と言えばマイケルジョーダン素数ですが、或いは円分体の類数を思い出す人も多いでしょう。
5/13の記事において、素数に対するRamanujanの関数の値の素因数分解データを100個掲載しました:
integers.hatenablog.com
その素因数分解を眺めていると、という小さな素因数が頻繁に現れることが見て取れる他に、がよく出現することに気が付きます(最初の100例のうち、56個がで割り切れる)。この記事ではその不思議に少し迫ってみたいと思います。
Ramanujanの関数が満たす合同式
を素数とするとき、に関する合同式として
および
を既に紹介しました。一つ目の合同式とからは常に偶数であることが分かります。実はこれら以外にも例えば次のような合同式が知られています*1:
これより、ならばであることが分かります()。
これより、ならばであることが分かります()。
これより、ならばであることが分かります。
の場合
以上のように、素数に関してはに関する特徴的な合同式があることが分かります*2。そして、最初に示唆したようにについても合同関係があります:
平方剰余については平方剰余の相互法則 - INTEGERSを参照してください。
上記定理によって、
なる素数に対してはがで割り切れることが分かります(実は逆も言える)。これはDirichletの算術級数定理の観点*3から全素数の半数がこの性質を満たすことになります。最初の100個の素数のうち56個に対してがの倍数であったので、この範囲では半分より少しだけ多いと言えます。
この記事ではに関する証明は紹介しませんが、上記定理の証明を紹介したいと思います。
定理の証明. 次の形式的冪級数を考える:
より、
が成り立つことが分かる。よって
を得る。一方、五角数定理
によって、
が得られる。ここで、和は
なる整数の組が存在するような素数全体を走る。次の合同式に注意する:
これより、が法で平方非剰余であればであることが分かった。 Q.E.D.
ミステリー
以上で目標の定理を証明できました。ところで、Eulerの規準によれば
がに対して成り立つため、が法で平方非剰余であれば
も成り立つことが分かります。これが最初に引用した記事の最後のの数値例においてもその素因数分解にやたらが出現した理由です。
ところが、数値例を眺めるとに対しては法で平方剰余であってはで割り切れないですが、はの二乗で割り切れていることが分かります。しかも、法で平方剰余であるような素数がいつだってこの性質をもつわけでもないようです(例えばは平方剰余であるが、はで割り切れない)。一体、何が起きているのでしょう?これは謎のままにして将来の記事に託すことにします*4。