Weyl DifferencingによってWeylの一様分布定理を二次式の場合に拡張しましょう。
記号: 実数に対して、に一番近い整数との距離をと表し*1、とします
()。
証明. 三角不等式より
が成り立つ。であれば、等比数列の和の公式と三角不等式により
を得る。任意の実数に対してが成り立つ*2ので証明が完了する。 Q.E.D.
の次数はの次数より落ちていることに注意しましょう。多項式に関する指数和を評価する際に次数を下げることができるというテクニックが"Weyl Differencing"です。
証明. 実数に対して であることに注意すると
と変形できる。とするとであり、
なので、
と計算できる。 Q.E.D.
これがメインの計算ですが、もう少し準備が必要です。
証明. の値はで決まるのでと仮定しても一般性を失わない。また、必要ならばとすることによって
が成り立つと仮定しても一般性を失わない。番号を入れ替えることによって非負値を取るものが
だとする。このとき、に対してかつなので、仮定より
である。従って、
を得る。 よって、
が示された。Q.E.D.
次の補題は繊細な議論が必要であり、Keyとも言えます。
証明. とするとであり、
である。と より は整数ではない。
であり
なので、
を得る。 Q.E.D.
証明. 和の範囲を個ずつに分けるというアイデアによって
とする。この内側の和は補題3によってに対して補題2が適用できる形になっており、
が示された。 Q.E.D.
命題1の証明. とすると
である。よって、Weyl Differencingと補題1によって
と評価できる。よって、命題2でとすることにより
であり、
を得る。 Q.E.D.
証明. なる整数とに対して
を得る。 つまり、
であるが、Dirichletの近似定理によって①を満たすようなペアは無数に存在するので、特にとでき、
が従う。従って、の中身を倍しても同じなので、Weylの規準により証明が完了する。 Q.E.D.
*1:以前違う記号を用いたことがあります。 integers.hatenablog.com
*2:まずJordanの不等式を思い出します。 mathtrain.jp とすると なので、Jordanの不等式により が言えます。