インテジャーズ

INTEGERS

数、特に整数に関する記事。

105に関するエルデシュの予想や剱岳など

105という整数について、これまでに二つ記事を書いたことがあります。

integers.hatenablog.com

integers.hatenablog.com

今日は更に二つほど紹介しようと思います。

Ramanujanの公式

Ramanujanの発見した次の公式に105が登場します。

\displaystyle \left(1+\frac{1}{2^4}\right)\times \left(1+\frac{1}{3^4}\right)\times \left(1+\frac{1}{5^4}\right)\times \left(1+\frac{1}{7^4}\right)\times \left(1+\frac{1}{11^4}\right)\times \cdots = \frac{105}{\pi^4}.

証明. pは素数をわたるものとして、Riemannゼータ関数のEuler積表示と特殊値を利用すれば

\displaystyle \prod_p\left(1+\frac{1}{p^4}\right) =\frac{\prod_p\left(1-\frac{1}{p^8}\right)}{\prod_p\left(1-\frac{1}{p^4}\right)}=\frac{\zeta(4)}{\zeta(8)}=\frac{\pi^4/90}{\pi^8/9450}=\frac{105}{\pi^4}

と計算できる. Q.E.D.

Erdősの予想

予想 (Erdős, 1950) n-2^k > 0であるような全ての正整数kに対してn-2^kが素数となるような正整数nn=4, 7, 15, 21, 45, 75, 105のみであろう。

4-2=2

7-2=5, \ 7-4=3

15-2=13, \ 15-4=11, \ 15-8=7

21-2=19, \ 21-4=17, \ 21-8=13, \ 21-16=5

45-2=43, \ 45-4=41, \ 45-8=37, \ 45-16=29, \ 45-32=13

75-2=73, \ 75-4=71, \ 75-8=67, \ 75-16=59, \ 75-32=43, \ 75-64=11

105-2=103, \ 105-4=101, \ 105-8=97, \ 105-16=89, \ 105-32=73, \ 105-64=41

は全て素数であり、このような性質を持つ最大の整数が105であろうという予想です。

ちなみに、105-128=-23, \ 105-256=-151も絶対値が素数だったりします。

この予想は

P. Erdős, On integers of the form 2^k + p and some related questions, Summa Bras. Math., 2 (1950), 113-123.

の3ページ目に述べられています。この論文でErdősは例えば次の定理を証明しています。

定理 (Erdős) nを正整数とし、f(n)\#\{(k, p) \mid n=2^k+p, k \in \mathbb{Z}_{>0}, p: \text{素数}\}とする。このとき、\displaystyle \limsup_{n \to \infty}f(n)=\inftyが成り立つ。

証明. N>0は十分大きい整数とする。w(N)\displaystyle \lim_{N \to \infty}w(N)=\inftyであるような十分増加速度の遅い実数値単調増大関数とし、W=W(N)

\displaystyle W(N):=\prod_{3 \leq p \leq w(N)}p

と定義する(pは素数)。S(N)

\displaystyle 2^k+p\equiv 0 \pmod{W},\quad 2^k+p \leq N

を満たすような(k, p)の個数とする。このとき、

\displaystyle S(N) = \sum_{j =1}^{[N/W]}f(jW) −①

が成り立つことがわかる。k \leq \log Nを固定する。すると、p < N/2であれば2^k+p < Nが成り立つので、Wを法として-2^kと合同なx以下の素数の個数を\pi_{W, -2^k}(x)で表すと

\displaystyle S(N) \geq \sum_{k \leq \log N}\pi_{W, -2^k}\left(\frac{N}{2}\right) −②

が成り立つことがわかる*1。さて、W-2^kは互いに素なので、\varphi(n)Eulerのトーシェント関数として

\displaystyle F(W, N):=\frac{\pi_{W, -2^k}\left(\frac{N}{2}\right)}{\frac{1}{\varphi(W)}\frac{\frac{N}{2}}{\log\frac{N}{2}}}-1

F(W, N)を定義すると、W-トリックの補題および算術級数の素数定理より

\displaystyle \lim_{N \to \infty}F(W, N)=0

がわかる。よって、N \gg 0であれば、或る正の数c_0が存在して

\displaystyle \pi_{W, -2^k}\left(\frac{N}{2}\right) > \frac{c_0}{\varphi(W)}\frac{N}{\log N}

が成り立つ。トーシェント関数の公式とMertensの第三定理より

\displaystyle \varphi(W) = W\prod_{p \mid W}\left(1-\frac{1}{p}\right) = O\left(\frac{W}{\log W}\right)

であり、Chebyshevの定理より

\log W = \vartheta(w(N) )-\log 2 \gg w(N)

なので、或る正の数c_1が存在して

\displaystyle  \pi_{W, -2^k}\left(\frac{N}{2}\right) > c_1\cdot \frac{Nw(N)}{W\log N}

がわかった。従って、①・②より或る正の数c_2が存在して

\displaystyle \sum_{j =1}^{[N/W]}f(jW) > c_2\cdot \frac{Nw(N)}{W}

が成り立つ。故に、鳩ノ巣原理によってlW \leq Nなる正整数l=l(N)が存在して

\displaystyle f(lW) > c_2w(N) \geq c_2w(lW)

でなければならない。つまり、f(n) > c_2w(n)を満たすようなnが無数に存在することが示された*2Q.E.D.

Erdősは実際にはw(N)=\log \log Nと取れることまで示していますが、そのためには準備が必要になるのでここでは紹介しません。

余談

最近知ったとある伝説がかっこいいなあと感じたので書いておきます。飛騨山脈北部立山連峰にある剱岳(標高2999m)の記録に残る初登頂は1907年7月13日(測量隊の生田信ら)らしいのですが、その際、錆び付いた鉄剣と銅製の錫杖が発見され、当時の鑑定ではこれらは奈良時代後半から平安時代初期にかけて登頂した修験者のものだそうです(Wikipediaより引用)。この伝説の修験者、かっこよすぎる。

*1:この式ではkを固定するという約束をいったん解除。

*2:有限個のnが得られている場合、それらの最大値より大きいWを考えると新しいものが得られる。