この記事ではCarlemanの不等式の証明を解説します:
定理 (Carleman, 1922) を正の実数列であって、が収束するようなものとする。このとき、不等式が成り立つ。
証明は色々知られていますが、かなり初等的なものを紹介します。
準備
補題 自然数に対して、等式が成立する。
証明. 例えば数学的帰納法で確かめられる。 Q.E.D.
任意の自然数に対して
なので、
が成り立つことがわかります。
Carlemanの不等式の証明には、望遠鏡和および相加相乗平均の不等式を用います。
Carlemanの不等式の証明
準備を用いれば、
と不等式評価できる。ここで、最後の不等号は無限和をとっているので等号を取り除けるかは分からないが、相加相乗平均の不等式の部分の等号は成立しない。というのも、もし全てのに対して等号が成立するならばとなり、調和級数が発散することから定理の条件が不成立になってしまう。 Q.E.D.
調和級数の発散については16843:ウォルステンホルム素数、調和数、調和級数、オイラーの定数 - INTEGERSを参照してください。
eがbest possibleであること
命題 (Carleman, 1922) に対して、なる正の実数列であって、が収束するようなものが存在する。
証明. の定義から
なる番号が存在する。を
が成り立つようにとる(これは、調和級数が発散することから可能である)。さて、
によってを定める。和が収束するのは明らかである。また、
が成り立つ。以上の構成より、
Q.E.D.