において、が奇素数となるようなものをサーチしました。その際、「の乗法性から絶対値が素数になるようなをサーチするにはが素数冪のときだけを考えれば十分である。」と述べました。これは値だけをサーチしたい場合には正しい主張ですが、そのような全てのを調べたいという目的の場合には間違いとなります。というのも、もしとなるようなが存在すれば(しかも仮にと互いに素だったと仮定すると)、も素数となるにも関わらずは素数冪ではないからです。というわけで、厳密には次の補題が必要です:
証明. 乗法性からが素数冪のときに考えれば十分である(は記号の乱用)。さて、をを固定してに関する数列であると考えよう。便宜的にをだけスライドしてと定義する。このとき、漸化式
は
となって、(こう定義する), よりがLucas数列であることを意味する:30:Lucas数列と原始的約数 - INTEGERS
とすると、
が成り立つ。こうして、上記記事で紹介したBilu-Hanrot-Voutierの結果を適用して原始的約数をもつからはではないと結論付ける論法である。ところが、のときに本当に原始的約数をもたない例外ケースになっていないことを確認するのはそれなりに面倒そうである*1。 Q.E.D.
さて、証明には不満が残るものの、補題を認めればの絶対値が奇素数になるようなは素数冪のときに限ることが分かりました。その上で、その冪指数は偶数でなければならないことを示しましたが、最初の方の数値例(最初に挙げた記事)を眺めているとばかりが現れる一方、やのように以外の指数も現れるようです。すると、次のような疑問が生じます。
実はの絶対値が奇素数になることはあり得ません。冪指数が大きい例としては などが知られています。ここで、注目すべきは
素数!
素数!
素数!
素数!
素数!
今回の記事のメインは次の定理を紹介することです:
通常素数については親愛なる素数7758337633へ。あなたが好きです。 - INTEGERSを参照してください。
証明. 素数と以上の奇数を用いてと書けることは既に分かっている。Lucas数列の記事の命題よりならばなので、補題と合わせるとの絶対値が素数ならばは素数でなければならないことがわかる。
また、が非通常素数であると仮定すると、なので、漸化式からと割り切れる。これは仮定に反する。 Q.E.D.
*1:細かいが、のときは例え原始的約数をもつケースだったとしてもでないことだけなら簡単に分かる(のとき、それはではない() )。, ならばは原始的約数をもたないケースとなるが、が整数解を持たないため、このケースは起き得ないとわかる。一方、 (はより大きい偶数)ならばは原始的約数をもたないケースとなるが、今度はが整数解を持たないことを示す必要があるなど面倒である。全てのケースをすっきりと証明できればこの部分を書き直したいが正直実行する気力は起きそうにない。そもそも、Lygeros-Rozierが論文にこの部分の証明を書いていないという始末である。