といえば最小の完全数であるという事実が真っ先に思い浮かびますが、最大の全ハーシャッド数であるという性質も持っています。
ハーシャッド数とは「各桁の数の総和が自分自身を割り切るような正整数」として定義され、
において「ハーシャッド数が21連続して出現することはない」ことの証明を解説しました。そこでは十進表記のみ扱っていますが、に対して
進法表記におけるハーシャッド数を考えることができます(
-ハーシャッド数)。
この記事では全ハーシャッド数を考えます。
定義 任意の
に対して
-ハーシャッド数であるような正整数のことを全ハーシャッド数(all-Harshad number)という。
進表記を右下に
を付けて表します。
最も自明な基本性質: 正整数に対して、
ならば
であり、
は
-ハーシャッド数。
は全ハーシャッド数: 基本性質より。
は全ハーシャッド数:
であり、
なので、
は
-ハーシャッド数。あとは基本性質。
は
-ハーシャッド数ではない:
であり、
である。
は全ハーシャッド数:
であり、
は
で割り切れる。あとは基本性質。
は
-ハーシャッド数ではない:
であり、
である。
は全ハーシャッド数:
であり、
は
で割り切れる。あとは基本性質。
全ハーシャッド数はこれらで尽くされます。
定理 全ハーシャッド数は
の4数のみである。
それでは証明しましょう。
補題
を素数とし、
を全ハーシャッド数とする。このとき、もし
であれば、
は
で割り切れなければならない。
証明. であれば
なので、は各桁の総和
で割り切れなければならない。 Q.E.D.
定理の証明. であるような全ハーシャッド数が存在したと仮定する。このとき、補題より
は
より大きい
の倍数である。従って、
を
の最大素因数とすると、
であることがわかる。Bertrandの仮説より
なる素数が存在するが、
なので、補題より
は
で割り切れなければならない。これは
が
の最大素因数であることに矛盾する。 Q.E.D.