インテジャーズ

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数、特に整数に関する記事。

リーマンゼータ関数の解析接続と関数等式

この記事では
integers.hatenablog.com
において\mathrm{Re}(s) > 1で定義されたRiemannゼータ関数\zeta (s)を複素平面全体に有理型接続し、\zeta (s)の満たす美しい関数等式の証明をRiemannの方法に従って紹介します。そのためにテータ関数の準備から始めましょう。

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を「階乗の記事」と表現することにします。

テータ関数の関数等式

定義 x > 0に対して定義されるテータ関数\vartheta (x)
\displaystyle \vartheta (x) := \sum_{n \in \mathbb{Z}}e^{-n^2\pi x}
と定義する。

\displaystyle \vartheta (x) \leq 2\sum_{n=1}^{\infty}(e^{-\pi x})^n+1 = \frac{e^{\pi x}+1}{e^{\pi x}-1}

より\vartheta (x)は収束することが分かります。Riemannの手法におけるKeyとなる「テータ関数の関数等式」の証明をする前にPoisson和公式を準備します。

\displaystyle L^1(\mathbb{R}) := \{ f\colon \mathbb{R} \to \mathbb{R}, \text{可測関数} \mid \int_{-\infty}^{\infty}\left|f(x)\right| < \infty \}.

定義 f \in L^1(\mathbb{R})Fourier変換\ \widehat{f}
\displaystyle \widehat{f}(x) := \int_{-\infty}^{\infty}f(t)e^{-2\pi\sqrt{-1}xt}dt
により定める。

f \in L^1(\mathbb{R})なので、\widehat{f}(x)は収束することが分かります。

定理 (Poisson和公式) f, \widehat{f} \in L^1(\mathbb{R})が有界変動関数であれば、等式
\displaystyle \sum_{n \in \mathbb{Z}}f(n) = \sum_{n \in \mathbb{Z}}\widehat{f}(n)
が成り立つ。

証明. \displaystyle \sum_{n \in \mathbb{Z}}f(x+n)は周期1であることからFourier級数展開

\displaystyle \sum_{n \in \mathbb{Z}}f(x+n) = \sum_{n \in \mathbb{Z}}a_n e^{2\pi\sqrt{-1}nx} ―①

を持つ。このとき、

\begin{equation}\begin{split} a_n &= \int_0^1\sum_{m \in \mathbb{Z}}f(x+m)e^{2\pi\sqrt{-1}nt}dt \\ &= \int_{-\infty}^{\infty}f(t)e^{-2\pi \sqrt{-1}nt}dt = \widehat{f}(n)\end{split}\end{equation}

が成り立つので、①にx=0を代入することによってPoisson和公式を得る(本当は収束性などをしっかり見ないといけない)。 Q.E.D.

補題 \ \ \ \ \ \ \displaystyle \int_0^{\infty}e^{-t^2}\cos (2yt)dt = \frac{\sqrt{\pi}}{2}e^{-y^2}.

証明. 求める積分をF(y)とおく。このとき、積分記号下でyについて微分した後、部分積分を行うことによってF(y)は微分方程式

\displaystyle F'(y)+2yF(y)=0

を満たすことがわかる。階乗の記事でも紹介したGauss積分

\displaystyle \int_0^{\infty}e^{-t^2}dt = \frac{\sqrt{\pi}}{2}

を用いてこの微分方程式を解けば、所望の公式が得られる。 Q.E.D.

定理 (テータ関数の関数等式)
\displaystyle \vartheta (x) = \frac{1}{\sqrt{x}}\vartheta (x^{-1}).

証明. y > 0に対しf(x) := e^{-yx^2}なる関数を考え、Poisson和公式を適用すると

\displaystyle \vartheta (y/\pi) = \sum_{n \in \mathbb{Z}}\int_{-\infty}^{\infty}e^{-yt^2}e^{-2\pi \sqrt{-1}nt}dt

を得る。一方、Fを補題で定義された関数とすると

\begin{equation}\begin{split} \int_{-\infty}^{\infty}e^{-yt^2}e^{-2\pi \sqrt{-1}nt}dt &= 2\int_0^{\infty}e^{-yt^2}\cos (2\pi nt)dt \\ &= \frac{2}{\sqrt{y}}\int_0^{\infty}e^{-t^2}\cos \frac{2\pi nt}{\sqrt{y}}dt \\ &= \frac{2}{\sqrt{y}}F\left(\frac{\pi n}{\sqrt{y}} \right) \end{split}\end{equation}

と計算できるので、補題より

\displaystyle \vartheta (y/\pi) = \sum_{n \in \mathbb{Z}}\sqrt{\pi / y}e^{-\frac{\pi^2n^2}{y}} = \sqrt{\pi /y}\vartheta (\pi /y)

が得られた。y \mapsto \pi xとすればよい。 Q.E.D.

Riemannゼータ関数の解析接続

定義 \mathrm{Re}(s) > 1において完備Riemannゼータ関数\xi (s)
\displaystyle \xi (s) := \pi^{-\frac{s}{2}}\Gamma \left( \frac{s}{2} \right) \zeta (s)
と定義する。ここで、\Gamma (s)はガンマ関数(階乗の記事を参照)。

\displaystyle \Psi (x) = \sum_{n=1}^{\infty}e^{-n^2\pi x} = \frac{\vartheta (x)-1}{2}

とします。

定理 s(1-s)\xi (s)は複素平面全体に正則に解析接続される。更に、\mathbb{C}\setminus \{0, 1\}において\xi (s)は積分表示
\displaystyle \xi (s) = \int_1^{\infty}(x^{\frac{s}{2}}+x^{\frac{1-s}{2}})\Psi (x)\frac{dx}{x} - \frac{1}{s(1-s)} ―②
をもつ。

証明. ガンマ関数の積分表示(階乗の記事を参照)においてx \mapsto n^2\pi xとすることによって

\displaystyle \pi^{-\frac{s}{2}}\Gamma \left( \frac{s}{2} \right) n^{-s} = \int_0^{\infty}e^{-n^2\pi x}x^{\frac{s}{2}}\frac{dx}{x}

が成り立つので、\mathrm{Re}(s) > 1において

\begin{equation}\begin{split} \xi (s) &= \int_0^{\infty}\left( \sum_{n=1}^{\infty}e^{-n^2\pi x} \right) x^{\frac{s}{2}}\frac{dx}{x} \\ &= \int_0^{\infty}x^{\frac{s}{2}}\Psi (x)\frac{dx}{x} \\ &= \int_1^{\infty}x^{\frac{s}{2}}\Psi (x) \frac{dx}{x}+\int_0^1x^{\frac{s}{2}}\Psi (x)\frac{dx}{x}\end{split}\end{equation}

と計算できる。最後の[0, 1] における積分においてx \mapsto x^{-1}なる変数変換を施すと、テータ関数の関数等式によって

\displaystyle \Psi (x^{-1}) = \sqrt{x}\Psi (x) + \frac{\sqrt{x}-1}{2}

が成り立つので、

\begin{equation}\begin{split} \int_1^{\infty}x^{-\frac{s}{2}}\Psi(x^{-1})\frac{dx}{x} &= \int_1^{\infty}x^{\frac{1-s}{2}}\Psi (x)\frac{dx}{x} + \int_1^{\infty}\frac{\sqrt{x}-1}{2}x^{-\frac{s}{2}}\frac{dx}{x} \\ &= \int_1^{\infty}x^{\frac{1-s}{2}}\Psi (x)\frac{dx}{x} -\frac{1}{s(1-s)}\end{split}\end{equation}

と変形できる。よって、\mathrm{Re}(s) > 1においては\xi (s)が所望の積分表示を持つことが示された。

\displaystyle \Psi (x) \leq \sum_{n=1}^{\infty}(e^{-\pi x})^n = \frac{1}{e^{\pi x}-1} = O(e^{-\pi x}) \ \ (x \to \infty)

であるから、②の最初の積分は\mathbb{C}全体で広義一様収束することが分かる。従って、Moreraの定理より正則である。すなわち、②の表示によって\xi (s)を解析接続できることがわかった。 Q.E.D.

\xi (s)は関数等式
\displaystyle \xi (s) = \xi (1-s)
を満たす。

証明. \xi (s)の積分表示がs \mapsto 1-sで不変であることから従う。 Q.E.D.

階乗の記事で示したようにガンマ関数も複素平面全体へ有理型接続されるため、Riemannゼータ関数もs=0, 1を除いて正則に接続されることが分かります。最初にあげたRiemannゼータ関数の記事で示したように、s=1\zeta (s)1位の極であり、留数は1です。一方、\zeta (0)は有限確定値をとります:

命題\ \ \ \displaystyle \zeta (0) = -\frac{1}{2}.

証明. 最初にあげた二つの記事で示したように

\displaystyle \zeta (s) = \frac{1}{s-1} + O(1)  \ \ (s \to 1),

\displaystyle \Gamma (s) = \frac{1}{s}+O(1) \ \ (s \to 0)

なので、関数等式から

\displaystyle \pi^{-\frac{s}{2}}(2+O(s))\zeta (s) = \pi^{-\frac{1-s}{2}}\Gamma \left( \frac{1-s}{2} \right) (-1+O(s)) \ \ (s \to 0)

が成り立つことがわかる。よって、s=0とすれば\zeta (0) = -1/2が得られる。 Q.E.D.

命題 \zeta (s)の関数等式を次のように表現することもできる:
\displaystyle \zeta (s) = 2^s\pi^{s-1}\sin \frac{\pi s}{2}\Gamma (1-s)\zeta (1-s),
\displaystyle \zeta (1-s)=2^{1-s}\pi^{-s}\cos \frac{\pi s}{2}\Gamma (s)\zeta (s).

証明. 階乗の記事で示したガンマ関数の相反公式より、

\displaystyle \Gamma \left( \frac{1-s}{2} \right) \Gamma \left( \frac{1+s}{2} \right) = \frac{\pi}{\sin \left( \frac{\pi}{2}-\frac{\pi s}{2}\right)} = \frac{\pi}{\cos \frac{\pi s}{2}}

が成り立つ。一方、Legendreの2倍公式によって

\displaystyle \pi^{\frac{1}{2}}\Gamma (s) = 2^{s-1}\Gamma \left( \frac{s}{2} \right) \Gamma \left( \frac{1+s}{2} \right)

なので、

\displaystyle \Gamma \left( \frac{s}{2} \right) \Gamma \left( \frac{1-s}{2} \right)^{-1} = 2^{1-s}\pi^{-\frac{1}{2}}\cos \frac{\pi s}{2}\Gamma (s)

が成り立つことがわかる。よって、関数等式

\displaystyle \pi^{-\frac{s}{2}}\Gamma \left( \frac{s}{2} \right) \zeta (s) = \pi^{-\frac{1-s}{2}}\Gamma \left( \frac{1-s}{2} \right) \zeta (1-s)

より、

\begin{equation}\begin{split} \zeta (1-s) &= \pi^{\frac{1}{2}-s}\Gamma \left( \frac{s}{2} \right) \Gamma \left( \frac{1-s}{2} \right)^{-1}\zeta (s) \\ &= 2^{1-s}\pi^{-s}\cos \frac{\pi s}{2} \Gamma (s)\zeta (s)\end{split}\end{equation}

が得られる。相反公式および正弦関数の2倍角の公式より

\displaystyle \Gamma (s)^{-1} = 2\pi^{-1}\cos \frac{\pi s}{2} \sin \frac{\pi s}{2}\Gamma (1-s)

なので、もう一方の公式も

\begin{equation}\begin{split} \zeta (s) &= 2^{s-1}\pi^s\left( \cos \frac{\pi s}{2} \right)^{-1}\Gamma (s)^{-1}\zeta  (1-s) \\ &= 2^s\pi^{s-1}\sin \frac{\pi s}{2} \Gamma (1-s)\zeta (1-s)\end{split}\end{equation}

と得られる。 Q.E.D.