この記事からハイパーグラフ除去補題を証明していく。ハイパーグラフ系を固定する。単に期待値を書いたら上の期待値とする。
Terence Taoによる証明の方針は
と非常に似ている。そこでも扱ったように、上の加法族と に対して条件付き期待値 を
で定義する。ここで、はを含むようなのアトムを表す。
Discrepancyとエネルギー
定義から明らかに である。また、加法族に対して、Tao-§6(1)の補題3より勾股弦の定理
が成り立つので、エネルギーギャップ公式
が得られる。
証明. -discrepancyの定義より任意の に対して或るが存在して、
が成り立つ。これらを用いて、と各 に対してを定義すると、およびが成り立っている(はの生成する上の加法族)。そうして、
が成り立つ。理由: は-可測である。理由: は-可測なので、-可測、-可測となり、積をとったもそうである。また、Tao-§6(1)の基本性質(条件付き期待値の線形性と期待値保存)より、とおくと、が成り立つ。よって、条件付き期待値作用素の自己随伴性より
を得る。従って、二つの式を差し引きすると
が得られる。なので、Cauchy-Schwarzの不等式より
となって、エネルギーギャップ公式より証明が完了する。 Q.E.D.
ランダムネスと構造のダイコトミー
一様ハイパーグラフをと定義する。
(Randomness): 各 に対してなる加法族が存在して、任意のに対して
(Structure): 各 に対してなる加法族が存在して、或るに対して
証明. 次のアルゴリズムを考える:
0. 初期化
. (①、④は成立している。)
1. if
②成立 then
停止
2. else
或るおよびが存在して、
が成り立つ。よって、補題1より各 に対してなる加法族が存在しておよび
が成り立つ。
3. 代入
. (は2. のもの。)
4. if
③成立 then
停止
5. else
(①が成立) 1. へ
5. から2. へ移行する度に
は少なくとも増加する。よって、回目の5. から2. への移行時
が成り立つ。一方、このとき①が成立しているため
と評価できる(加法族の複雑度によるバウンドを使っている)。従って、1. で停止した場合はRandomnessが成立し、1. で停止せずに5. から2. への移行を繰り返すとしても、回目には必ず4. で停止する。このとき、Structureが成立している。 Q.E.D.