インテジャーズ

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数、特に整数に関する記事。

23:Ramanujanのτ関数の満たす合同式と23の不思議

23と言えばマイケルジョーダン素数ですが、或いは円分体の類数を思い出す人も多いでしょう。

5/13の記事において、素数pに対するRamanujanの\tau関数の値\tau (p)の素因数分解データを100個掲載しました:
integers.hatenablog.com

その素因数分解を眺めていると、2, 3, 5, 7という小さな素因数が頻繁に現れることが見て取れる他に、23 がよく出現することに気が付きます(最初の100例のうち、56個が23で割り切れる)。この記事ではその不思議に少し迫ってみたいと思います。

Ramanujanの\tau関数が満たす合同式

pを素数とするとき、\tau (p)に関する合同式として

\tau (p) \equiv 1+p^{11} \pmod{2^8}pは奇素数)

および

\tau (p) \equiv 1+p^{11} \pmod{691}

を既に紹介しました。一つ目の合同式と\tau (2)=-24から\tau (p)は常に偶数であることが分かります。実はこれら以外にも例えば次のような合同式が知られています*1

\bmod{3^3}

\tau (p) \equiv p^2+p^{9} \pmod{3^3}p\neq 3

これより、p \equiv -1 \pmod{3^i}ならば\tau (p) \equiv 0 \pmod{3^i}であることが分かります
(i=1, 2, 3)。

\bmod{5^2}

\tau (p) \equiv p+p^{10} \pmod{5^2}

これより、p \equiv -1 \pmod{5^i}ならば\tau (p) \equiv 0 \pmod{5^i}であることが分かります
(i=1, 2)。

\bmod{7}

\tau (p) \equiv p+p^{4} \pmod{7}

これより、p \equiv -1 \pmod{7}ならば\tau (p) \equiv 0 \pmod{7}であることが分かります。

23の場合

以上のように、素数2, 3, 5, 7, 691に関しては\tau (p)に関する特徴的な合同式があることが分かります*2。そして、最初に示唆したように23についても合同関係があります:

定理 素数p \neq 23が法23において平方非剰余であるならば、\tau (p)23で割り切れる。

平方剰余については
integers.hatenablog.com
を参照してください。

上記定理によって、

p \equiv 5, 7, 10, 11, 14, 15, 17, 19, 20, 21, 22 \pmod{23}

なる素数pに対しては\tau (p)23で割り切れることが分かります(実は逆も言える)。これはDirichletの算術級数定理の観点*3から全素数の半数がこの性質を満たすことになります。最初の100個の素数のうち56個に対して\tau (p)23の倍数であったので、この範囲では半分より少しだけ多いと言えます。

この記事では\bmod{2, 3, 5, 7}に関する証明は紹介しませんが、上記定理の証明を紹介したいと思います。

定理の証明. 次の形式的冪級数を考える:

\displaystyle \theta (x) := \prod_{m=1}^{\infty}(1-x^{m})

(1-x^m)^{23} \equiv 1-x^{23m} \pmod{23}より、

\theta (x)^{24} \equiv \theta (x)\theta (x^{23}) \pmod{23}

が成り立つことが分かる。よって

\Delta \equiv q\theta (q)\theta (q^{23})\pmod{23}

を得る。一方、tsujimotter氏の記事で解説された五角数定理を思い出す:

五角数定理 \ \ \ \displaystyle \theta (q) = \sum_{r=-\infty}^{\infty}(-1)^rq^{\frac{r(3r+1)}{2}}.

tsujimotter.hatenablog.com

五角数定理によって、

\displaystyle \tau (p) \equiv \sum_{p=1+\frac{r(3r+1)}{2}+\frac{23s(3s+1)}{2}}(-1)^{r+s} \pmod{23}

が得られる。ここで、和は\displaystyle p=1+\frac{r(3r+1)}{2}+\frac{23s(3s+1)}{2}なる整数の組(r, s)が存在するような素数p全体を走る。次の合同式に注意する:

\begin{equation}\begin{split} p &= 1+\frac{r(3r+1)}{2}+\frac{23s(3s+1)}{2} \\ &\equiv 1+\frac{r(3r+1)}{2}\\ &= \frac{36r^2+12r+24}{24} \\ &\equiv (6r+1)^2 \pmod{23}.\end{split}\end{equation}

これより、pが法23で平方非剰余であれば\tau (p) \equiv 0 \pmod{23}であることが分かった。 Q.E.D.

ミステリー

以上で目標の定理を証明できました。ところで、Eulerの規準によれば

\displaystyle \left( \frac{p}{23} \right) \equiv p^{11} \pmod{23}

p \neq 23に対して成り立つため、pが法23で平方非剰余であれば

1+p^{11}-\tau (p) \equiv 0\pmod{23}

も成り立つことが分かります。これが最初に引用した記事の最後の1+p^{11}-\tau (p)の数値例においてもその素因数分解にやたら23が出現した理由です。

ところが、数値例を眺めるとp=59, 167, 211, 223, 271, 307, 317, 347, 449に対しては法23で平方剰余であって\tau (p)23で割り切れないですが、1+p^{11}-\tau (p)23の二乗で割り切れていることが分かります。しかも、法23で平方剰余であるような素数がいつだってこの性質をもつわけでもないようです(例えば13は平方剰余であるが、\tau (13)23で割り切れない)。一体、何が起きているのでしょう?これは謎のままにして将来の記事に託すことにします*4

*1:例えばの意味は指数について知られている最善の結果を載せるわけではないという意味です(簡単のため)。実際、以前\bmod{2^{11}}の合同式を紹介しましたが、この記事では\bmod{2^8}の合同式のみを載せています。

*2:691のときと同様\tau (n)の場合の合同式は約数総和関数の一般化である\sigma_k(n)に関するものが成り立ちます。

*3:解析的密度が1/2

*4:私は答を知っていますが演出です。念のため。