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INTEGERS

数、特に整数に関する記事。

xxxx+9xxyy+27yyyy=zz

この記事では、正整数のことを自然数と呼ぶことにします。

定理 方程式
x^4+9x^2y^2+27y^4=z^2
は自然数解を持たない。

Wakuliczによる初等的な証明(Fermatの無限降下法)を紹介します。

補題1 方程式
t^2-27u^2=1
の正の有理数解(t, u)に対して、w:=u^{-1}(t+1)とし、互いに素な自然数r, sを用いてw=r/sと表すと、
\displaystyle t=\frac{r^2+27s^2}{r^2-27s^2},\quad u=\frac{2rs}{r^2-27s^2}
が成り立つ。

証明. t=uw-1なので、方程式に代入すると

(uw-1)^2-27u^2=1

を変形して

u\{u(w^2-27)-2w\}=0

を得る。u > 0なので、

\displaystyle u=\frac{2w}{w^2-27}

となる。また、

\displaystyle t=uw-1=\frac{2w^2}{w^2-27}-1=\frac{w^2+27}{w^2-27}.

これにw=r/sを代入すればよい。 Q.E.D.

補題2 方程式
t^2+9tu+27u^2=1
の正の有理数解(t, u)に対して、w:=u^{-1}(t+1)とし、互いに素な自然数r, sを用いてw=r/sと表すと、
\displaystyle t=\frac{r^2-27s^2}{r^2+9rs+27s^2},\quad u=\frac{2rs+9s^2}{r^2+9rs+27s^2}
が成り立つ。

証明. t=uw-1なので、方程式に代入すると

(uw-1)^2+9(uw-1)+27u^2=1

を変形して

u\{u(w^2+9w+27)-2w-9\}=0

を得る。u > 0なので、

\displaystyle u=\frac{2w+9}{w^2+9w+27}

となる。また、

\displaystyle t=uw-1=\frac{2w+9}{w^2+9w+27}-1=\frac{w^2-27}{w^2+9w+27}.

これにw=r/sを代入すればよい。 Q.E.D.


定理の証明. 背理法で証明する。すなわち、自然数x, y, zであって

x^4+9x^2y^2+27y^4=z^2

を満たすものが存在すると仮定し、それらのうち、zが最小であるものをとる。

3 \mid xの場合: 27 \mid z^2なので、9 \mid zでなければならない。自然数x_1, z_1を用いてx=3x_1, \ z=9z_1と表す。すると、

81x_1^4+81x_1^2y^2+27y^4=81z_1^2

となり、3 \mid yがわかるので、自然数y_1を用いてy=3y_1と書く。これを代入して81で割ると、

\displaystyle x_1^4+9x_1^2y_1^2+27y_1^4=z_1^2

を得る。z_1 < zであるから、これはzの最小性に矛盾する。

(x, 3)=1の場合: (x, y)=1.理由: (x, y)=d > 1とすると、x=dx_1, \ y=dy_1と表すとき、d^4\mid z^2なので、自然数z_1を用いてz=d^2z_1と書ける。よって、x_1^4+9x_1^2y_1^2+27y_1^4=z_1^2となってzの最小性に反する

(x, z)=1. 理由: (x, z)=d > 1とすると、x=dx_1, \ y=dy_1と表すとき、d^2 \mid 27y^4となる。(x, 3)=1なので(d, 3)=1であり、d^2 \mid y^4. dの素因数pを一つ取ると、p \mid y, p \mid xなのでp^4 \mid z^2であり、p^2 \mid zがわかる。よって、自然数x_2, y_2, z_2を用いてx=px_2, \ y=py_2, z=pz_2とすれば、x_2^4+9x_2^2y_2^2+27y_2^4=z_2^2となってzの最小性に反する

(y, z)=1. 理由: (y, z) > 1ならば(x, z) > 1となる

さて、方程式は

\displaystyle \left(\frac{x^2}{z}\right)^2+9\cdot \frac{x^2}{z}\cdot \frac{y^2}{z}+27\left(\frac{y^2}{z}\right)^2 = 1

と変形できるので、補題2より(r, s)=1なる自然数r, sを用いて

\displaystyle \frac{x^2}{z}=\frac{r^2-27s^2}{r^2+9rs+27s^2},\quad \frac{y^2}{z} = \frac{2rs+9s^2}{r^2+9rs+27s^2}

と表示できる。ここで、次の主張を証明する:

主張 (r, 3)=1及び
(r^2-27s^2, r^2+9rs+27s^2) = 1
が成り立つ。

主張の証明: (r^2-27s^2, r^2+9rs+27s^2) = dとおく。(x^2, z)=1なので、

r^2-27s^2=dx^2,\quad r^2+9rs+27s^2=dz

と書け、これと(y^2, z)=1より

2rs+9s^2=dy^2

を得る。よって、

(2rs+9s^2, r^2+9rs+27s^2) = (dy^2, dz)=d.

r=3^{\alpha}vと表示する(\alpha=\mathrm{ord}_3(r), (v, 3)=1)と、

(3^{2\alpha}v^2-27s^2, 3^{2\alpha}v^2+9\cdot 3^{\alpha}vs+27s^2) = (2\cdot 3^{\alpha}vs+9s^2, 3^{2\alpha}v^2+9\cdot 3^{\alpha}vs+27s^2) −①

である。\alpha \neq 1. 理由: \alpha=1と仮定する。3 \mid r及び(r, s)=1より(s, 3)=1である。よって、①の左辺は9で割り切れ、右辺は9で割り切れない(2\cdot 3vsの部分)ので矛盾

\alpha \leq 2. 理由: \alpha\geq 3と仮定する。このときも(s, 3)=1なので、①の左辺は27で割り切れ、右辺は27で割り切れない(9s^2の部分)。これは矛盾

\alpha \neq 2. 理由: \alpha=2と仮定する。r=9vであり、

81v^2-27s^2=dx^2,\quad 81v^2+81vs+27s^2=dz

となり、27 \mid dx^2, \ 27 \mid dzである。よって、(x^2, z)=1であることから27 \mid dがわかる。自然数d_1を用いてd=27d_1と書くと、

3v^2-s^2=d_1x^2,\quad 3v^2+3vs+s^2=d_1z,\quad 2vs+s^2=3d_1y^2

となる。最初の二つよりd_1 \mid 3vs+2s^2であり、三つ目からd_1 \mid 4vs+2s^2なので、これらを差し引きするとd_1 \mid vsを得る。これより、

d_1 \mid 3v^2-s^2,\quad d_1 \mid 3v^2+s^2

となって、足し引きすればd_1 \mid 6v^2及びd_1 \mid 2s^2を得る。9 \mid r(r, s)=1より(s, 3)=1なので、d_1 \mid 2v^2及びd_1 \mid 2s^2となり、(r, s)=1から(v, s)=1なので、d_1 \mid 2となる。

よって、d_1 \mid vs及び(v, s)=1からd_1 \mid vまたはd_1 \mid s^2であるが、d_1 \mid vならば3v^2-s^2=d_1x^2よりd_1 \mid s^2も言えてd_1=1となる。d_1 \mid s^2のときもd_1 \mid 3v^2となって、d_1 \mid 2であることからd_1 \mid v^2となり、やはりd_1=1である。ということは

3v^2=s^2+x^2

が成り立つ。これが不可能なことは簡単にわかる(大学入試レベル)

以上により\alpha=0、すなわち(r, 3)=1が示された。さて、

d \mid 2rs+9s^2, \ r^2-27s^2, \ r^2+9rs+27s^2

であり、後ろ二つからd \mid 2r^2+9rs、最初の二つからd \mid 6rs+r^2なので、差し引きしてd \mid r^2+3rs。よって、d \mid 3r^2+9rsであり、d \mid 2r^2+9rsと合わせるとd \mid r^2を得る。(r, 3)=1より(d, 3)=1である。d \mid r^2d \mid r^2-27s^2よりd \mid 27s^2なので、d \mid s^2となる。d \mid r^2かつd \mid s^2d=1を示す。 主張の証明終わり。

主張より

x^2=r^2-27s^2,\quad y^2=2rs+9s^2,\quad z=r^2+9rs+27s^2

が得られた。(r, 3)=(r, s)=(r, x)=(s, x)=1である(後ろ二つは前二つから従う)。一つ目の式から

\displaystyle \left(\frac{r}{x}\right)^2-27\left(\frac{s}{x}\right)^2=1

なので、補題1より(r_1, s_1)=1なる自然数r_1, s_1を用いて

\displaystyle \frac{r}{x} = \frac{r_1^2+27s_1^2}{r_1^2-27s_1^2},\quad \frac{s}{x}=\frac{2r_1s_1}{r_1^2-27s_1^2} −②

と表示できる。(r_1^2+27s_1^2, r_1^2-27s_1^2)=d_1とおくと、

r_1^2+27s_1^2=d_1r,\quad r_1^2-27s_1^2=d_1x −③

となり、これより

2r_1s_1=d_1s

も成り立つ。以下、r_1=3^{\beta}r_2, \ \beta=\mathrm{ord}_3(r_1), \ (r_2, 3)=1と表示して、\betaの値で場合分けし、全ての場合において矛盾を導く。

\beta=0の場合: ③の二式を足せばd_1 \mid 2r_1^2、引けばd_1 \mid 54s_1^2を得る。(r_1, 3)=1より(d_1, 3)=1が得られ、54=2\times 3^3なので、d_1 \mid 2s_1^2となる。d_1 \mid 2r_1^2(r_1, s_1)=1よりd_1 \mid 2が得られた。

d_1=1のとき: このとき、

x=r_1^2-27s_1^2,\quad r=r_1^2+27s_1^2,\quad s=2r_1s_1

であり、

y^2=2rs+9s^2=4r_1s_1(r_1^2+27s_1^2+9r_1s_1)

が成り立つ。(r_1, s_1)=1(r, 3)=1より

(r_1, r_1^2+27s_1^2+9r_1s_1)=1,\quad (s_1, r_1^2+27s_1^2+9r_1s_1)=1

なので、素因数分解の一意性より自然数a, b, cが存在して

r_1=a^2, \ s_1=b^2, \ r_1+27s_1^2+9r_1s_1=c^2

が、すなわち

a^4+9a^2b^2+27b^4=c^2

が成り立つ。y^2=4r_1s_1c^2, \ 27y^4 < z^2なので、c^2 < y^2 < 27y^4 < z^2c < zとなり、zの最小性に反する

d_1=2の場合: このときは

2x=r_1^2-27s_1^2,\quad 2r=r_1^2+27s_1^2,\quad s=r_1s_1

であり、

y^2=2rs+9s^2=r_1s_1(r_1^2+27s_1^2+9r_1s_1)

なので、先ほどと同様に自然数a, b, cが存在して

r_1=a^2, \ s_1=b_1^2, \ r_1^2+27s_1^2+9r_1s_1=c^2

が成り立ち、

a^4+9a^2b^2+27b^4=c^2

を得る。この場合もy^2=r_1s_1c^2, \ 27y^4 < z^2なので、c^2 < y^2 < 27y^4 < z^2c < zとなり、zの最小性に反する

\beta=1の場合: r_1=3r_2, \ (r_2, 3)=1であり、r_1^2+27s_1^2=d_1r, \ (r, 3)=1より9 \mid d_1を得る。2r_1s_1=d_1s9 \nmid r_1より3 \mid s_1となる。これは3 \mid (r_1, s_1)を示しており矛盾

\beta=2の場合: 9 \mid r_1, \ (r, 3)=1より、r_1^2+27s_1^2=d_1rから27 \mid d_1が言えるが、2r_1s_1=d_1s27 \nmid r_1から3 \mid s_1となって(r_1, s_1)=1に矛盾する

\beta\geq 3の場合: r_1=27r_3とする。(r_1, s_1)=1より(s_1, 3)=1なので、

\displaystyle \frac{r}{x}=\frac{27r_3^2+s_1^2}{27r_3^2-s_1^2}, \quad \frac{s}{x}=\frac{2r_3s_1}{27r_3^2-s_1^2}

(r_3, s_1)=1, \ (s_1, 3)=1という条件のもと成立している。これは、②をr_1 \mapsto s_1, \ s_1 \mapsto r_3として分母が-1倍された形になっており、(s_1, 3)=1なので\beta=0の場合の議論が全く同様に適用される(分母は整除性にしか用いないため(d_1\mid 2の証明)、符号は影響しない)

以上で、(x, 3)=1の場合も完全に矛盾に到達し定理の証明が完了する。 Q.E.D.