絶対収束と条件収束
冒頭の証明のどこが間違っているかというと、(⭐︎)の行を等号で結んでいる箇所で、無限級数においては有限和のときに成立した「項の順序を入れ替えても和は変わらない」という法則が一般には破れます。
高木貞治著『解析概論』の言葉を引用すれば
収束性を度外において, 無限級数を有限級数のように放漫に取扱って, しばしば不可解の矛盾に逢着したことは, 18世紀数学の苦い経験であったのである.
絶対収束級数は再配列しても同じ和をとる
証明. 級数は絶対収束し、その和がであると仮定する。全単射を任意にとる。を示せばよい。
とし、任意にをとる。
まず、なので、番号が存在して
が成り立つ。また、が絶対収束するという仮定からなので、番号が存在して
が成り立つ。が全単射なので、に対してとなるようなが一意的に定まる。
、とする。このとき、
に注意する。としよう。すると、
であり、
が得られる。 Q.E.D.
Riemannの再配列定理
証明. 条件収束級数を考える。のうち、負であるような項が有限個しか存在しないと仮定しよう。すると、有限個の項は級数の収束に影響を与えないので、の収束は絶対収束であることがわかる。これは条件収束であることに反するので、負であるような項は無数に存在することがわかる。同様に、正であるような項も無数に存在する。
とし、級数およびを考える。この二つの級数がどちらも収束すると仮定すると、
よりが条件収束であることに矛盾し、片方が収束して他方が発散すると仮定すると、
よりが収束することに矛盾する。すなわち、これら二つの級数はともに発散することがわかる(直前の式は所謂"不定形"となる)。
任意の実数を考えよう。これより、を再配列してに収束させる。
の場合、が発散するので、が存在して
が成り立つ(のときはとする。以下、同様)。
次に、が発散するので、が存在して
が成り立つ。
次にが存在して
が成り立ち、が存在して
が成り立つ。この操作を永遠に繰り返す。得られる級数を
と表現することにすると、
が成り立っている。が収束するので、であることに注意すると
が示され、これはの再配列になっている(である項はダブっているかもしれないが問題ない)。 の場合も同様。Q.E.D.