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INTEGERS

数、特に整数に関する記事。

すむーずぷりんちゃんさんの問題について

問題 (すむーずぷりんちゃん) m2以上の整数とし、
\displaystyle S_m(n):=\sum_{k=1}^nk^m
とおく。このとき、nの多項式として次の整除関係が成り立つことを示せ:
\displaystyle S_2(n) \mid S_m(n) \quad m:偶数,
\displaystyle S_3(n) \mid S_m(n) \quad m:奇数.

これは冪乗和についての法則で、数学的帰納法などを使って巧みに解くことができますが、この記事では冪乗和の公式を使えばベルヌーイ多項式の母関数から簡単に証明できるということを確認します。

冪乗和の公式

S_m(n)nの多項式として明示的に表すことは古典的な問題で、次のような形で解決していました:

冪乗和の公式 次の等号が成り立つ:
\displaystyle S_m(n) = \frac{1}{m+1}\left(B_{m+1}(n)-B_{m+1}\right).

ここで、B_{m+1}及びB_{m+1}(x)はそれぞれ関-Bernoulli数Bernoulli多項式と呼ばれるもので、これらについては関-ベルヌーイ数 - INTEGERSで復習できます。これらの対象は母関数表示

\displaystyle F(t):=\frac{te^t}{e^t-1}=\sum_{m=0}^{\infty}\frac{B_m}{m!}t^m, \quad F(t, x):=\frac{te^{(1+x)t}}{e^t-1}=\sum_{m=0}^{\infty}\frac{B_m(x)}{m!}t^m

によって定義されるのでした。更に、m3以上の奇数であれば B_m=0であったことを思い出しておきます。

示すべきこと

以下、多項式の変数をn \mapsto xとして記述することにします:

\displaystyle S_2(x)=\frac{1}{6}x(x+1)(2x+1), \quad S_3(x)=\frac{1}{4}x^2(x+1)^2

なので、示すべきことは次のようになります。

問題の言い換え(その一) m2以上の整数とする。このとき、常に
S_m(0)=S_m(-1)=0
であり、mが偶数ならば
\displaystyle S_m\left(-\frac{1}{2}\right)=0,
mが奇数ならば
\displaystyle S_m'(0)=S_m'(-1)=0
が成り立つ。ここで、S_m'(x)xに関する微分。

従って、冪乗和の公式を使えば問題は更に次のように言い換えられます:

問題の言い換え(その二) m2以上の整数とする。このとき、常に
B_{m+1}(0)=B_{m+1}(-1)=B_{m+1}
であり、mが偶数ならば
\displaystyle B_{m+1}\left(-\frac{1}{2}\right)=0,
mが奇数ならば
\displaystyle B_{m+1}'(0)=B_{m+1}'(-1)=0
が成り立つ。


こうして、問題はBernoulli多項式及びその微分の特殊値を計算する(だけの)問題に変身しました。

計算の実行

問題の言い換え(その二)は母関数を用いれば簡単に証明できるので、片付けてしまいましょう。

B_{m+1}(0)=B_{m+1}の証明.

F(t, 0)=F(t).

B_{m+1}(-1)=B_{m+1}の証明.

\displaystyle F(t, -1)=\frac{t}{e^t-1}=-t+\frac{te^t}{e^t-1}=-t+F(t).

mが偶数ならば\displaystyle B_{m+1}\left(-\frac{1}{2}\right)=0であることの証明. \displaystyle F\left(t, -\frac{1}{2}\right)が偶関数であることを示せばよい。

\displaystyle F\left(t, -\frac{1}{2}\right)=\frac{te^{\frac{t}{2}}}{e^t-1}

なので、

\displaystyle F\left(-t, -\frac{1}{2}\right)=\frac{-te^{-\frac{t}{2}}}{e^{-t}-1}=\frac{te^{\frac{t}{2}}}{e^t-1}=F\left(t, -\frac{1}{2}\right).

B_{m+1}'(0)=B_{m+1}'(-1)=0の証明.

\displaystyle \frac{\partial}{\partial x}F(t, x) = \frac{t^2e^{(1+x)t}}{e^t-1}=tF(t, x) = \sum_{m=0}^{\infty}\frac{(m+1)B_{m}(x)}{(m+1)!}t^{m+1}

なので、

\displaystyle B_{m+1}'(x) = (m+1)B_m(x)

が成り立つ。よって、m3以上の奇数であれば

\begin{align}&B_{m+1}'(0)=(m+1)B_m(0)=(m+1)B_m=0,\\ &B_{m+1}'(-1)=(m+1)B_m(-1)=(m+1)B_m=0.\end{align}


以上でこの記事を終わります。