関-Bernoulli数に関する整数性や
を法とした合同式などを統一的に導出するJohnsonの手法を紹介します。関-Bernoulli数については
を参照してください。は素数です。
Johnsonの主張は、関-Bernoulli数に関するいくつかの古典的定理達は以下に述べる二つの材料をもとに統一的な原理で導出することができるというものです。実際には、二つの材料をmixしたJohnsonの基本進関係式を要に公式を証明していくという形をとります。上記記事で紹介したvon-Staudt-Clausenの定理の証明はまさしくJohnsonの手法に則った証明と言えるのですが、そこでは証明を省いたAdamsの定理、紹介していなかった(
版)Kummer合同式やCarlitzの定理なども導出できます。この記事ではそれらを含む若干の公式をJohnsonの手法で導きます。
記号
進整数
の
進展開を
と書く(は有理整数)。
材料1
の
乗根全体のなす
進単数群
の部分群を
と表すことにする。
なる整数
に対して、そのTeichmüllerリフトを
と書くことにすると(
)、群同型
がある。よって、特に である。
のときはTeichmüller指標は普通
を考えるが、ここでは上記自明な写像のみ考えることにする。
の群構造から正整数
に対して
が成り立つが、これが一つ目の材料である。
材料2
主役である関-Bernoulli数について、Johnsonの手法に関しては
による定義ではなく、
による定義を採用する(すなわち、の方)。
蛇足
私は普段は前者の流儀を採用しているのですが、その理由の一つにFaulhaberの公式が自然に感じられることをあげられます*1。乗和を
に関する多項式として表す公式ですが、
の公式よりも
の公式の方が冪乗和の公式としては自然に思える気がするのです(個人の感想)。しかしながら、Johnsonの手法ではを
冪で表すため、後者のメジャーな定義の方が議論しやすいです(
なので実は定義を気にする必要はないのですが)。
蛇足終わり
さて、今回採用の定義におけるFaulhaberの公式は
となるが、これが二つ目の材料である。
Johnsonの基本
進関係式
なる整数
に対して、
進整数
を
で定義する。すなわち、である。このとき、材料1の和を
とFaulhaberの公式を使って次のように計算できる:
最後に なる変形を行っていることに注意。両辺を
で割って材料1を適用することによって、次が得られた。
これから色々出るよという話です。
古典的定理達の導出
証明. に関する数学的帰納法で証明する。
のときは
より成立している。
未満で主張が成立すると仮定する。
が奇素数の場合を考える。Johnsonの基本関係式によって示すべきことは
の整数性である。帰納法の仮定により
に対して
であり、のとき補題より
すなわち、
であることから所望の整数性が従う。
の場合であっても
は言えるので、
倍すれば同じ証明が機能する。 Q.E.D.
証明. 示すべきことは、のとき
であり、
のとき
となることであるが、これは定理1より従う。 Q.E.D.
特に、が成り立つ。
証明. 示すべきことは、のとき
となることであるが、これは定理1より従う。 Q.E.D.
証明. 示すべきことは、のとき
となることであるが、これは定理1より従う。 Q.E.D.
であれば、補題より
すなわち、
が成り立つので、Johnsonの基本進関係式より
が得られる。
証明. とする。
なる整数
に対して、
であることから
が成り立つ。よって、特に
が得られる(はFermat商)。これより、
なので、
であるが、であることから
である。従って、①より
が得られるが、より
であり、
より
なので
が従う。条件を満たす素数 は無数に存在するので、
でなければならない。 Q.E.D.
関-Bernoulli数の母関数表示から自明である定理2をJohnsonの手法で証明することは馬鹿げて見えますが、Johnsonの手法は進的な手法であるにも関わらず
に依らない関-Bernoulli数に関する等式を証明するポテンシャルがあることがわかります。定理2は本当に自明ですが、非自明な等式が果たしてJohnsonの手法から得られるでしょうか?
この疑問についてはここでは置いておくことにして、①、②から次がわかります。
をWilson商とします。定理3、Fermatの小定理、Lerchの合同式より次の合同式が得らます。
また、定理3の合同式における和はFermatの小定理によって周期性を持つため、次が従います。
のときが有名なKummerの合同式の
の場合です。
最後に、VoronoiとVandiverによって得られた合同式を証明するために、定理3を の場合に見かけ上一般的な形に言い換えましょう。
証明. の場合は定理3そのものである。
を任意にとる。このとき、
に対して
及び
が成り立つ。二つ目の式の理由:
であり、
であることから
が得られる。
よって、変数変換 より
と計算できるが、なので
であり、
の場合から一般の場合が従うことがわかった。 Q.E.D.
証明. なので、
は
進単数である。よって、定理4より
が成り立つ。この合同式からこの合同式のの場合の合同式
を引くことにより
が得られる。ここで、
より
なので、
と計算できる。よって、所望の合同式が示された。 Q.E.D.
これは次の合同式と同値です。
証明. より、
また、明らかになので
であるから、Voronoiの合同式より
なので、和の順番を変更すれば主張の合同式となる。 Q.E.D.
*1:ちなみに、他の理由の一つとして、尊敬する岩澤先生が著作の中で前者の定義を採用しているというものがあります。