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数、特に整数に関する記事。

24:階乗とガンマ関数

「君の靴のサイズはいくつかね」
「24です」
「ほお、実に潔い数字だ。4の階乗だ。」
「カイジョウとは何でしょうか」
「1から4までの自然数を全部掛け合わせると24になる」


小川洋子著『博士の愛した数式』より

階乗

もっと一般に1からnまでを掛け合わせた数をnの階乗とよび、n!と表します。便宜上、0!:=1と定義します。

この記号はフランスの数学者Christian Krampが1808年に導入しました。それ以前では例えばGaussは記号\Pi (n)を用いていました。「階乗はびっくりするぐらい速く大きくなっていくから、感嘆符 ! を用いる」という話をよく聞きますが、今回気になって調査したところ、Krampがそのような観点からこの記号を導入したという証拠は見つかりませんでした。

しかしながら、びっくりするぐらい速く大きくなっていくのは事実です。階乗を小さい順にいくつか並べてみましょう。

\begin{align}0!&=1\\ 
1!&=1,\\
2!&=2\\
3!&=6\\
4!&=24\\
5!&=120\\
6!&=720\\
7!&=5040\\
8!&=40320\\
9!&=362880\\
10!&=3628800\\
11!&=39916800\\
12!&=479001600\\
13!&=6227020800\\
14!&=87178291200\\
15!&=1307674368000\\
16!&=20922789888000\\
17!&=355687428096000\\
18!&=6402373705728000\\
19!&=121645100408832000\\
20!&=2432902008176640000\\
21!&=51090942171709440000\\
22!&=1124000727777607680000\end{align}

指数関数は成長スピードが速い関数として有名ですが、階乗の大きくなるスピードは指数関数より速いです。実際、次の極限公式を大学初年度に習います:

極限公式 a>0のとき、\displaystyle \lim_{n \to \infty}\frac{a^n}{n!}=0が成り立つ。

証明. k\geq 2aなる整数kをとる。すると、l > kなる整数lに対して\displaystyle \frac{a}{l} < 2^{-1}が成り立つので、n > kに対して、

\displaystyle \frac{a^n}{n!} = \frac{a^k}{k!}\cdot \frac{a}{k+1}\cdots \frac{a}{n} < \frac{a^k}{k!}\cdot 2^{-(n-k)} = \text{定数}\times 2^{-n} \to 0 \ \  (n \to \infty).
Q.E.D.

素数階乗

階乗の類似概念として、素数階乗と呼ばれるものがあるので、ついでに紹介しておきます。nを自然数とするとき、p_nn番目の素数を表すことにします。このとき、素数階乗p_n\#p_1\times \cdots \times p_nと定義します(便宜上、p_0\#:=1とします)。例)p_3\#=2\times 3\times 5=30. 素数階乗についてもいくつか数値を見ておきましょう:

\begin{align}p_0\#&=1\\
p_1\#&=2\\
p_2\#&=6\\
p_3\#&=30\\
p_4\#&=210\\
p_5\#&=2310\\
p_6\#&=30030\\
p_7\#&=510510\\
p_8\#&=9699690\\
p_9\#&=223092870\\
p_{10}\#&=6469693230\\
p_{11}\#&=200560490130\\
p_{12}\#&=7420738134810\\
p_{13}\#&=304250263527210\\
p_{14}\#&=13082761331670030\\
p_{15}\#&=614889782588491410\\
p_{16}\#&=32589158477190044730\\
p_{17}\#&=1922760350154212639070\end{align}

一般に、実数xに対して「x以下の素数の積」をx\#と表します。

ガンマ関数

階乗は非負整数に対して定義されましたが、ガンマ関数という関数を導入することによって、より広い範囲に拡張することができます。階乗はある意味で素朴な概念というか、単なる省略記号のような気もするのですが、そのような素朴な概念の拡張として得られるガンマ関数は、現代数学において欠かすことのできない極めて重要な関数です。以下、定義から初めて、基本的な性質を見てみましょう。

命題&定義 積分で定義される、複素数s \in \mathbb{C}に関する関数
\displaystyle \Gamma (s) := \int_0^{\infty}e^{-x}x^{s-1}dx
\mathrm{Re} (s) > 0で広義一様に絶対収束し、正則関数を定める。ただし、 x^{s-1} = e^{(s-1)\log x}である。\Gamma (s)ガンマ関数とよばれる。

証明. \left|x^{s-1}\right|=x^{\mathrm{Re}(s)-1}に注意する。x \to 0における収束性は0 < \mathrm{Re} (s) < 1のときに問題となり、このとき

x^{1-\mathrm{Re}(s)}(e^{-x}x^{\mathrm{Re(s)-1}})=e^{-x} \to 1 \ (x \to 0)

により、また、x \to \inftyにおける収束性は

x^2(e^{-x}x^{\mathrm{Re}(s)-1}) \to 0 \ (x \to \infty)

により、\Gamma (s)\mathrm{Re}(s) > 0で広義一様収束することがわかる。よって、Moreraの定理から正則性が従う。 Q.E.D.

\displaystyle \Gamma (1) = \int_0^{\infty}e^{-x}dx=1であり、部分積分により\mathrm{Re}(s)>0のとき、

\displaystyle \Gamma (s+1) = \int_0^{\infty}e^{-x}x^sdx = \Bigl[ -e^{-x}x^s \Bigr]_0^{\infty} + s\int_0^{\infty}e^{-x}x^{s-1}dx=s\Gamma (s)

が成り立つので、自然数nに対して\Gamma (n) = (n-1)!が成り立つ。すなわち、ガンマ関数は階乗の概念を一般化した対象であることがわかる。

定理 ガンマ関数は複素平面全体に有理型に解析接続される。零点は持たず、極は
s=0, -1, -2, \dotsにのみ持つ。これらは全て1位の極であり、s=-n \ (-n \in \mathbb{Z}_{\geq 0})における留数は(-1)^n/n!である。

証明. 0 < \mathrm{Re}(s) < 1における\Gamma (s)の値から、関係式

\displaystyle \Gamma (s) = \frac{\Gamma (s+1)}{s}

によって、\Gamma (s)\mathrm{Re}(s) > -1に解析的に延長できる。 同様にして\mathrm{Re}(s) > -2, \mathrm{Re}(s) > -3, \dotsへと次々に延長でき、関係式 \Gamma (s+1) = s\Gamma (s) が成り立つように\Gamma (s)は全平面へ解析接続される。 \Gamma (s)が零点を持たないことは後述の無限積表示より従い、s = 0, -1, -2, \dotsのみを極に持つことは関係式より明らか。非負整数nについて

\displaystyle \Gamma (s) = \frac{\Gamma (s+n+1)}{s(s+1)\cdots (s+n)}

が成り立つので、\Gamma (1) = 1に注意すれば留数に関する主張が成り立つことがわかる。 Q.E.D.

定理 (Weierstrassの無限積表示)
複素平面全体で\displaystyle \frac{1}{\Gamma (s)} = e^{\gamma s}s\prod_{n=1}^{\infty}\left( 1+ \frac{s}{n} \right) e^{-\frac{s}{n}}が成り立つ。

\gammaはEulerの定数である。
integers.hatenablog.com

証明. まず、右辺の無限積が全平面で絶対収束かつ広義一様収束することを示す(従って、全平面で正則である)。R > 0を任意に固定し、|s| \leq Rとする。n \to \inftyのとき、

\displaystyle \left| \left( 1+\frac{s}{n} \right) e^{-\frac{s}{n}}-1 \right| = O\left( \frac{R^2}{n^2} \right)

であることを示せばよい(\zeta (2)が収束することから、左辺をnについて足し合わせた和も収束することがわかる)。n > Rのとき、|s|/n < 1なので、\displaystyle f(z) = \frac{(1+z)e^{-z}-1}{z^2}|z|\leq 1で有界であればよい。今、f(z)は全平面で正則であるので、この主張が正しいことがわかる(z = 0での正則性のみが問題であるが、分子をTaylor展開すれば確認できる)。
次に、所望の等式の証明にうつるが、解析接続の一意性により、例えば0 < s < 1において等式が成り立つことを示せば十分である。以下、0 < s < 1と仮定する。まず、 \log \Gamma (s)が凸関数であることに注意する。これは次のように示される: \Gamma (s)の一階および二階微分は積分記号下での微分が許され、

\displaystyle \Gamma^{\prime}(s) = \int_0^{\infty}e^{-s}x^{s-1}\log xdx, \displaystyle \Gamma''(s) = \int_0^{\infty}e^{-x}x^{s-1}(\log x)^2dx

が成り立つ(これらの積分が広義一様収束することを見る必要があるが、適当なガンマ関数の値で上から評価することにより示せる)。 よって、任意の実数tに対して

\displaystyle \Gamma (s)t^2 + 2\Gamma'(s)t + \Gamma''(s) = \int_0^{\infty}e^{-x}x^{s-1}(t + \log x)^2dx \geq 0

が成り立つので、\Gamma'(s)^2 - \Gamma (s)\Gamma''(s) \leq 0である。従って、

\displaystyle \frac{d^2}{ds^2}\log \Gamma (s) = \frac{\Gamma (s)\Gamma'' (s)-\Gamma' (s)^2}{\Gamma (s)^2} \geq 0

となって\log \Gamma (s)の凸性が示された。
よって、n - 1 < n < n + s, \ n < n + s < n + 1\log \Gamma (s)の傾きの大きさを比べることにより、

\displaystyle \log \Gamma (n) - \log \Gamma (n - 1) \leq \frac{\log \Gamma (n + s) - \log \Gamma (n)}{s} \leq \log \Gamma (n + 1) - \log \Gamma (n),

すなわち、

\displaystyle \log (n - 1) \leq \frac{\log \Gamma (n + s) - \log((n - 1)!)}{s}\leq \log n.

更に、

\displaystyle (n - 1)^s(n - 1)! \leq \Gamma (n + s) \leq n^s(n - 1)!

を得る。ガンマ関数の関数等式を繰り返し用いることにより、

\displaystyle \Gamma (n + s) = \prod_{k=0}^{n-1}(s+k)\Gamma (s)

が成り立つので、

\displaystyle \frac{(n-1)^s(n-1)!}{\prod_{k=0}^{n-1}(s+k)} \leq \Gamma (s) \leq \frac{n^s(n-1)!}{\prod_{k=0}^{n-1}(s+k)}

となり、n\geq 2は任意なので、左辺のみn \mapsto n+1と置き換えることにより、

\displaystyle \frac{n^sn!}{\prod_{k=0}^n(s+k)}\leq \Gamma (s) \leq \frac{n^sn!}{\prod_{k=0}^n(s+k)}\cdot \frac{s+n}{n}

を得る。よって、

\displaystyle \Gamma (s) \frac{n}{n+s} \leq \frac{n^sn!}{\prod_{k=0}^n(s+k)}\leq \Gamma (s)

であり、n \to \inftyとすることにより、

\displaystyle \Gamma (s) = \lim_{n \to \infty}\frac{n^sn!}{\prod_{k=0}^n(s+k)}

が示された。

\displaystyle \frac{\prod_{k=0}^n(s+k)}{n^sn!}=e^{(\sum_{k=1}^n\frac{1}{k}-\log n)s}s\prod_{k=1}^n\left( 1+ \frac{s}{k}\right) e^{-\frac{s}{k}}

に注意することにより、 0 < s < 1で所望の等式が証明されたことがわかる。よって、予告していた通り、解析接続の一意性により全平面で等号成立するのである。 Q.E.D.

ここで、正弦関数の無限積表示を復習する:

命題 \ \ \ \displaystyle \sin \pi x = \pi x \prod_{n=1}^{\infty} \left( 1-\frac{x^2}{n^2} \right).

定理 (相反公式) \ \ \ \displaystyle \Gamma (s) \Gamma (1-s) = \frac{\pi}{\sin \pi s}.

証明. \Gamma (1-s)=-s\Gamma (-s)なので、Weierstrassの無限積表示より、

\displaystyle \frac{1}{\Gamma (s)\Gamma (1-s)} = s\prod_{n=1}^{\infty}\left( 1 - \frac{s^2}{n^2} \right)

が成り立つ。よって、正弦関数の無限積表示より、所望の公式を得る。 Q.E.D.

相反公式において、s=1/2とすることによって、次の特殊値を得る:

  \Gamma (1/2) = \sqrt{\pi}.

高校生のとき、 (1/2)! = \sqrt{\pi}/2と先生に言われて驚いたものであるが、この公式のことを指していたのである。なお、この系においてx\mapsto x^2と変数変換することにより、Gaussの積分

\displaystyle \int_0^{\infty}e^{-x^2}dx=\frac{\sqrt{\pi}}{2}

を得る。

最後に2倍公式を紹介して、今回の記事を締めくくろう。

定理 (Legendreの2倍公式)
\displaystyle \sqrt{\pi}\Gamma (2s) = 2^{2s-1}\Gamma (s) \Gamma (s+1/2)

証明. ガンマ関数の無限積表示から、\log \Gamma (s)を二階微分することにより、\displaystyle \frac{d}{ds}\left( \frac{\Gamma' (s)}{\Gamma (s)} \right) = \sum_{n=0}^{\infty}\frac{1}{(s+n)^2}が得られる(右辺の和は広義一様収束するので、項別微分可能である)。よって、

\displaystyle \begin{equation}\begin{split}
&\frac{d}{ds}\left( \frac{\Gamma' (s)}{\Gamma (s)} \right) + \frac{d}{ds} \left( \frac{\Gamma' (s+1/2)}{\Gamma (s+1/2)} \right) = \sum_{n=0}^{\infty}\frac{1}{(s+n)^2}+\sum_{n=0}^{\infty}\frac{1}{(s+n+1/2)^2} \\
= \ & 4\left\{ \sum_{n=0}^{\infty}\frac{1}{(2s+2n)^2}+\sum_{n=0}^{\infty}\frac{1}{(2s+2n+1)^2} \right\}
=4\sum_{n=0}^{\infty}\frac{1}{(2s+n)^2}\\
= \ &2\frac{d}{ds}\left( \frac{\Gamma' (2s)}{\Gamma (s)} \right) \end{split}\end{equation}

であるから、積分することにより、定数A, Bが存在して\Gamma (s)\Gamma (s+1/2) = e^{Az+B}\Gamma (2s)が成り立つ。A, Bs=1, 1/2を代入することにより、決定できる。 Q.E.D.