Cauchy-Davenportの定理
を素数とし、
を巡回群
の空でない部分集合とする。
を
と定義する。このとき、次が成り立つ:
これより、であれば
の任意の元は
の元と
の元の和として表すことができることがわかる。
証明. とする。
主張が証明されたとする。 のとき、
とすると
なので、に対して主張を適用することができ、
となって定理の証明が完了する。以下、主張をに関する帰納法で証明する。
のときは
と成立している。
とする。
と仮定して背理法で証明する。このとき、二つの
元集合
と
は一致する必要があるため、
とすると、任意の
と任意の整数
に対して
が成り立つことがわかる。
理由: に対して
が存在して
が成り立つので、
であり、同様に
に対して
が存在して
が成り立つので、
である。あとは、
であることから
のようにして、帰納的に
がわかる。
従って、とすると
がわかり、
が素数で
であることから
なので、
となって
が従い、矛盾に到達する。
とし、
未満では主張が成立すると仮定する。
とする。
を示したいので、
と仮定してよい。
と
に対して帰納法の仮定を適用すると(
より適用可能)、
が得られる。これより、或るが存在して
が成り立つ。理由: は
元集合なので、この集合には族さないような
が存在する。
従って、と
を適当に並べ替えることによって
が成り立つようにできる()。このとき、
に対して
である。理由:
であれば
であり、
となって矛盾。
よって、とすれば
であり
一方、に帰納法の仮定を適用すると、
なので、合わせると, すなわち
が得られる。 Q.E.D.
鞄とその和集合
を有限Abel群とし、
を
の元からなる鞄(多重集合)とする。
と書いたとき、
の和集合
を
で定義する。鞄の重複度込みの元の個数を
で表し、
の元からなる集合の元の個数を
と表すことにする。
次の定理はこの一般的問題に対する一つの簡単な結果である:
証明. とする。このとき、
と書ける*1。のときは
なので明らか。
として
未満では成立すると仮定する。このとき、Cauchy-Davenportの定理より
と証明される。 Q.E.D.
この定理はbest possibleである。とすれば、
なので
となる。
*1:一般にである。