この記事では、一様概周期関数に対して良い振る舞いをする上の
-加法族の存在を示します。
のアトムの個数は高々
個
- 任意の
上の
-加法族
に対して
- 任意の非負値有界
-可測関数
と任意の
に対して非負値有界関数
が存在して、
が成立する。
証明. まず、-加法族
の候補を定義する。
を単位正方形
とし、をGauss整数環とする。
毎に候補
-代数
を
をそのアトムの集合として定義する。well-defined性: アトムの集合として適切かどうかを確認する必要がある(すなわち、の分割になっていなければならない)。複素平面のタイル張り
があるので、の任意の元は
のいずれかの元に属する。また、
の元はどの二つも共通部分を持たない。実際、
が存在して
となるのは が成り立つときのみであり、それは
を意味する(つまり、殆どの
に対して
は空集合)。
は
のみに依存して定義されているので、
のみに依存する
が存在して、
が
となる非負整数
と
なる実数
に対して諸性質を満たすことを示せばよい。以下、
を固定する。まず、
の選択に依らずに成立する性質を示していく。
任意のと
上の
-加法族
に対して
が成立する。理由: 任意のに対して
を示せばよい(勿論の係数は
や
に依らない絶対定数)。
を含むアトムを考えると、或る
が存在して
という状況になっている。よって、 とすると
であり、各に対して
である(は原点中心の単位正方形であった)。従って、
を得る。
また、仮定より なので、
の値域は原点中心半径
の閉円板に含まれる。この閉円板と交わりを持つようなタイル
の個数は高々
個しかない(
なので
に依らない量で押さえられる)。よって、
とアトムの個数が上から押さえられる。
つまり、どのに対する候補
-加法族
も示すべき三つの条件のうち最初の二つを満足する構成となっていることがわかった。三つ目の条件についてはそうはいかない。これから三つ目の条件を満たすような(
と
のみから決まる)
の存在を示すが、まず次のような帰着を行う:
帰着
三つ目の条件は任意の非負値有界-可測関数
と任意の
に関する主張であるが、
としては任意の
に対する特性関数
について示せば十分である。
理由: 固定したに対して、特性関数の場合に限定した三つ目の条件が成立すると仮定する。任意の非負値有界
-可測関数
は
と書ける。この と
に対して三つ目の条件の1. 2. が成立することを確認する。既に示したことによって
と
のみから定まる定数
が存在して、
が成り立つ。に対する
と
に対して、仮定より非負値有界関数
が存在して、
が成立する。このとき、
とすれば がベクトル空間であることから
であり、ノルムの斉次性および三角不等式から
が成り立つ。しかし、この は非負値ではあるが、有界性は保証されていない。①より
の値域は或る閉区間
に含まれている。ここで、
のみから定まる多項式
であって、
を満たすようなものが存在することに注意する。 これは、連続関数
に対してWeierstrassの多項式近似定理を用いて
なる多項式を取れることからわかる。この多項式を使って、と定義する。すると、これは非負値有界関数になっていて、
は
上の関数達のなすBanach代数なので
であり、Banach代数のノルムに関する種々の性質から
が成り立つ。定義の仕方から
は非負値有界関数であることから、
のときは
なので、
すなわち、
が成り立つ。
パラメータを固定した議論
帰着された主張を証明するために を固定する。更に、新しいパラメータ
をとって固定する。
定義よりに対して
が存在して
と書ける。この
に対して
とする。このとき、
である(合成関数 )。理由:
となるための必要十分条件は
であり、これは
と同値である。
ここで、 をとる(後に
に依存して指定する小さい数)。
を
の境界とし、
を
の
-近傍とする。つまり、
に対して
とするとき
ここで、位相空間論において基本的であるUrysohnの補題を思い出す:
とし、
の
における補集合の二つある連結成分のうち、(通常の意味での)有界な方を
、非有界な方を
として、Uryshonの補題を適用することによって存在する連続関数を
とする*2。値域を にしたいので、例えば
を考える。及び ①より、任意の
に対して
の値域を含み、任意の
及び
に対する
を含むような
のみから定まる
上のコンパクト集合
をとることができる。同一視
のもと、
次元Euclid空間に対するWeierstrassの多項式近似定理を
に適用することによって、或る実係数2変数多項式
が存在して、
が成り立つ(は
に依っている)。
から
に戻って記述するために、
とするとき
となる複素係数2変数多項式 をとる。以上の構成から、
上では
であるが、連続化のために作ったとても細い路 上ではそうはいかないので
である。従って、上の関数に戻ると
という特性関数の分解が得られたことになる。この分解に対して、所望の一様概周期関数の候補を
と定める。作り方から は非負値有界関数である。
であり、
は
上の関数達のなすBanach代数なので
である。また、
なので、
上の関数達のなすBanach代数のノルムに対して成り立つ種々の性質と
が所詮
の元に過ぎないということから、
という評価が得られる。
は
から決まる多項式であったが、
を動かしても①のバウンドがあるため、結局
と評価できる。は(
)
に依存して後で設定するため、この候補関数は最終的には三つ目の条件の2. を満たすことが約束された。
あとは の評価であるが、
-ノルムの三角不等式によって、問題となるのは
である(合成関数の記号は以下省略)。
-ノルムの定義と特性関数は二乗しても変わらないという性質から
となっている。ここで、は
の境界
の
-近傍。
の元をランダムに選んだときにある対応する複素数が極めて細い路に入ってしまう確率は小さいと期待したいが、運悪く、悉く細い路に入ってしまう可能性はア・プリオリには否定できない。
を固定して
を動かす
というわけで、これからを動かす。
とは無関係に
を固定する。
を確率空間とみなす(Lebesgue測度)。
を固定して
を動かしたときの
における事象
の確率は高々である(
に依らずに押さえられる)。理由: 考えている事象は
であり、右側の集合の面積はの面積
以下である。そうして、
である*3。
このことから、次のように の期待値は小さい:
ここで、と考えている(複素線積分ではなく同一視
での積分)。期待値が小さいということはMarkovの不等式*4によって、避けたい状況になる確率は実際に低い:
すなわち、高確率で望ましい状況になっている:
よって、
となるが存在する。その
について、固定した
に対応するアトム
がある場合には
と評価できるので、この右辺が 以下になるように
を選ぶことによって考えている
と
に対しては三つ目の条件 が満たされる(現状、
依存があることを除いて)。
③からわかるように、例えと
を適切に選んでも、上記
の選択は
と
に依存している。そこで、これらの依存性をなくす議論を行う。
依存消去
さて、今更であるが、任意の に対して三つ目の条件1. が成り立つことを示すためには、
となるような離散減少列
に対して示せば十分である。そこで、
としよう。
とする。
は
毎に小さくとる予定のパラメータ。
と
に対して、上記確率論的な考察を適用すると、少なくとも確率
で
に対する所望の
が存在することがわかる。このような
達のみからなる
の部分集合
に確率空間を取り替える(
で
の面積を表すとき、
であり、確率測度は
とする)。
に対して同様の議論を行うと、
であり、
が得られる。すなわち、には少なくとも確率
で
に対する所望の
が存在する。ということは
から見れば、少なくとも確率
で と
について同時に三つ目の条件1. を満たすような
が存在することがわかる。
を次のように定義しておく:
以下、帰納的に面積がの
の部分集合
であって
を満たすものを構成でき、確率空間
(測度は
)上で
が成り立つようにできる。
Landauの記号の定数部分がに依ってしまうが、
の選択は
に依って実行するため問題ない*5。従って、
として
から見ることによって、少なくとも確率
で固定した
に対応するアトム
がある場合には全ての
に対して三つ目の条件1. を(つまりは全ての条件を)満たす
が存在することになる。さて、無限積
について
なので、この無限積は絶対収束する。つまり、非零であり、明らかに非負であるから、が確定する
()。
依存消去
最後に、への依存性をなくそう。
は対応する
によって定まるが、考えるべき
*6は高々
個しかない*7ので全ての
を考えて適当に番号を付ける:
そうして、に対して先ほどの議論を行い、
に対しては
を測度空間として同じ議論を適用する。このように測度空間を小さくしていくことによって、少なくとも確率
で全てのアトムに対して三つ目の条件1. を満たす、すなわち所望する全ての性質を満たすような(と
のみに依る)
が存在することがわかった。
ただし、依存消去のときの期待値計算を
としたのと同様の理由で、この部分が
に対して
倍されることに注意。これについては、考えるべき
の個数は
個でもあるので、
は
のみに依存して決めることができて(三つ目の条件2.の成立には)問題ない。 Q.E.D.
と
に対し、この命題によって存在する
を選択して固定する。この際、
が任意のに対して成り立つように選択する。
④が成り立つように取れる理由: 命題の証明中の記号で、
となっており、において
を
に替えても同じであることから、
は
と
に対して共通のものを取れるため。
*1:或る非負整数が存在して、
となる関数。
*2:具体的なケースなのでUryshonは必ずしも必要ありません。
*3:懐かしい問題を思い出しました: http://midori.edu-c.pref.miyagi.jp/gakuryoku/plan/pdf/a_pdf/9nen/a_9_01.pdf
*4:補足:
が測度空間で、
,
-可測関数、
とすると、
とすると、任意の
に対して
が成り立つ。理由:
であれば、
であり、
であっても
である。 よって、
が確率空間で、
を実確率変数、
とする。このとき、
*5:の面積は小さくなっていくが、形状は分からないため②において大雑把に
の面積で押さえることにする。すると、測度を変更している分だけ確率が増えてしまう。
*6:或るが存在して
となり得るもの。
*7:①の議論をに置き換える。