インテジャーズ

INTEGERS

数、特に整数に関する記事。

メルテンス関数

Mertens関数M(x)

\displaystyle M(x) := \sum_{n \leq x} \mu(n)

で定義されます。ここで、\mu(n)はMöbius関数です: メビウス関数 - INTEGERS

数値例

\begin{align} M(31) &= \mu(1)+ \mu(2)+\mu(3)+\mu(5)+\mu(6)+\mu(7)+\mu(10)+\mu(11)+\mu(13)+\mu(14)+\mu(15)\\ &\quad +\mu(17)+\mu(19)+\mu(20)+\mu(21)+\mu(23)+\mu(26)+\mu(29)+\mu(30)+\mu(31)\\
&= 1-1-1-1+1-1+1-1-1+1+1-1-1+1+1-1+1-1-1-1 \\ &= -4\end{align}

M(1)=1の次にMertens関数の値が1をとるのはM(94) = 1です。

M(2018)=1, \ M(10^8)=1928など。

Riemann予想

Riemann予想は任意の\varepsilon > 0に対して

\displaystyle M(x) = O(x^{\frac{1}{2}+\varepsilon}), \quad x \to \infty

が成り立つことと同値です。Mertens関数に関するこの評価からRiemann予想が導出されることは次のように証明されます*1:

s=\sigma+it \in \mathbb{C}, \sigma > 1/2とする。トーシェント関数に関する漸近評価 - INTEGERSの補題1およびAbelの総和法*2より

\displaystyle \frac{1}{\zeta(s)} = \sum_{n=1}^{\infty}\frac{\mu(n)}{n^s} = s\int_1^{\infty}t^{-s-1}M(t)dt

が成り立つ。M=O(x^{\frac{1}{2}+\varepsilon})と仮定すると、積分は

\displaystyle \left|\int_1^{\infty}t^{-s-1}M(t)dt\right| \ll \int_1^{\infty}t^{-\frac{1}{2}+\varepsilon -\sigma}dt

と評価できるので、\sigma > \frac{1}{2}+\varepsilonで広義一様絶対収束する。よって、\varepsilon > 0は任意であるから、1/\zeta(s)\sigma > 1/2で正則となり、(関数等式により)これはRiemann予想の成立を意味する。 Q.E.D.

ちなみに、MertensはRiemann予想より強い

\displaystyle M(x) < \sqrt{x}, \quad x > 1

を予想していましたが、1985年にOdlyzko-Rieleが

\displaystyle \limsup_{x \to \infty}\frac{M(x)}{\sqrt{x}} > 1.06, \quad \liminf_{x \to \infty}\frac{M(x)}{\sqrt{x}} < -1.009

を示す形で反証しています。

*1:逆向きの証明はまたの機会に。

*2:n_0=1, a_n=\mu(n), \varphi(x)=x^{-s}として適用し、x \to \inftyとする。