を
番目のFibonacci数とします:
に対して、二つのFibonacci数の商からなる集合
を
と定義します。黄金比をとするとき、Binetの公式
よりの元は
において
の整数乗の近くにしか分布しません。一方、次が成り立ちます:
この記事ではこの定理の証明を解説します。
準備
証明. これは30:Lucas数列と原始的約数 - INTEGERSに書いてある一般的な命題をFibonacci数に適用したもの。 Q.E.D.
証明. 整数に対して
が成り立つ(例えば、Binetの公式で右辺を計算すると
に等しいことがわかる。
が成り立つことは数学的帰納法で示せる*2 )。よって、
と
が
で割り切れるならば
も割り切れる。 Q.E.D.
補題2とより
はのイデアルをなすことがわかる。
を生成する正の整数を
で表す。冒頭のフィボナッチ数の記事で述べたように
が偶数であるための必要十分条件は
が
の倍数であることだったので、
がわかる。
証明. に関する数学的帰納法で証明する。
の場合は成り立っている。
以下で成り立つと仮定して
の場合にも成り立つことを証明しよう。まず、
のときに成立するという仮定より
が成り立つ。次に、の場合に成立するという仮定より
これを最初の式に代入することにより
を得る。最後の和は
と変形できるので*4、
となって、のときも成立することが示された。 Q.E.D.
証明. 補題3においてとすると、
が得られる。右辺について、和ののときの項が
-orderが最も小さく、その項は符号を無視すれば
であり、
-orderは
である。
のときに
の寄与が気になるのでチェックしておく。
なので、
すなわち
を示せばよい。今、であることに注意する。
であったと仮定する(
のときは自明)。このとき、
であることから
であることがわかる。よって、
であり、示すべきことは全て示された。 Q.E.D.
証明. に関する数学的帰納法で証明する。
なので
のときは成立する。
を仮定する。
144:フィボナッチ平方数 - INTEGERSの補題1とリュカ数の記事で紹介したより、
が成り立つ。また、なので、補題1より
は偶数である。よって、
の記事の補題1より
なので、
となって、のときも成立することが示された。 Q.E.D.
証明. 進数
を任意にとる。
の
進展開が整数
を用いて
と書けているとする(は
から
の整数)。
を
を満たすような整数とし、
とする。このとき、
となるので、の非常に近いところに
はいる。 Q.E.D.
証明. を示せば十分。
が奇素数のときは補題4より、
の場合は補題5より
なので、
よって、であり、これを変形すれば所望の合同式となる。 Q.E.D.
証明. が奇素数の場合は補題4、
の場合は補題5より従う。 Q.E.D.
定理の証明
を任意の正整数、
を任意の非負整数とする。正整数
に対して成り立つ恒等式
にを代入することによって(
は正整数)、
ここで、左辺の分数が補題1によって有理整数であることと補題7を用いたことに注意。また、補題8よりと素な正整数
が存在して、
が成り立つ。先ほどの式でとすると、
となり、が
と互いに素であることから
を得る。従って、
が示された。は任意だったので、任意の
という形の有理数にはいくらでも近いところに
の元がいることがわかった(ただし、今までの議論では
)。
のいくらでも近いところにも
の元がいることは補題4、5よりわかる。よって、補題6より証明が完了する。 Q.E.D.
*1:S. R. Garcia, F. Luca, Quotients of Fibonacci numbers, Amer. Math. Monthly, Vol. 123, Mp. 10, (2016), pp. 1039-1044.
*2:はLucas数:
integers.hatenablog.com
*3:は整数。
*4:なら
とする。