この記事では1899年にFrank Morleyが証明した初等幾何学に関するMorleyの定理のAlain Connesによる証明を解説します。Morleyの定理については
を参照してください。
エピソード
Connesがこの証明を発表するに至った経緯には少し面白いエピソードがあります。Connesはとある昼食時に同僚から聴いて始めてMorleyの定理を知ったらしいのですが、その同僚は間違って、Morleyの定理ではなくNapoléonの定理としてこの定理を紹介したそうなのです。そして、Connesは家へ帰り自分の頭でこの定理の証明を考えました。Fields賞受賞者が初等幾何学の問題に取り組むことに多少興味が惹かれますが、彼はこう語っています:
My only motivation besides curiosity was the obvious challenge "This is one of the rare achievements of Bonaparte I should be able to compete with".
そして挑戦の結果Connesは今回紹介する証明にたどり着きました。結局Napoléonの定理ではなかったのですが。。。*1
Connesの定理
を任意の体とする。群を
と定義し、準同型写像 を成分を返す写像とする。作用をに対して、で定義すると、のときに唯一の固定点
を持つ。
証明. とする()。
なので、
である。よって、であることから、が成り立つための必要十分条件は かつ
が成り立つことである。そうして、①の左辺はの条件下で
に等しい。これは例えば次のようにして証明できる。まず、
であり、であることから
これらに注意して②をの多項式として例えば計算機で展開する*2。その後、で次数下げし、更にに注意すれば①の左辺に等しいことがわかる。
よって、条件はかつ②となり、の定義からなので、②は
と同値である。 Q.E.D.
Morleyの定理の証明
高校数学の美しい物語さんの記事にある図形を複素平面上に一つ書き、点に対応する複素数をそれぞれ とし、に対応する複素数をそれぞれ 、角○, △, ●の大きさをそれぞれ とする。とし、をを中心とする回転、をを中心とする回転、をを中心とする回転とする。をそれぞれ直線()に対称な点に移す変換とする。このとき、
が成り立つ。理由: を示せば十分である。は定義からを中心とする回転である。の偏角を、の偏角をとする。を任意にとったとき、
であることは初等的にわかる(バーは複素共役では虚数単位)。よって、同じ操作をもう一度行うことによって
となる。なので、これはを中心とする回転になっている。
よって、
を得る。また、初等幾何学的に
になっていることがわかるので、Connesの定理より、に対して
が成り立つことがわかる。これは、
と書き直せ、三角形が正三角形であることを示している。 Q.E.D.
*2:適切でさえあれば手計算でもよい。