この記事は日曜数学 Advent Calendar 2017 - Adventarの10日目の記事です。9日目はru_sackさんによる
stagnationpoint-y.tumblr.comでした。
今日は中国人数学者孙智伟(Zhi Wei Sun)による素数を表現する関数に関する定理および予想を紹介します。
みなさんの数学への思いや日曜数学の成果・興味がある数学トピックなどについて自由にお話しください。
面白さを読者が共感できるように「自分はなぜそのトピックを面白いと思ったのか」を熱く書いてもらえると嬉しいです。
素数表現関数です。自明に熱く面白いので、多くの方に読んでいただけますと嬉しいです。
定理の証明
かつ
ならば
は素数であるか
の冪乗である。
証明. 1. の証明: と仮定する。このとき、
に注意する。
が偶数ならば
となって矛盾する。が奇数のときは、
なので
となってこの場合も矛盾する。2. の証明は準備が必要なので少し後で証明する。 Q.E.D.
なる整数
であって、
が相異なる値を取るようなものがあったとして固定する。
証明. とする。このとき、
が成り立つので、でなければならない。すると、
となるが、このような不等式は今の状況では成り立ち得ない。 Q.E.D.
証明. と書けたと仮定する(
は奇素数で
は正整数)。
とおく。このとき、
なので、でなければならない。
ならば
となって矛盾する。また、のときは
で矛盾する(に注意)。 Q.E.D.
命題1の2. の証明. とする。
が素数でも
の冪乗でもないと仮定して矛盾を導く。補題1、2より
(
は奇素数で
は
で割れない)と仮定してよいことがわかる。
を
を満たすようにとる。ここで、は
と
の最大公約数を表す。
とおく。このとき、
が成り立つので、でなければならない。
が偶数であると仮定すると、
であり、
となって矛盾するので、は奇数である。
であるが、と
がともに
より大きければ
なので、
となって矛盾する。さて、の任意の素因数を
として選べるので、この議論により
は
より大きい素因数を二つ以上もてないことがわかる。すると残るケースは
(
は
より大きい素数で
)の場合のみとなった。このとき、
となって、結局矛盾する(に注意)。 Q.E.D.
1.
2.
証明. 1. の証明: とする(
は正整数)。
より
である。任意の
に対して
,
であることより
がわかる(と
のパリティが異なることに注意)。次に、
(
は奇素数)とする。任意の
に対して
,
であることより
である。2. の証明: が任意の
に対して成り立つので、
と仮定してよい。
とする。このとき、
が成り立つ。であるから、証明が完了する。 Q.E.D.
Bertrandの仮説の拡張に関する研究は膨大であるが、次の事実を証明なしに用いることにする。
証明. より、
のときは正しいことがわかる。
とする。
が
で相異なる値をとるならば、
もそうなので、
であることがわかる。また、命題1の1. より
がわかる。残るは
であるが、
の場合は直接計算で確かめられる。
のとき、奇素数
をとる。命題2の1. より
が任意のに対して成り立つが、これは
と同値であることに注意すると、が成り立つことがわかる。 Q.E.D.
定理1、2の証明. については直接確認できる。
とする。補題3より
であるから、命題1の2. より
は素数または
の冪乗であることがわかる。そして、命題2の1. より
は
より大きい素数または
の冪乗のうち最小の整数であることが従う。同様に、補題3より
であり、命題1の2. および命題2の2. から
は素数であることがわかる。命題2の1. より
は
より大きい最小の素数であることが従う。 Q.E.D.
関連する極めて興味深い予想
は素数表現関数と予想されています(しかも全ての素数を返すわけではない)。
などなど。
日曜数学 Advent Calendar 2017 11日目の記事はPaya_payashiさんによる「芸術/自然と数学について紹介します。」です。
追記
定理2には「事実」を使う代わりにBertrandの仮説だけで十分な数学的帰納法を使ったより短い証明が存在することを飛鳥さんと彼のご友人に教えていただきました。
*1:だけでなく、全ての素数を表現する。