インテジャーズ

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数、特に整数に関する記事。

Ramanujanのτ関数に関するLygeros-Rozierの定理

integers.hatenablog.com

において、|\tau (n)|が奇素数となるようなものをサーチしました。その際、「\tau (n)の乗法性から絶対値が素数になるようなnをサーチするにはnが素数冪のときだけを考えれば十分である。」と述べました。これは値だけをサーチしたい場合には正しい主張ですが、そのような全てのnを調べたいという目的の場合には間違いとなります。というのも、もし\tau (n) = \pm 1となるようなnが存在すれば(しかも仮に251と互いに素だったと仮定すると)、|\tau (63001n)|も素数となるにも関わらず63001nは素数冪ではないからです。というわけで、厳密には次の補題が必要です:

補題 n > 1ならば、\tau (n) \neq \pm 1である。

証明. 乗法性からnが素数冪p^nのときに考えれば十分である(nは記号の乱用)。さて、\tau (p^n)pを固定してnに関する数列であると考えよう。便宜的にn1だけスライドして\mathrm{LR}_p(n):= \tau (p^{n-1})と定義する。このとき、漸化式

\tau (p^{n+1})=\tau (p)\tau (p^n) - p^{11}\tau (p^{n-1})

\mathrm{LR}_p(n) = \tau (p)\mathrm{LR}_p(n-1)-p^{11}\mathrm{LR}_p(n-2)

となって、\mathrm{LR}_p(0):=0(こう定義する), \mathrm{LR}_p(1)=1より\mathrm{LR}_p(n)がLucas数列であることを意味する。

integers.hatenablog.com

\displaystyle \alpha_p:=\frac{\tau (p)+\sqrt{\tau (p)^2-4p^{11}}}{2}, \beta_p:=\frac{\tau (p)-\sqrt{\tau (p)^2-4p^{11}}}{2}とすると、

\displaystyle \mathrm{LR}_p(n) = \frac{\alpha_p^n-\beta_p^n}{\alpha_p-\beta_p}

が成り立つ。こうして、上記記事で紹介したBilu-Hanrot-Voutierの結果を適用して原始的約数をもつから\mathrm{LR}_p(n)\pm 1ではないと結論付ける論法である。ところが、n=2, 3, 4, 6のときに本当に原始的約数をもたない例外ケースになっていないことを確認するのはそれなりに面倒そうである*1Q.E.D.

さて、証明には不満が残るものの、補題を認めれば\tau (n)の絶対値が奇素数になるようなnは素数冪のときに限ることが分かりました。その上で、その冪指数は偶数でなければならないことを示しましたが、最初の方の数値例(最初に挙げた記事)を眺めていると2ばかりが現れる一方、\tau(47^4)\tau (1511^6)のように2以外の指数も現れるようです。すると、次のような疑問が生じます。

疑問 \tau (p^n)の絶対値が奇素数になるとき、nとしてあり得る偶数はどのようなものか?

実は\tau (p^8)の絶対値が奇素数になることはあり得ません。冪指数が大きい例としては\tau (643^{11688}), \tau (971^{15738}), \tau (509^{18946}), \tau (631^{32370}), \tau (773^{34960})などが知られています。ここで、注目すべきは

11688+1=11689 素数!
15738+1=15739 素数!
18946+1=18947 素数!
32370+1=32371 素数!
34960+1=34961 素数!

今回の記事のメインは次の定理を紹介することです:

定理 (Lygeros-Rozier) \tau (n)の絶対値が奇素数となるのは、通常素数pと奇素数qを用いてn=p^{q-1}と書けるときに限る。

通常素数については
integers.hatenablog.com
を参照してください。

証明. 素数p3以上の奇数rを用いてn=p^{r-1}と書けることは既に分かっている。Lucas数列の記事の命題よりd \mid rならば\mathrm{LR}_P(d) \mid \mathrm{LR}_p(r)なので、補題と合わせると\mathrm{LR}_p(r)の絶対値が素数ならばrは素数でなければならないことがわかる。
また、pが非通常素数であると仮定すると、p \mid \tau (p)なので、漸化式からp^2 \mid \tau (p^{r-1})で割り切れる。これは仮定に反する。 Q.E.D.

*1:細かいが、n=2のときは例え原始的約数をもつケースだったとしても\pm 1でないことだけなら簡単に分かる(\tau (p) =\pm 2^kのとき、それは\pm 1ではない(k \geq 1))。\tau (p)=\pm m, \tau (p)^2-4p^{11}=4-3m^2 \ (m > 1)ならば\mathrm{LR}_p(3)は原始的約数をもたないケースとなるが、m^2-1=p^{11}が整数解mを持たないため、このケースは起き得ないとわかる。一方、\tau (p) = \pm m, \tau (p)^2-4p^{11} = 4-m^2 (m2より大きい偶数)ならば\mathrm{LR}_p(4)は原始的約数をもたないケースとなるが、今度はm^2=2(1+p^{11})が整数解を持たないことを示す必要があるなど面倒である。全てのケースをすっきりと証明できればこの部分を書き直したいが正直実行する気力は起きそうにない。そもそも、Lygeros-Rozierが論文にこの部分の証明を書いていないという始末である。