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INTEGERS

数、特に整数に関する記事。

0.011010100010100010100010000010100000100... は無理数

b2以上の整数とし、以下、正の実数をb進法表示で表します。ただし、\cdots r\dot{0}ではなく\cdots (r-1)\dot{(b-1)}を採用します(r \geq 1)。

定理 小数第素数位が1であり、それ以外が0であるような小数
0.011010100010100010100010000010100000100\dots
は無理数である*1

ここでは、Nasehpourの方法を紹介します*2

証明. 正の実数rの小数部分0.r_1r_2\cdotsに対して

\displaystyle \lim_{n\to\infty}\frac{r_1+\cdots +r_n}{n}

が存在するとき、その極限値を\mathrm{Av}(r)と表す。

0\leq d \leq b-1に対してA(d, n):=\{1\leq j\leq n \mid r_j=d\}とする。各dに対して極限値\lim_{n \to \infty}\frac{\#A(d, n)}{n}=\omega_dが存在すれば、

\displaystyle \mathrm{Av}(r)=\sum_{d=1}^{b-1}d\omega_d \tag{1}

が成り立つ。理由: 任意に\varepsilon > 0をとる。十分大きいnに対して

\displaystyle  \left|\frac{\#A(d, n)}{n}-\omega_d\right| < \varepsilon

が成り立ち、

\displaystyle \frac{r_1+\cdots +r_n}{n}=\frac{1}{n}\sum_{d=0}^{b-1}\sum_{i \in A(d, n)}r_i=\sum_{d=1}^{b-1}d\frac{\#A(d, n)}{n}

なので、

\displaystyle \left|\frac{r_1+\cdots +r_n}{n}-\sum_{d=1}^{b-1}d\omega_d\right| < \frac{b(b-1)\varepsilon}{2}

が得られる

rが有理数であればrの小数部分は循環小数0.r_1\cdots r_n \dot{q_1}\cdots \dot{q_m}の形になり、このとき

\displaystyle \omega_{q_1}=\cdots = \omega_{q_m}=\frac{1}{m}

であり、d \in \{0, 1, \dots, b-1\} \setminus \{q_1, \dots, q_m\}に対しては\omega_d=0なので、(1)より

\displaystyle \mathrm{Av}(r) = \frac{q_1+\cdots + q_m}{m}

となって、これは正の有理数である(q_1=\cdots =q_m=0は許されていない)。よって、以上の考察から\mathrm{Av}(r) = 0であればrは無理数であるという無理数判定法が得られた*3

r0.011010100010100010100010000010100000100\dotsとする。すると、素数密度零補題より

\displaystyle \mathrm{Av}(r) = \lim_{n \to \infty}\frac{\pi(n)}{n}=0

なのでrは無理数である。 Q.E.D.

*1:最初に述べた小数表示のルールに則っていることを確認するために素数の無限性が必要。

*2:P. Nasehpour, A simple criterion for irrationality of some real numbers, arXiv. もちろん、もっと自明に直接的に示すことができますが、一応もう少しgeneralな無理数判定法を一つ提示しています。例えば、ラッキー数バージョンであっても同じ仕組みで説明できます。

*3:逆は成り立たない。