関–Bernoulli数に関するexotic identity、三木の恒等式を紹介します。
鑑賞
関–Bernoulli数については
を参照してください。この記事で紹介したように、関–Bernoulli数は漸化式
を満たします。もう少し、非自明なものとしてはEulerやRamanujanが発見した
がありました()。関–Bernoulli数は他にも様々な漸化式を満たしますが、今回紹介する三木の恒等式は特筆すべきものです。
なんと
歴史
もともとこの恒等式は1978年に三木先生によって論文
H. Miki, A relation between Bernoulli numbers, J. Number Theory 10 (1978), 297–302.
で示されたものです。2005年にGesselが第二種Stirling数を用いたより直接的かつ簡明な別証明を与えており、
D. Zagier, Appendix. Curious and exotic identities for Bernoulli numbers, In T. Arakawa, M. Kaneko and T. Ibukiyama, Bernoulli Numbers and Zeta Functions, Springer Monographs in Mathematics, Springer Japan, 239−262.
にはFaber–Pandharipandeによって発見された幾何由来の似た恒等式のZagier先生による証明とGesselによる三木の恒等式の証明が書かれています(更に、Artamkinによる別証明も載っています)。また、Gesselは2005年の論文で三木の恒等式とFaber–Pandharipandeの恒等式をともに含むような恒等式に拡張しています*2:
I. Gessel, Miki's identity for Bernoulli numbers, J. Number Theory, 110 (2005), 75–82.
Gesselに"mysterious identity"、Zagier先生に"surprising identity"と言わしめるほどの恒等式ですが、一体どのようにして発見されたのでしょうか?
証明を知りたいだけならばGesselのシンプルな証明を読めばすみますが、原論文を読んだ感想としては、三木先生によるオリジナル証明は恒等式そのものよりも美しいものでした。Gesselの証明は或る冪級数の係数を比較して所望の等式を得るというある意味では自然なものである一方*3、三木先生の証明は素数を使うものです。先に公式を予想しておいて、このような証明法を思いついたとすると天才すぎる気がしますが、推測するに、何らかの経緯でこの証明法の計算(Johnsonの手法)を実行するに至り、その結果偶然この公式が得られたのではないかと思います*4。そのような計算を行おうと思う動機はいかにもありそうなものですが(私も似たような計算をしたことがあります)、その結果非自明な恒等式が得られるなどということは想像もできず、奇跡が起きています*5。
証明について
Gesselによる証明と三木先生による証明を後続の記事において解説します。