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数、特に整数に関する記事。

Grimmの予想

予想 (Grimm, 1969) kを正整数とする。このとき、任意の連続するk個の正整数n+1, \dots, n+kに対して、各n+j \ (1\leq j \leq k)の或る素因数p_jが存在して、p_1, \dots, p_kは相異なる。

これは論文

C. A. Grimm, A conjecture on consecutive composite numbers, Amer. Math. Monthly 76 (10) (1969), 1126–1128.

で提出された予想です*1。この論文では具体例として


\begin{align}1802 &=2\times 17 \times 53\\
1803 &= 3 \times 601 \\
1804 &=2^2 \times 11 \times 41 \\
1805 &=5 \times 19^2 \\
1806 &=2 \times 3 \times 7 \times 43 \\
1807 &=13 \times 139 \\
1808 &= 2^4 \times 113 \\
1809 &=3^3 \times 67 \\
1810 &= 2 \times 5 \times 181\end{align}


があげられており、相異なる9個の素数を53, 601, 41, 19, 43, 139, 113, 67, 181と選べます*2

また、予想に関連して次の二つの定理を証明しています。一つ目は任意の長さの素数砂漠の存在を示すときに現れる有名な連続整数についてです。

定理1 整数n \geq 2に対するn-1個の連続整数n!+2, \dots, n!+nは予想を満たす。すなわち、2 \leq k \leq nを固定するとき、n!+kn!+j (j\neq k, 2 \leq j \leq n)を割り切らないような素因数をもつ。

証明. \lambda_k:=n!/kとすると、n!+k=k(\lambda_k+1)である。
\lambda_k+1が素数のとき: \lambda_k+1 \geq nなので、n!+2, \dots, n!+nの中には\lambda_k+1の倍数は一つしかない。

\lambda_k+1kがともに合成数であるとき: このときはn以下の全ての素数は\lambda_kを割り切るので、\lambda_kと互いに素な\lambda_k+1の素因数は全てnより大きく、やはりそれらはn!+kしか割り切らない。

\lambda_k+1が合成数でkが素数のとき: k \leq n/2のとき: 2k \leq n\lambda_kを割り切るため、この場合もn以下の全ての素数は\lambda_kを割り切り、後は同様。k > n/2のとき: kn!+jを割り切ったと仮定すると、k \mid jとなるが、j=klとするとnl/2 < j \leq nよりl < 2となって、k=jとなる。 Q.E.D.

定理2 kを正整数とする。このとき、n > k^{k-1}を満たすような連続するk個の正整数n+1, \dots, n+kに対して、各n+j \ (1\leq j \leq k)の或る素因数p_jが存在して、p_1, \dots, p_kは相異なる。

証明.jについてn+jの所望の素因数p_jの存在を示したいわけであるが、もしn+jの素因数の個数がk個以上であれば、n+j以外のk-1個の数から取ってきた素因数達と異なる素因数を必ず選べるため、それがp_jとなる。よって、n+jの素因数の個数がk個未満である場合を考える。すると、n+j=p_{1,j}^{e_{1,j}}\cdots p_{l,j}^{e_{l,j}} \ (1 \leq {}^{\exists}l \leq k-1)と素因数分解される。このとき、

p_{1,j}^{e_{1,j}}\cdots p_{l,j}^{e_{l,j}}=n+j > n > k^{k-1}

なので、鳩ノ巣原理によってp_{i,j}^{e_{i,j}} > kなる素因数が存在する。これをp_j^{e_j}と名付け候補素因数とする。素因数の個数がk個未満であるもの達の中で候補素因数が被ったものがあったと仮定する。すなわち、j > j', p:=p_j=p_{j'}であったとする。e:=\min\{e_j, e_{j'}\}とする。すると、p^e > kであるにも関わらず、p^e(n+j)-(n+j')=j-j' < kを割り切って矛盾する。従って、p_j達は所望のものである。 Q.E.D.

*1:Carl Albert Grimm, 1926/4/1 – 2018/1/2

*2:この場合は各最大の素因数を選べる。例えば、24, 25, 26, 27の場合はこのようには選べない。