§3 Psuedorandam measures を読みます。測度の線形形式条件、相関条件を定義し、擬ランダム測度に対するSzemerédiの定理を定式化します。
任意の正整数に対して、分母・分子の絶対値が以下の個の有理数であって、個のベクトル はどの二つをとっても上一次独立であるようなものをとる。十分大きい素数を考え*1、各有理数を自然にの元とみなし、を任意にとって、に対して線形形式 をで定義する。このとき、が成り立つ。
定数測度 は明らかに擬ランダム測度です(条件は複雑ですが、この場合は何もかもなので)。
証明. 測度であること:
線形形式条件を満たすこと: 定義1の記号設定のもと、
を示せばよい(ただし、)。左辺は
と展開できる。ここで、とする。を固定する。になるような成分が であったとすると、
となるが、線形形式条件の式はに対しても成立しているので、
である。よって、は任意であったから、①が成立する。
相関条件を満たすこと: に対する をとって (とする)、を
と定義する。このとき、定義2の記号設定のもと ()、及び
を示せばよい。の定義における和を二項係数倍の部分をばらして個の和と考えて、Hölderの不等式を適用すれば
と評価できる。また、先ほどと同様に②の左辺は
と展開でき、を固定して、になるような成分が であったとすると、
と評価できるので、足し合わせてで割れば②が得られる。 Q.E.D.
次がGreen-Tao論文の主定理の一つです:
が成り立つ。
は定数測度に対するSzemerédiの定理(Prop 2.3)によって存在する正の定数と同じものを取れることをGreen-Taoは示していますが、任意に正の数 をとったときに、定数測度の場合の定数を 、上記定理における定数を として
と取れることを示すだけなら議論が単純になるので、そちらを採用して解説します(同じものを取る方法については§8(その二)の注意3を参照)。
次回からしばらくの間、この定理の証明に集中します。
*1:Vinogradov記号を用いれば、となる。