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数、特に整数に関する記事。

ラマヌジャンが出した問題

Ramanujanは幾つかの数学の問題を"the Journal of the Indian Mathematical Society"に出題しています*1

実は以前書いた記事

integers.hatenablog.com

の数式は全てRamanujanの問題から抜粋したものです。Ramanujanの問題はこちらの"Questions"をクリックすると見ることができます。


今回はそれらの問題のうち、次の問題を紹介したいと思います:

Ramanujanの問題464 (意訳) 2^n-7n3, 4, 5, 7, 15のときに平方数となる。平方数となるような他のnを見つけよ。ただし、nは整数。

n=3, 4, 5, 7, 15のときは次のように確かに平方数となっています:

\begin{align}2^3-7&=1\\ 2^4-7 &= 9=3^2 \\ 2^5-7&=25=5^2 \\ 2^7 -7&=121=11^2 \\ 2^{15}-7 &=32761=181^2\end{align}

他の解を見つけよという問題のため、他にもあるのかな?という気持ちになると思いますが、実は他の解は存在しません


他の解が存在しないということはRamanujanの予想としてしばらく未解決であったのですが、1948年にノルウェーの数学者Nagellによって証明されました*2。そのため、2^n-7=x^2という不定方程式のことをRamanujan-Nagell方程式と呼びます*3

定理 (Nagell) 不定方程式2^n-7=x^2が整数解をもつのはn=3, 4, 5, 7, 15のときに限る。

この記事では、1959年に出版されたSkolem-Chowla-Lewisによる証明法を紹介してみようと思います。二次体論および7進数の考え方を若干用いる証明ですが、場合分けによって見事に5つの候補が取り出される美しい証明です。

ところで、Skolemの単著論文ではありませんし、最初に証明したのはNagellであるにもかかわらず、日本語版Wikipediaで「ラマヌジャン・スコーレムの定理」となっているのは何故なのでしょう??

この証明で用いられているディオファントス方程式へのp進数の応用手法は1934年にSkolemによって開発された手法だそうです。

定理の証明

便宜的に方程式を2^{n+2}-7=x^2 −①として、整数解(n, x)を持つならばn=1, 2, 3, 5, 13でなければならないことを示す。

\displaystyle r:=\frac{1+\sqrt{-7}}{2}

とし、\mathbb{Q}(\sqrt{-7})におけるrの共役元を

\displaystyle r':=\frac{1-\sqrt{-7}}{2}

とする。2=r\cdot r'であり、2\mathbb{Q}(\sqrt{-7})の整数環\mathcal{O}_{\mathbb{Q}(\sqrt{-7})}で分岐せず、(r)(r')は相異なる素イデアルである。なお、\mathcal{O}_{\mathbb{Q}(\sqrt{-7})}は類数1

主張1 ①が整数解を持つための必要十分条件は
\displaystyle r^n = \frac{x\pm \sqrt{-7}}{2}
を満たすような整数n, xが存在することである(\pmは"いずれかが成立"という意味)。両者のnは一致する。

①を満たすような整数n, xが存在したと仮定する。n \geq 1およびxが奇数であって7と互いに素であることは即座に分かる。このとき、

\displaystyle 2^n = \frac{x^2+7}{4} = \frac{x+\sqrt{-7}}{2}\cdot \frac{x-\sqrt{-7}}{2}

なる\mathcal{O}_{\mathbb{Q}(\sqrt{-7})}における等式に変形できる。\frac{x+\sqrt{-7}}{2}\frac{x-\sqrt{-7}}{2}は互いに素であり(共通因子の候補は\sqrt{-7}であるが、x7と互いに素である)、2^n=r^n\cdot r'^n\mathcal{O}_{\mathbb{Q}(\sqrt{-7})}の単数は\pm 1\のみなので、

\displaystyle r^n = \frac{\pm x\pm \sqrt{-7}}{2}

が成立する(4通りの複合のうちのどれか一つ)。必要ならばx \mapsto -xとすることにより\Longrightarrowが証明された。 逆に、

\displaystyle r^n=\frac{x\pm \sqrt{-7}}{2}

が成り立つような整数n, xが存在すれば、共役をとることによって

\displaystyle r'^n=\frac{x\mp \sqrt{-7}}{2}

が成立し、掛け合わせることによって2^{n+2}-7=x^2を得る。こうして、主張1が証明された。

よって、問題が「rを何乗もしていったときに、いつ\sqrt{-7}の係数が\pm \frac{1}{2}になるか?」という問題に翻訳された。

\begin{align} r &= \frac{1+\sqrt{-7}}{2} \\r^2 &= \frac{-3+\sqrt{-7}}{2} \\r^3 &= \frac{-5-\sqrt{-7}}{2} \\r^4 &= \frac{1-3\sqrt{-7}}{2} \\r^5 &= \frac{11-\sqrt{-7}}{2} \\r^6 &= \frac{9+5\sqrt{-7}}{2} \\r^7 &= \frac{-13+7\sqrt{-7}}{2} \\r^8 &= \frac{-31-3\sqrt{-7}}{2} \\r^9 &= \frac{-5-17\sqrt{-7}}{2} \\r^{10} &= \frac{57-11\sqrt{-7}}{2} \\r^{11} &= \frac{67+23\sqrt{-7}}{2} \\r^{12} &= \frac{-47+45\sqrt{-7}}{2} \\r^{13} &= \frac{-181-\sqrt{-7}}{2} \\r^{14} &= \frac{-87-91\sqrt{-7}}{2} \\r^{15} &= \frac{275-89\sqrt{-7}}{2} \end{align}

を見れば、n=1, 2, 3, 5, 13の場合は確かに\sqrt{-7}の係数が\pm \frac{1}{2}になっていることが確認できる。それ以外のnについてはそうならないことを以下で示していく。

非負整数kに対して、整数a_k, b_k

\displaystyle r'^k = \frac{a_k+b_k\sqrt{-7}}{2}

によって定める。以下、r^3=1-r'\sqrt{-7}に注意して、n3で割った余りで場合分けして考察する。


n=3mの場合

\displaystyle r^{3m} = \sum_{k=0}^n(-1)^k\binom{n}{k}r'^k(\sqrt{-7})^k = \sum_{k=0}^n(-1)^k\binom{n}{k}\frac{a_k+b_k\sqrt{-7}}{2}\cdot (-7)^{\frac{k}{2}}

なので、r^{3m}=A_m+B_m\sqrt{-7}とすると、

\displaystyle A_m=1+\sum_{1 \leq j \leq \frac{m+1}{2}}\left\{ -\binom{m}{2j-1}b_{2j-1}+\binom{m}{2j}a_{2j} \right\}\cdot \frac{(-7)^j}{2}

\displaystyle B_m = -\frac{m}{2} +\sum_{1 \leq j \leq \frac{m}{2}}\left\{ \binom{m}{2j}b_{2j} - \binom{m}{2j+1}a_{2j+1}\right\}\cdot \frac{(-7)^j}{2}

を得る。まず、B_m=\frac{1}{2}となるケースを考える。\xi = r^m, \xi' = r'^mとし、B_m=\frac{1}{2}と仮定すると

\xi^3-\xi'^3 = \sqrt{-7} = (\xi-\xi')(\xi^2+\xi\xi'+\xi'^2)

が成り立つ。この因数分解は\mathcal{O}_{\mathbb{Q}(\sqrt{-7})}における因数分解である。このとき、

|\xi-\xi'| \leq \sqrt{7}, \ \ |\xi^2+\xi\xi'+\xi'^2| \leq \sqrt{7}

である。というのも、もし一方でも絶対値が\sqrt{7}より真に大きければ、他方も\mathcal{O}_{\mathbb{Q}(\sqrt{-7})}0でない元なので絶対値が1以上であり、積の絶対値が\sqrt{7}より大きいことになってしまうが、積が\sqrt{-7}であることに反する。

よって、\xi = a+biと複素数表示すれば、|b|\leq \frac{\sqrt{7}}{2}であり、

|\xi^2+\xi\xi'+\xi'^2| = |3a^2-b^2| \leq \sqrt{7}

が成り立つ。故に、

\displaystyle a^2 \leq \frac{\sqrt{7}+b^2}{3} \leq \frac{\sqrt{7}}{3}+\frac{7}{12}

\displaystyle a^2+b^2 \leq \frac{\sqrt{7}}{3} + \frac{7}{12} + \frac{7}{4}=3.215250437\cdots < 4

を得る。一方、\mathbb{Q}(i)におけるノルムを考えると

N(\xi) = a^2+b^2 = N(r^m) = N(r)^m = 2^m

なので、m=1でなければならないことがわかった。しかし、B_1=-\frac{1}{2}なのでこのようなケースは起こりえないことが示された。

次に、B_m=-\frac{1}{2}となるケースを考える。

\displaystyle B_m+\frac{1}{2} = (m-1)\left( -\frac{1}{2} +\sum_{1 \leq j \leq \frac{m}{2}}\left\{ \frac{1}{m-1}\binom{m}{2j}b_k - \frac{1}{m-1}\binom{m}{2j+1}a_k\right\}\cdot \frac{(-7)^j}{2}\right)

なので、

主張2 n \geq k \geq 2なる整数n, kに対して、
\displaystyle \mathrm{ord}_7\left( \frac{7^{\left[\frac{k}{2}\right]}}{n-1}\binom{n}{k}\right) \geq 1
が成立する*4

より、\displaystyle B_m +\frac{1}{2} = (m-1)B'_mとするとB'_m \in \mathbb{Z}_7^{\times}が分かる(\mathbb{Z}_77進整数環)。従って、B_m = -\frac{1}{2}が成り立つならばm=1(すなわち、n=3)でなければならないことが示された。

主張2は

\displaystyle \frac{1}{n-1}\binom{n}{k} = \frac{n}{k(k-1)}\binom{n-2}{k-2}

およびkk-1が互いに素であることに注意して、

\displaystyle \mathrm{ord}_7(k(k-1) ) = \max \{ \mathrm{ord}_7 k, \mathrm{ord}_7 (k-1) \}\leq \log_7 k < \frac{k-1}{2} \leq \left[ \frac{k}{2} \right]

と評価できることから従う。


n=3m+1の場合

\displaystyle r^{3m+1} = \frac{1+\sqrt{-7}}{2}(A_m+B_m\sqrt{-7}) = \frac{A_m-7B_m}{2} + \frac{A_m+B_m}{2}\sqrt{-7}

なので、r^{3m+1} = C_m+D_m\sqrt{-7}とおけば

\displaystyle D_m = \frac{1}{2} - 2m + \sum_{1 \leq j \leq \frac{m}{2}}\left\{ \binom{m}{2j}\frac{a_{2j}+b_{2j}}{4} - \binom{m}{2j+1}\frac{a_{2j+1}-7b_{2j+1}}{4}\right\}\cdot (-7)^j

となる。

D_m = \frac{1}{2}となるケースを考えると、

\displaystyle D_m -\frac{1}{2}= m\left( -2 + \sum_{1 \leq j \leq \frac{m}{2}}\left\{ \frac{1}{m}\binom{m}{2j}\frac{a_{2j}+b_{2j}}{4} - \frac{
1}{m}\binom{m}{2j+1}\frac{a_{2j+1}-7b_{2j+1}}{4}\right\}\cdot (-7)^j\right)

と変形でき、

主張3 n \geq k \geq 2なる整数n, kに対して、
\displaystyle \mathrm{ord}_7\left( \frac{7^{\left[\frac{k}{2}\right]}}{n}\binom{n}{k}\right) \geq 1
が成立する。

が成り立つことが\frac{1}{n}\binom{n}{k} = \frac{1}{k}\binom{n-1}{k-1}から分かるので、D_m-\frac{1}{2}=mD'_mとするとD'_m \in \mathbb{Z}_7^{\times}が分かる。従って、D_m = -\frac{1}{2}が成り立つならばm=0(すなわち、n=1)でなければならないことが示された。

次に、D_m = -\frac{1}{2}となるケースを考える。

\begin{align} D_m +\frac{1}{2}=\ &(m-4)\Biggl( \frac{1+7(7m^3-26m^2+21m-1)}{24} - \frac{7^2}{m-4}\binom{m}{5}\\ &+\sum_{3 \leq j \leq \frac{m}{2}}\left\{ \frac{1}{m-4}\binom{m}{2j}\frac{a_{2j}+b_{2j}}{4} - \frac{
1}{m-4}\binom{m}{2j+1}\frac{a_{2j+1}-7b_{2j+1}}{4}\right\}\cdot (-7)^j\Biggr)\end{align}

と変形できる*5。ここで、次の主張を用いる:

主張4 n \geq k \geq 5なる整数n, kに対して、
\displaystyle \mathrm{ord}_7\left( \frac{7^{\left[\frac{k}{2}\right]}}{n-4}\binom{n}{k}\right) \geq 1
が成立する。

\displaystyle \frac{1}{n-4}\binom{n}{k} = \frac{n(n-1)(n-2)(n-3)}{k(k-1)(k-2)(k-3)(k-4)}\binom{n-5}{k-5}

であり、k, k-1, k-2, k-3, k-4の中に7の倍数はあったとしても少なくとも一つであることから、

\begin{align}&\mathrm{ord}_7 (k(k-1)(k-2)(k-3)(k-4) ) \\ &= \max \{\mathrm{ord}_7k, \mathrm{ord}_7(k-1), \mathrm{ord}_7(k-2), \mathrm{ord}_7(k-3), \mathrm{ord}_7(k-4)\} \\ &\leq \log_7k\end{align}

が成り立つので、主張4が成立することが分かる。よって、D_m+\frac{1}{2}=(m-4)D'_mとするとD'_m \in \mathbb{Z}_7^{\times}なので、D_m=-\frac{1}{2}ならばm=4(すなわち、n=13)でなければならない。


n=3m+2の場合

\displaystyle r^{3m+2} = \frac{-3+\sqrt{-7}}{2}(A_m+B_m\sqrt{-7}) = \frac{-3A_m-7B_m}{2} + \frac{A_m-3B_m}{2}\sqrt{-7}

なので、r^{3m+2} = E_m+F_m\sqrt{-7}とおけば

\displaystyle F_m = \frac{1}{2} - m + \sum_{1 \leq j \leq \frac{m}{2}}\left\{ \binom{m}{2j}\frac{a_{2j}-3b_{2j}}{4} + \binom{m}{2j+1}\frac{3a_{2j+1}+7b_{2j+1}}{4}\right\}\cdot (-7)^j

となる。よって、

\displaystyle F_m -\frac{1}{2}= m\left( -1 + \sum_{1 \leq j \leq \frac{m}{2}}\left\{ \frac{1}{m}\binom{m}{2j}\frac{a_{2j}-3b_{2j}}{4} + \frac{1}{m}\binom{m}{2j+1}\frac{3a_{2j+1}+7b_{2j+1}}{4}\right\}\cdot (-7)^j\right)

および主張3から、F_m=\frac{1}{2}ならばm=0(すなわち、n=2)でなければならないことが分かる。

また、

\begin{align} F_m +\frac{1}{2} = (m-1)\Biggl( -1 + \sum_{1 \leq j \leq \frac{m}{2}}\Biggl\{ &\frac{1}{m-1}\binom{m}{2j}\frac{a_{2j}-3b_{2j}}{4}\\ &+ \frac{1}{m-1}\binom{m}{2j+1}\frac{3a_{2j+1}+7b_{2j+1}}{4}\Biggr\}\cdot (-7)^j\Biggr)\end{align}

および主張2から、F_m=-\frac{1}{2}ならばm=1(すなわち、n=5)でなければならない。


以上より、Ramanujan-Nagellの定理が証明された。 Q.E.D.

*1:誰も答えてくれず自分で解答を提出したこともしばしばあったようです。

*2:Nagell–Lutzの定理のNagellです。

*3:その後、Ramanujan-Nagell方程式に似た形の不定方程式についての研究が多数行われております。Apéryがそのような研究を行っていたことは integers.hatenablog.com に書いた通りです。

*4:主張におけるnは一般のnで、Ramanujan-Nagell方程式の考察中のnではないことに注意。

*5:原論文"The Diophantine Equation 2^{n+2} - 7 = x^2 and Related Problems"のこの部分の計算は間違っている気がします。一応、慎重に計算し直したつもりですが、私も計算ミスしている可能性は残っています。ただ、D_4=-\frac{1}{2}なのでm-4でくくるというアイデアが上手くいくのは間違いありません。