インテジャーズ

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数、特に整数に関する記事。

ウェダーバーンの定理

定理解説

環と言ったら可換環のことを指すというようなことはなくて、普通は非可換環も含めて環なので、可換環しか扱わないような場合は最初に明言する必要があります。1を持つかなども基本的には書かなければなりません。一方、体と言ったら普通は可換体を表します。非可換の場合も含める場合は斜体とか可除環と呼ぶことが殆どです。次の定理は非常に基本的な事実です:

定理 (Wedderburn, Dickson) 有限斜体は可換である。

基本的な事実ではありますが、「有限性が可換性を保証する」と読めるので、初見では驚きの定理でもあります。証明はたくさん知られており、コホモロジー論からBrauer群が消えることを言うことも出来ますし、Skolem–Noetherを使う証明や、類等式を使う証明などをよく見る気がします。

しかしながら、Zsigmondyの定理を使う証明があることを知りました。せっかくZsigmondyの定理についてまとめたので、

integers.hatenablog.com

それを使った証明を紹介することにします。Sylowの定理は既知と仮定します。

証明. Kを有限斜体とする。Kの素体をK(p)とする(pは素数でK(p) \simeq \mathbb{F}_p)。n:=[K:K(p)]とおく(n \geq 2を考えれば十分)。

n=2のとき
K\setminus K(p)の元aを任意にとる。このとき, aが生成するKの部分体FK(p)には一致しないため、元の個数を考えるとK=Fということになる。これは可換。

n > 2, (n, p) \neq (6, 2)のとき
Zsigmondyの定理によって、p^n-1の素因数qであって、任意の1 \leq k \leq n-1に対してq \nmid p^k-1なるものが存在する。K^{\times}は位数p^n-1の有限群であるから、位数qの元a \in K^{\times}が存在する(これはSylowの定理より弱いCauchyの定理と呼ばれている事実から分かる)。aの生成するKの部分体Fを考える。k:=[F:K(p)]とおく。このとき、\#F^{\times}=p^k-1なので、q \mid p^k-1である。従って、qの性質からk=nとなって、K=Fを得る。すなわち、Kは可換である。

(n, p) = (6, 2)のとき
\#K^{\times}=2^6-1=63=9\times 7なので、Sylowの定理より位数9の部分群Gが存在する(位数9の群は可換なものしかない)*1Gの生成するKの部分体をFとする。k:=[F:K(2)]とおくと(k \leq 6)、\#F^{\times}=2^k-1であるが、GF^{\times}の部分群なので9 \mid 2^k-1でなければならない。こうなるのはk=6のときのみである。すなわち、K=Fであり、これは可換である。

Q.E.D.

*1:体の乗法群の有限部分群は巡回群であるが、これは一般の斜体では成り立たない。正標数の斜体については成立することがHersteinによって証明されているが、その証明にはWedderburnの定理を用いるので注意が必要である。