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数、特に整数に関する記事。

120:ディオファントスの5つ組予想

Diophantusは次のような興味深い3つ組を発見しました:

3つ組[ 1, 3, 8]:

\begin{equation}\begin{split}&1\times 3+1 = 2^2\\ &1\times 8+1 = 3^2\\ &3\times 8+1=5^2\end{split}\end{equation}

すなわち、どの2つの数を取っても、その積に1を加えれば平方数となる3つ組なのです。このような自然数の3つ組をDiophantusの3つ組と言います。

この記事だけの記号として、(a, b, c)ではなく[a, b, c] と書いたら、a < b < cと仮定されているものとします(4つ以上でも同様)。

疑問:Diophantusの3つ組は無数に存在するか?

答はYes!
なんと、Diophantus自身が証明しています:

定理
kを自然数とすると、[ k, k+2, 4k+4] はDiophantusの3つ組である。特に、Diophantusの3つ組は無数に存在する。

証明. 計算です:

\begin{equation}\begin{split}&k(k+2)+1=(k+1)^2, \\ &k(4k+4)+1=(2k+1)^2, \\ &(k+2)(4k+4)+1=(2k+3)^2.\end{split}\end{equation}
Q.E.D.

一般にDiophantusのnタプルが考えられます:

定義
自然数のnタプル[ a_1, \dots, a_n ] Diophantusのnタプルであるとは、
\displaystyle i \neq j \Longrightarrow {}^{\exists}b_{ij} \in \mathbb{N} \ \text{s.t.} \ a_ia_j+1=b_{ij}^2
が成り立つときにいう。

疑問:Diophantusの4つ組は存在するか?

答はYes!これはFermatが発見しました:

4つ組[ 1, 3, 8, 120]:

\begin{equation}\begin{split}&1\times 3+1 = 2^2\\ &1\times 8+1 = 3^2\\ &3\times 8+1=5^2 \\ & 1\times 120+1=11^2 \\ &3\times 120 +1 = 19^2 \\ &8\times 120+1=31^2\end{split}\end{equation}

これが一番有名なDiophantusの4つ組です*1。ところで、1969年にBakerとDavenportは次の定理を証明しました:

定理(Baker-Davenport)
[ 1, 3, 8, d] がDiophantusの4つ組ならばd=120である。

これから、特に[ 1, 3, 8, 120] はDiophantusの5つ組には延長できないことがわかります。

疑問:Diophantusの4つ組は無数に存在するか?

答はYes!
Diophantusの3つ組からDiophantusの4つ組を作る手続きがあります:

定理(Arkin-Hoggatt-Straus(1979))
[a, b, c] がDiophantusの3つ組であると仮定する。すると、
ab+1=r^2, ac+1=s^2, bc+1=t^2
なる自然数r, s, tが一意的に定まり、
f(a, b, c):=a+b+c+2abc+2rst
とする。このとき、[ a, b, c, f(a, b, c)] はDiophantusの4つ組である。

証明. 単純なる計算で証明できる:

\begin{equation}\begin{split}&af(a, b, c)+1=(at+rs)^2, \\ &bf(a, b, c)+1=(bs+rt)^2, \\ &cf(a, b, c)+1=(cr+st)^2.\end{split}\end{equation}
Q.E.D.

定義
[ a, b, c, f(a, b, c)] なる形のDiophantusの4つ組を正則なDiophantusの4つ組とよぶ。

Diophantusの5つ組はあるの?

答は恐らくNo!
すなわち、次が予想されています:

予想1(Diophantusの5つ組予想) Diophantusの5つ組は存在しない。

また、数値計算から次も予想されています:

予想2 任意のDiophantusの4つ組は正則である。

命題 予想2 \Longrightarrow 予想1。

証明. 予想2が正しいと仮定して、Diophantusの5つ組[ a, b, c, d, e] が存在したと仮定する。このとき、定義から[ a, b, c, d] および[ a, b, c, e] はともにDiophantusの4つ組である。従って、予想2から

\displaystyle d=f(a, b, c) = e

となって矛盾する。 Q.E.D.

次のような先行研究があります:

定理(Dujella(2004))
Diophantusの5つ組は有限個しか存在しない。また、Diophantusの6つ組は一切存在しない。

定理(Elsholtz-Filipin-Fujita(2013))
Diophantusの5つ組の個数は6.8\times 10^{32}個を超えることはない。

追記: 予想1は解決宣言されています。
integers.hatenablog.com

他のDiophantus条件への一般化

以上において解説してきたDiophantusの問題の一般化がBrownおよびDujellaなどによって研究されています:

定義
nを整数とする。このとき、自然数のmタプル[a_1, \dots, a_m] Diophantus条件D(n)を満たすとは
\displaystyle i \neq j \Longrightarrow {}^{\exists}b_{ij} \in \mathbb{N} \ \text{s.t.} \ a_ia_j+n=b_{ij}^2
が成り立つときにいう。

この一般化に対して彼らは次の結果を証明しています:

定理(Brown(1985), etc.)
n4で割った余りが2であるならばD(n)を満たす4つ組は存在しない。

定理(Dujella(1993))
n4で割った余りが2でない場合、更に
n \not \in S:= \{ -4, -3, -1, 3, 5, 8, 12, 20\}
を満たせばD(n)を満たす4つ組が必ず存在する。

一方、次の予想は非常に難しい予想のようです:

予想
n \in Sならば、D(n)を満たす4つ組は存在しない。

特に、D(-1)を満たす4つ組も存在しないと予想されています。これについては、昨日の記事
integers.hatenablog.com
をご覧ください。

D(-1)に関する先行結果として次が知られています;

定理(Dujella-Fuchs(2005))
D(-1)を満たす5つ組は存在しない。また、4つ組[a, b, c, d] が存在すれば、a=1である。

定理(Elsholtz-Filipin-Fujita(2013))
D(-1)を満たす4つ組の個数は5\times 10^{60}個を超えることはない。


他にも多数の先行結果が知られています。

*1:全部素数の二乗!