Beukersがの無理性証明に用いた積分表示を一般化したものをHadjicostasが与えています。Beukersによる無理性証明を解説する前段階として、今回の記事ではBeukers-Hadjicostasの定理の証明を解説します。
証明. に対して、無限等比級数の和の公式により
が成り立つ。なる
を固定する。このとき、任意の非負整数
と
に対して
であり、
が成り立つから、①はで絶対一様収束することがわかる。よって、①を項別積分することにより
を得る。ここで、
である。
関数および、その
階導関数
は
において連続であるから、
が任意のに対して成立する。
次に、②の右辺をに関して
階偏微分することを考える。まず、関数
を
と定義する。この関数のに関する
階偏導関数は
で与えられる。Leibniz則により
が成り立つので、
を得る。であるから、
であり、となる。よって、
に対して
が成り立つ。従って、とすると、④、⑥より
と評価される。より、
は
で絶対一様収束することがわかる。以上より、②の右辺は項別微分可能であり、③と合わせることにより
が任意の自然数と
に対して成立することがわかる。
次になる極限を考える。⑤より、
が自然数のときは
が任意の非負整数および
に対して成り立つ。また、
なので、④より
を得る。⑦の評価はに依っているので少し変形する。まず、定義より明らかに
である。のとき、⑤より
が成り立つ。であるから、
のみに依る定数
が存在して、任意の
に対して
と上から評価できる。よって、④より
を得る。これはに依らない評価である。
であるから、
と極限と和が交換可能であって、和は収束する。よって、⑧、⑨、⑩より、任意の非負整数および
に対して
が成り立つ。今度はとすることを考える。任意の
および非負整数
に対して
であり、であるから
と極限と和が交換可能であって、和は収束する。⑪の左辺について考察する。任意のに対して
であり、
が成り立つ。実際、のとき
であるから、積分が
以上であることは明らかである。
のときは
に関する微分を実行しない場合であり、①が
に対しても成り立つことから、以上の議論より
がわかる。
のときは
に対して
が成り立つので、対数法則を用いてから二項展開することにより
が得られる。なる
を一つとって固定するとき、任意の自然数
に対して
なので、である。よって、考えている積分は収束することがわかるので、Lebesgueの優収束定理より極限と積分が交換可能となって、⑪、⑫より
が示された。とすることにより主張の後半は即座に従う。
の場合は望遠鏡和に分けることによって計算できる*1:
と変形できて前半の主張も得られた。ただし、二つ目の等式は恒等式
において、,
とすることによって得られる。 Q.E.D.
この公式のの場合を用いて
が無理数である事が証明されます:
integers.hatenablog.com
すると、Beukers-Hadjicostasによって一般のの無理性も証明できる気がしますが、それはできません。詳しくは述べないですが、Beukers-Hadjicostasでは
の場合には近似列を得るための自由度が少なく、良い近似を得る事ができません。