インテジャーズ

INTEGERS

数、特に整数に関する記事。

凸多角形を分割したときの小凸多角形の辺数の平均について

n角形(3 \leq n \leq 7)を二つ以上の凸多角形に分割するとき、各小多角形の辺の数の平均は6より小さいことを示せ。

解答 分割の個数をkとし、分割によってできる平面グラフの頂点数をv, 辺数をeとする。このとき、面数はk+1なので、Eulerの定理より

v-e+(k+1)=2, \quad v=e-k+1

が成り立つ。次数が2であるような頂点の個数をmとする(m \leq n)。グラフの各頂点の次数の総和は2eなので、

2m+3(v-m) \leq 2e, \quad m \geq 3v-2e

と評価できる。凸n角形の外領域の境界上の辺の数をl, 各小多角形の辺の数の平均をaとすると、

ka+l=2e

であり、凸n角形の外領域の境界上に次数が3以上の頂点が少なくとも二つはあるので、m \leq l-2である。以上より、

2m \geq 6v-4e=6(e-k+1)-4e =ka+l-6k+6

となって、

k(a-6) \leq 2m-l-6 \leq m-8 \leq n-8

が得られる。n \leq 7なので、a < 6でなければならない。 Q.E.D.

eが二次の有理数係数方程式を満たさないことの証明

eが無理数であることは

integers.hatenablog.com

で証明しており、eが超越数であることも

integers.hatenablog.com

で証明していますが、この記事では古くから知られている*1eが二次の有理数係数方程式を満たさないことの初等的証明」を紹介します。これは、e^2の無理性証明にもなっています。

証明. eが二次の有理数係数方程式の根であったと仮定すると、整数a, b, cが存在して

ae^2+be+c=0

が成り立つ。両辺をeで割ると

ae+ce^{-1}=-b −①

が得られる。ここで、

\displaystyle e=1+\frac{1}{1!}+\frac{1}{2!}+\cdots +\frac{1}{n!}+R_{n+1}

\displaystyle e^{-1}=1-\frac{1}{1!}+\frac{1}{2!}-\cdots +(-1)^n\frac{1}{n!}+\widetilde{R}_{n+1}

と書けることを思い出す。n \geq \left|a\right|+\left|c\right|とする。①の両辺をn!倍することにより

an!R_{n+1}+cn!\widetilde{R}_{n+1}

は整数であることがわかる。5通りの第一証明の計算により*2

\displaystyle n!R_{n+1} < \frac{1}{n},\quad n!\left|\widetilde{R}_{n+1}\right| < \frac{1}{n}

と評価できるので、

\displaystyle \left|an!R_{n+1}+cn!\widetilde{R}_{n+1}\right| <\frac{\left|a\right|+\left|c\right|}{n} \leq 1

となって、an!R_{n+1}+cn!\widetilde{R}_{n+1}=0が従う。a, cが零のときはeの無理性に帰着されるので、a, c \neq 0としてよい。R_{n+1} > 0であり、

\displaystyle \widetilde{R}_{n+1} = (-1)^{n+1}\left(\frac{1}{(n+1)!}-\frac{1}{(n+2)!}+\frac{1}{(n+3)!}-\cdots\right)

は正負が交互に入れ替わる数である。しかし、

\displaystyle \frac{R_{n+1}}{\widetilde{R}_{n+1}} = -\frac{c}{a}

なので、\widetilde{R}_{n+1}の符号が異なるような二つのnを考えることにより矛盾が生じる。 Q.E.D.

*1:Liouvilleによる。

*2:\widetilde{R}_{n+1}の方は三角不等式を使わなくても交代和になっていることから即座にわかる。