後半では基本Gowers反一様関数に関する一様分布性を証明します。
とすると、§6(その一)の補題より、十分大きい に対して基本Gowers反一様関数は -値関数となることがわかります。
この命題を証明するために、まず次の補題を用意する(基本Gowers反一様関数に関する設定は命題と同じとする)。
証明. の場合に
を示せば十分である。理由: ①が証明されたと仮定して、単項式 , の場合を考える。
とみて①を適用すれば、
が得られる。これが言えれば、一般の多項式 については のノルム性質から所望の評価が得られる。
今、という設定を考えているが、という設定に変更しても一般性を失わない。理由:
なので、§3の補題より、新設定で①が証明されれば
が得られる。
以下、新設定の元、①を証明する。Gowers反一様性ノルムの定義より、①を示すためには
が任意の であって を満たすものに対して成立することを示せばよい。の定義により、は
に等しい。任意の に対して上記期待値は と変数変換することができるので、その変数変換を各に関して施した後に平均を取ることによって、
と書き直すことができる。に関する積を展開して、和の順序を取り替えると
となる。これは、に対して
と記号を導入すると、
とGowersノルムを用いて書き直すことができる。§5(その一)で示したGCS不等式より
なので、
を示せばよい。Hölderの不等式より
なので、各 に対して
を示せばよい。そこで、を固定する。期待値が以下なら主張は成立し、そうでなければ、Hölderの不等式より
なので、
を示せばよい。は の による一様被覆である。理由: この写像は の直積写像であり、であることから各 の各点でのファイバーの元の個数は であり、考えている写像の各ベクトルにおけるファイバーの元の個数は である。
従って、§1, 4の補題より
を得る(依存がなくなっている)。Gowers一様性ノルムと の定義より、これは
に等しく、
と変形できる。今、と仮定しているので、三角不等式より
と評価できる。と変数変換することにより に関する平均は消すことが出来るので、
を示せばよい。さて、が-相関条件を満たすことから、任意の に対して
を満たすような が存在して
が成り立つので、Minkowskiの不等式より
を得る。よって、相異なる に対して
を示せばよい。は の による一様被覆なので、§1, 4の補題と②より
が成り立つ。以上で証明が完了する。 Q.E.D.
命題の証明
を任意にとる。がコンパクト集合 上定義される連続関数なのでWeierstrassの多項式近似定理より、と にのみ依存する変数実数係数多項式 が存在して
が成り立つ。このとき、
理由: と略記すれば
と計算できる。測度の定義より
なので、と合わせて所望の不等式が得られる。
多項式 について
が成り立つ。理由: §6(その一)の命題1、§5(その一)の補題3、この記事で示した補題より
と評価でき、が のみに依存することから所望の漸近公式が得られる。
従って、が のみに依存して十分大きければ
と評価でき、これは
を示している。次に、コンパクト集合 をとって、の場合を考える。を任意にとる。がコンパクトであることから、と のみに依存して正整数 及び が存在して、におけるを中心とする半径 の開円板を とすれば、は で被覆される。よって、或る が存在して であり、
が成り立つ。とすれば、前半の議論により
が成り立つので、が のみに依存して十分大きければ
と評価でき、これは
を示している。 Q.E.D.
*1:位相は integers.hatenablog.com における の位相と同じ。すなわち、ノルムによる距離空間である。