インテジャーズ

INTEGERS

数、特に整数に関する記事。

立方数からなる非自明な長さ3の等差数列は存在しない。

次の古典的Diophantus方程式を紹介します。

定理 (Euler, Legendre) 方程式
x^3+y^3=2z^3
が整数解を持てば、x=yまたはz=0が成り立つ。

これはFermatの最終定理の指数が3の場合の方程式

x^3+y^3=z^3

z^3に係数2をつけたものになっています。Fermatの最終定理の形の方が綺麗に感じるかもしれませんが、x^3+y^3=2z^3x \leq yであればx^3, z^3, y^3が等差数列をなすことと同じことなので、Euler-Legendreの定理はタイトルに書いたような興味深い結果と考えられます(x=yの場合はx^3=y^3=z^3と潰れている場合で(長さ3ではない)、z=0の場合は(-y)^3, 0^3, y^3という等差数列に対応し、自明な等差数列とみなします)。

さて、定理の証明については現代的には曲線x^3+y^3=2が楕円曲線E\colon y^2=x^3-27と同型であり、この楕円曲線のMordell-Weil群を計算するとE(\mathbb{Q}) \simeq \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}となるというのが筋がよいのだと思われます。

また、Eulerはx^3+y^3=z^3のときにとった手法で証明したらしく(記事

integers.hatenablog.com

の付録3参照)、大塚美紀生氏による解説記事があります。一方、私の書いた最終定理の記事の付録2のような初等的証明も知られており、Wakuliczによって1957年に与えられたものをこの記事では紹介したいと思います。証明は同じく初等的に証明された

integers.hatenablog.com

に帰着します。正の整数のことを自然数と呼ぶことにします。

なお、x^n+y^n=2z^nと一般化(n \geq 3)しても非自明解を持たないことはDarmon-Merelによって1997年にWilesによる手法で証明されています。

Euler-Legendreの定理の証明

整数解(x, y, z)であって、x \neq y, \ z \neq 0なるものが存在したと仮定して矛盾すればよい。(x, y)=1と仮定してよい。理由: (x, y)=d > 1として、整数x_1, y_1を用いてx=dx_1, \ y=dy_1と書く。このとき、d^3 \mid 2z^3であり、これはd \mid zを意味する。よって、整数z_1を用いてz=dz_1と書くと、x_1^3+y_1^3=2z_1^3となり、(x_1, y_1)=1, \ x_1 \neq y_1, \ z_1 \neq 0という状況になる x, yはともに奇数なので、x+y, \ x-yは偶数である。よって、u:=\frac{x+y}{2}, \ v:=\frac{x-y}{2} \in \mathbb{Z}であり、x=u+v, y=u-vであることから(u, v)=1がわかる。

(u+v)^3+(u-v)^3=2z^3

を整理すると

u(u^2+3v^2)=z^3

を得る。z\neq 0よりx \neq -yに注意すると、仮定より

\displaystyle uvz=\frac{1}{4}(x+y)(x-y)z \neq 0

である。

(u, 3)=1の場合: (u, v)=1から(u, u^2+3v^2)=1なので、素因数分解の一意性より整数z_1, z_2 \neq 0が存在して

u=z_1^3,\quad u^2+3v^2=z_2^3

と書ける。このとき、z_2^3-z_1^6=3v^2 > 0なので、

(z_2-z_1^2)\{(z_2-z_1^2)^2+3z_2z_1^2\}=3v^2

が成り立つ。t:=z_2-z_1^2 > 0とおくと、(z_1, z_2)=1より(t, z_1) = 1である。

t(t^2+3tz_1^2+3z_1^4)=3v^2

より、3 \mid tであり、自然数t_1を用いてt=3t_1と書くと

t_1(9t_1^2+9t_1z_1^2+3z_1^4) = v^2

を得る。これより3 \mid vであり、整数v_1を用いてv=3v_1と書く。今、(z_1, 3)=1なので、9t_1^2+9t_1z_1^2+3z_1^49では割り切れない。よって、3 \mid t_1である。整数t_2を用いてt_1=3t_2と書けば

t_2(27t_2^2+9t_2z_1^2+z_1^4)=v_1^2

となる。(t, z_1)=1だったので、(t_2, z_1)=1であり、(t_2, 27t_2^2+9t_2z_1^2+z_1^4)=1である。よって、t_2 > 0に注意して、自然数b, cが存在して

t_2=b^2, \quad 27t_2^2+9t_2z_1^2+z_1^4=c^2

が成り立つ。z_1 \neq 0であったので、方程式x^4+9x^2y^2+27y^4=z^2が自然数解(x, y, z)=(\left|z_1\right|, b, c)を持つことになり、これは矛盾である

3 \mid uのとき: (u, v)=1より(v, 3)=1であり、整数u_1を用いてu=3u_1と書く。u(u^2+3v^2)=z^3より3 \mid zなので、整数z_1を用いてz=3z_1と書くと、

u_1(3u_1^2+v^2)=3z_1^3

が得られる。(v, 3)=1より3 \mid u_1であり、整数u_2を用いてu_1=3u_2と書くと

u_2(27u_2^2+v^2)=z_1^3

を得る。(u, v)=1より(u_2, v)=1なので、(u_2, 27u_2^2+v^2)=1であり、(a, b)=1なる整数a, b \neq 0が存在して

u_2=a^3, \quad 27u_2^2+v^2=b^3

と書ける。(v, 3)=1より(b, 3)=1であり、

27a^6+v^2=b^3

より、t=b-3a^2 > 0とおくと、(t, 3)=1

t(t^2+9a^2t+27a^4)=v^2.

(a, b)=1より(a, t)=1であり、(t, 3)=1なので、(t, t^2+9a^2t+27a^4)=1である。t > 0に注意すると、自然数a_1, b_1が存在して

t=a_1^2,\quad t^2+9a^2t+27a^4=b_1^2

が成り立つ。すなわち、

a_1^4+9a^2a_1^2+27a^4=b_1^2

であり、これは方程式x^4+9x^2y^2+27y^4=z^2が自然数解(x, y, z)=(a_1, a, b_1)を持つことになって矛盾する

以上で定理の証明が完了する。 Q.E.D.