§5 Almost periodic functions の後半です。構造定理(Thm 3.5)は前半で導入した一様概周期性と§4で導入したGowers一様性のある種の双対性と思うことができます。ここでは二つの双対性(命題1&命題2)を示しますが、命題1はSzemerédiの定理の証明には使わないのでとばしてもかまいません。(命題1とはある意味逆の関係にある)命題2は構造定理の証明で重要な役割を果たします。
証明. に関する帰納法で証明する。のときは は定数関数なので、
が成り立つ。ここで、§4の基本性質1を使った。とする。で成立すると仮定しての場合を示そう。
を示せば十分である。理由: の場合に主張を示せば十分である。非斉次性より
を考えることができる。内積の線型性より、任意のに対して
であるから、との任意性から所望の不等式が得られる。
そこで、 であると仮定しよう。このとき、空でない有限集合、、有界関数 が存在して
と表示できる。任意のに対して
が成り立つので、内積のユニタリ性より
と計算できる(和の入れ替えを行っている)。は有界関数なので、Cauchy-Schwarzの不等式により
を得る。ここで、点 毎に次の等式が成立することに注意する(ただし、最初の はを変数とする関数への作用と考えており、三行目のはについての関数に対する作用を考えている):
よって、§4のvan der Corputの補題により、点 毎に
と変形できる。従って、積分と順序を入れ替えて内積のユニタリ性によってを作用させることにより
を得る。ここで、はシフト不変なBanach代数なので(特に複素共役不変性・積閉性より)
であり、帰納法の仮定により
が成立する。従って、
と所望の不等式に到達する。ここで、三行目最初の不等号にはHölderの不等式を用いている。 Q.E.D.
注意 (Remark 5.11): 命題1によって、Green-Taoの論文で使うGowers反一様性ノルム に対して
なる関係があることがわかる。
これから、命題2の証明のための準備を行います。
が成り立つことは帰納法ですぐに示せます*1。が有界であればも有界です。理由: 帰納法で示す。のときは明らか。で成り立つと仮定すると、の三角不等式、積閉性、複素共役不変性、シフト不変性により
と評価できる( は有界であることに注意)。
証明. に関する帰納法で証明する。のときは双対関数との定義より
と所望の式が成立している。のときに成立すると仮定すると、
と変形でき、の場合も成立することがわかる。 Q.E.D.
証明. のときは は定数であり、が有界であることからその絶対値は以下。よって、である。で成立すると仮定する。に対して
であり、 とおく。は有界なので、シフト不変性、複素共役不変性、帰納法の仮定より である。また、は有界なので、であることが従う。 Q.E.D.
以上の準備のもと、命題2を証明することができます:
が を満たすような有界関数であれば、或る有界関数 が存在してが成立する。
証明. とすれば、これは有界関数で、補題3より であり、補題2より
を得る。 Q.E.D.
*1:なので、最初からと定義した方がよい気もします。