対称であるという主張は正しい。