インテジャーズ

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数、特に整数に関する記事。

与えられた数の倍数となるような類数をもつ虚二次体の無限性について

前回の記事で虚二次体の類数に関する表を眺めました。

integers.hatenablog.com

表を見ていると自然に疑問に思うことですが、実は次が証明されています:

定理1 与えられた数を類数にもつような虚二次体の個数は有限個である。

一方、次は未解決問題だと思います*1

問題 任意の自然数gが与えられたとき、類数がgとなるような虚二次体が少なくとも一つは存在することを証明せよ。

これに対して、次の定理は昔から知られています:

定理2 任意の自然数gが与えられたとき、類数がgの倍数となるような虚二次体は無数に存在する。

この定理2の証明をAnkeny-Chowla(1953)に従って紹介します*2

補題1 自然数gに対して、
S(g):=\{ d \in \mathbb{N} \mid d=3^g-x^2, x\text{は正の偶数で}x < \sqrt{2\cdot 3^{g-1}}\}
と定義し、
S^{\mathrm{sf}}(g):=\{d \in S(g) \mid d\text{は無平方}\}
とする。このとき、十分大きいgに対して
\displaystyle \#S^{\mathrm{sf}}(g) \geq \frac{4}{25}3^{\frac{g}{2}}
が成り立つ。

証明. xは偶数なので、

\displaystyle \#S(g)=\frac{1}{2}\sqrt{2\cdot 3^{g-1}}+O(1)
が成り立つ(Landauの記号はg \to \inftyで考える)。d \in S(g)は奇数であることに注意。次に、g2以上であると考えてよいので、
\displaystyle \#(S(g) \cap 9\mathbb{Z}) = \#(S(g) \cap 3\mathbb{Z}) \leq \frac{1}{6}\sqrt{2\cdot 3^{g-1}}+O(1).
p5以上の素数とするとき、従って、包含原理より

\begin{equation}\begin{split}\#S^{\mathrm{sf}}(g) &\geq \frac{1}{2}\sqrt{2\cdot 3^{g-1}}-\frac{1}{6}\sqrt{2\cdot 3^{g-1}}+O(1)-\sum_{\substack{p \geq 5 \\ p^2 < 3^g}}\left( \frac{1}{2p^2}\sqrt{2\cdot 3^{g-1}}+2\right) \\ &\geq \frac{1}{2}\sqrt{2\cdot 3^{g-1}}\left( 1-\frac{1}{3}-\sum_{p \geq 5}\frac{1}{p^2} \right)-2\sum_{p^2 < 3^g}1+O(1) \\ &\geq \frac{1}{2}\sqrt{2\cdot 3^{g-1}}\left( 1-\frac{1}{3}-\sum_{n=5}^{\infty}\frac{1}{n^2} \right) + O(g^{-1}\cdot 3^{\frac{g}{2}}) \end{split}\end{equation}

を得る。最後の変形ではChebyshevの定理
integers.hatenablog.com
を用いた。\displaystyle \sum_{n=5}^{\infty}\frac{1}{n^2} < \frac{1}{4}であり\displaystyle \frac{1}{2}\sqrt{2\cdot 3^{g-1}}\left( 1-\frac{1}{3}-\frac{1}{4} \right) > \frac{4}{25}3^{\frac{g}{2}}なので、十分大なるgに対して、\displaystyle \#S^{\mathrm{sf}}(g) \geq \frac{4}{25}3^{\frac{g}{2}}

が成り立つ。 Q.E.D.

補題2 gを十分大きい偶数とする。このとき、d \in S^{\mathrm{sf}}(g)に対してK:=\mathbb{Q}(\sqrt{-d})とすると、g \mid h_Kが成り立つ。ここで、h_KKの類数。

証明. d \in S^{\mathrm{sf}}(g)なので、3^g=x^2+dと書ける(xは正の偶数で、x < \sqrt{2\cdot 3^{g-1}}を満たす)。dが無平方という仮定からx3で割れないため、x^2+d \equiv 0 \pmod{3}が成り立ち、

\displaystyle \left( \frac{-d}{3} \right) = 1

を得る。ここで、上記記号はLegendre記号である。
integers.hatenablog.com

よって、二次体論によりイデアル(3)は完全分解する。すなわち、Kの素イデアル\mathfrak{p}_1, \mathfrak{p}_2が存在して、\mathfrak{p}_1 \neq \mathfrak{p}_2\overline{\mathfrak{p}_1}=\mathfrak{p}_2(共役イデアル)、かつ

(3) = \mathfrak{p}_1\mathfrak{p}_2

が成り立つ。自然数m

\displaystyle m:=\min \{m \in \mathbb{N} \mid \mathfrak{p}_1^m \in \mathcal{P}_K\}

と定める。ここで、\mathcal{P}_KKの分数単項イデアルのなす群である。類数の定義よりm \mid h_Kが成り立つため、m=gを証明すればよい。3^g=(x-\sqrt{-d})(x+\sqrt{-d})で各々の因子は互いに素なので、\mathfrak{p}_1^g \in \mathcal{P}_Kであり、m \leq g。従って、m < gと仮定して矛盾を導けばよろしい。\mathcal{O}_KKの整数環とする。このとき、或る\alpha \in \mathcal{O}_Kが存在して\mathfrak{p}_1^m = (\alpha )と書ける。gは偶数なので、xが偶数であることと合わせるとd \equiv 1 \pmod{4}である。すなわち、\mathcal{O}_K = \mathbb{Z}+\mathbb{Z}\sqrt{-d}が成立。よって、u, v \in \mathbb{Z}が存在して\alpha = u+v\sqrt{-d}と書ける。このとき、

(3^m)=\mathfrak{p}_1^m\mathfrak{p}_2^m = (u+v\sqrt{-d})(u-v\sqrt{-d})=(u^2+v^2d)

なので、3^m=u^2+v^2dを得る(両辺ともに正なので他の単数倍の組み合わせはあり得ない)。

d=3^g-x^2 > 3^g-(\sqrt{2\cdot 3^{g-1}})^2=3^{g-1}

なので、m < gの仮定より

d > 3^{g-1}\geq 3^m=u^2+v^2d

となってv=0が従う。しからば、\mathfrak{p}_1^m=(u)=\mathfrak{p}_2^mとなって素イデアル分解の一意性より\mathfrak{p}_1=\mathfrak{p}_2を得る。これは矛盾。 Q.E.D.

定理2の証明. 倍数を得ることを考えるにあたって、gはいくらでも大きな倍数に取り換えてかまわない。依って、補題1および2から我々は類数がgの倍数となるような虚二次体を少なくとも4/25\cdot 3^{g/2}個入手することが可能である。手中にあるどの体の類数をも割り切らないようになるまでgを類乗したg_1:=g^tを考えよう。このg_1に対して4/25\cdot 3^{g_1/2}個以上の類数がg_1の倍数であるような(従ってgの倍数でもある)虚二次体を得ることができるが、これはg_1の定義から先ほど得た体達とは相異なる。すなわち、このプロセスによってgの倍数であるような類数をもつ虚二次体を無数に手に入れることが出来る。 Q.E.D.

*1:個人的に「類数きっかり問題」と昔から呼んでおります。

*2:定理1の証明は難しいので将来の記事に託します。

*3:pを動かすので+2と精密に書いているが、最初の2つはあとで消えるのでO(1)と書いている。この辺は好みの問題であろう。