今回は二つの数列を紹介します(両数列とも数値例を最後の方に掲載しています)。
一つ目は数列。自然数に対しての最小公倍数をと定義します:
二つ目はSylvester数列です。これは、、
で定義される数列です。
Sylvester数列については思い出深い話があるのですが、それについては別の記事で紹介します。今回は脇役です。
定義式がEuclid数の定義に似ていますが、Sylvester数列を用いて素数の無限性を証明することもできます。
定義式よりならばが成り立つので、特にとは互いに素である。よって、の素因数を一つずつ取っていけば素数が無数に得られる。
cf.
ユークリッド数と素数の無限性 - INTEGERS
フェルマー数とオイラーの素因数641 - INTEGERS
Sylvester数列は次の漸化式でも定義できます(は当然同じ):
一方の漸化式から他方を導出するのは簡単です。
Sylvester数列の成長スピードは二重指数関数的に成長しますが、次は容易に分かります:
証明. に関する帰納法で示す。である。のときに成立すると仮定すると、
とのときも成立することがわかる。 Q.E.D.
また、Sylvester数列はのエジプト分数分解を無数に提供します:
証明. 漸化式より
と分解できるので、次のように望遠鏡和の変形が行える:
Q.E.D.例)
なので、次の系が得られます:
cf.
エジプト分数とグラハムの定理 - INTEGERS
望遠鏡和 - INTEGERS
のgrowthと素数定理
明らかにですが、実際には指数関数のオーダーで成長します:
証明. を考える。が素数の冪乗、すなわちであったとする(は自然数)。このとき、未満の自然数にはの倍数はないがの倍数はあるので、と互いに素な自然数が存在して
と書ける。このとき、
となるので、
を得る。一方、が素数冪でない場合を考える。このとき、とを満たす互いに素な整数を用いてを分解できる。およびであるため、互いに素であるという条件からが分かる。すなわち、このケースでは
が成り立つ。従って、に対して
が成立する。ここで、はvon-Mangoldt関数である:メルテンスの第一定理 - INTEGERS
よって、望遠鏡和をとることによって
が得られる。ここで、についてはチェビシェフの定理 - INTEGERSを参照せよ。Chebyshevの定理の記事で示したように素数定理は
と同値であるから、前半の証明が終わる*1。たった今証明した極限公式を用いれば、任意の正の数に対して
が十分大きいに対して成立することがわかる。これを言い換えると後半の主張になる。 Q.E.D.
証明を見れば分かるように、前半の極限公式は素数定理と同値です*2。
この定理は無理数性証明などで活躍することがあるのですが、実際には次の系で十分であることが多いです:
実はこれだけを証明するなら次のように初等的に証明することができます(この証明でSylvester数列が活躍します*3 ):
系2の初等的証明
証明. なるをとる。一般に自然数に対して、
が成り立つことに注意すると、
と評価できる。最後の不等号は命題1よりわかる。整数の差は以上なので、
を得る。 Q.E.D.
証明. であるが、なので、が成り立つ。よって、
なので、に対して成り立つを用いることにより、
証明. の漸化式よりがわかるので、
が成り立つ。一方、ならば
が成り立つことを数学的帰納法で示すことができる。よって、のとき
故に、
および
を得る。 Q.E.D.
とします。ただし、はなるとします。
証明. の素因数分解は
で与えられる。一方、Legendreの公式よりの素因数分解は
で与えられる。補題3においてとすることによって
命題2より、系2を証明するには次を示せばよいです:
証明. とおく。このとき、多項定理より
補題3よりであることから、
と評価できる。補題4より
を得る。両辺の自然対数をとることにより
補題2およびより
であり、補題1より(に注意して)、ならば
従って、補題5と合わせて
を得る。すなわち、が十分大きいとき、が成り立つ。 Q.E.D.
この証明は
D. Hanson, On the product of the primes, Canad. Math. Bull., 15, (1972), 33–37.
によるものです。最後の部分はeffectiveに計算可能なため、怠けずに計算することによって、命題3は「十分大きい」ではなく、全ての自然数で成立することを示すことができます。