インテジャーズ

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数、特に整数に関する記事。

リーマンの再配列定理

1=2の証明

級数

\displaystyle 1-\frac{1}{2}+\frac{1}{3}-\frac{1}{4}+\frac{1}{5}-\frac{1}{6}+\frac{1}{7}-\frac{1}{8}+\frac{1}{9}-\frac{1}{10}+\cdots

を考える。これは\log 2に収束する:
mathtrain.jp

\begin{align}2\log 2&=2-1+\frac{2}{3}-\frac{1}{2}+\frac{2}{5}-\frac{1}{3}+\frac{2}{7}-\frac{1}{4}+\frac{2}{9}-\frac{1}{5}+\cdots \\
&= 1-\frac{1}{2}+\left( \frac{2}{3}-\frac{1}{3} \right) -\frac{1}{4} + \left( \frac{2}{5}-\frac{1}{5} \right) -\frac{1}{6}+\left( \frac{2}{7}-\frac{1}{7} \right) -\cdots \text{(⭐︎)} \\
&= 1-\frac{1}{2}+\frac{1}{3}-\frac{1}{4}+\frac{1}{5}-\frac{1}{6}+\frac{1}{7}-\frac{1}{8}+\frac{1}{9}-\frac{1}{10}+\cdots \\
&= \log 2\end{align}


となるので、両辺を\log 2 > 0で割ることによって1=2が得られる。


ちなみに、他にもたくさんの1=2の証明が知られています:
f:id:integers:20170403000157p:plain

絶対収束と条件収束

冒頭の証明のどこが間違っているかというと、(⭐︎)の行を等号で結んでいる箇所で、無限級数においては有限和のときに成立した「項の順序を入れ替えても和は変わらない」という法則が一般には破れます。

高木貞治著『解析概論』の言葉を引用すれば

収束性を度外において, 無限級数を有限級数のように放漫に取扱って, しばしば不可解の矛盾に逢着したことは, 18世紀数学の苦い経験であったのである.

この記事では、実数の級数のみ扱うことにします。単に(無限)級数といえば、収束・発散のどちらのケースも考えます。

定義1 収束級数\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_n絶対収束するとは、\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}\left|a_n\right|が収束するときにいい、その級数を絶対収束級数という。絶対収束しない収束級数は条件収束するといい、その級数を条件収束級数という。

定義2 級数\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_nに対して、全単射\sigma \colon \mathbb{N} \to \mathbb{N}を用いて表される\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_{\sigma (n)}のことを\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_n再配列(級数)という。

絶対収束級数は再配列しても同じ和をとる

定理 与えられた絶対収束級数の任意の再配列級数の和は元の絶対収束級数の和に等しい。

証明. 級数\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_nは絶対収束し、その和がSであると仮定する。全単射\sigma \colon \mathbb{N} \to \mathbb{N}を任意にとる。\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_{\sigma (n)}=Sを示せばよい。

  • \displaystyle S_n := \sum_{k=1}^na_k
  • \displaystyle T_n := \sum_{k=1}^na_{\sigma (k)}
  • \displaystyle R_n := \sum_{k=n+1}^{\infty}\left|a_k\right|

とし、任意に\varepsilon > 0をとる。

まず、\displaystyle \lim_{n \to \infty}S_n=Sなので、番号n_1が存在して

\displaystyle n \geq n_1 \Longrightarrow \left|S_n-S\right| < \frac{\varepsilon}{2}

が成り立つ。また、\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_nが絶対収束するという仮定から\displaystyle \lim_{n \to \infty}R_n = 0なので、番号n_2が存在して

\displaystyle n \geq n_2 \Longrightarrow R_n < \frac{\varepsilon}{2}

が成り立つ。\sigma \colon \mathbb{N} \to \mathbb{N}が全単射なので、i \in \mathbb{N}に対して\sigma (k_i)=iとなるようなk_i \in \mathbb{N}が一意的に定まる。

n_3 := \max\{n_1, n_2\}n_4:=\max\{k_1, \dots, k_{n_3}\}とする。このとき、

\{ 1, 2, \dots, n_3\} \subset \{\sigma (1), \dots, \sigma (n_4)\}

に注意する。n\geq n_4としよう。すると、

\displaystyle \left|T_n-S_{n_3}\right| = \left| \sum_{ \{\sigma (1), \dots, \sigma (n)\} \setminus \{ 1, 2, \dots, n_3\}}a_{\sigma (k)} \right| \leq \sum_{\{\sigma (1), \dots, \sigma (n)\} \setminus \{ 1, 2, \dots, n_3\}}\left|a_{\sigma (k)}\right| \leq R_{n_3} < \frac{\varepsilon}{2}

であり、

\displaystyle \left|T_n-S\right| = \left|T_n-S_{n_3}+S_{n_3}-S\right| \leq \left|T_n-S_{n_3}\right|+\left|S_{n_3}-S\right| < \frac{\varepsilon}{2}+\frac{\varepsilon}{2} = \varepsilon

が得られる。 Q.E.D.

Riemannの再配列定理

Riemannの再配列定理*1 与えられた条件収束級数は適当に再配列をとれば任意の実数に収束させることができる。

証明. 条件収束級数\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_nを考える。a_nのうち、負であるような項が有限個しか存在しないと仮定しよう。すると、有限個の項は級数の収束に影響を与えないので、\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_nの収束は絶対収束であることがわかる。これは条件収束であることに反するので、負であるような項は無数に存在することがわかる。同様に、正であるような項も無数に存在する。

a_n^+:=\begin{cases}a_n & (a_n > 0) \\ 0 & (a_n \leq 0)\end{cases}

\displaystyle a_n^-:=\begin{cases}a_n & (a_n < 0) \\ 0 & (a_n \geq 0)\end{cases}

とし、級数\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_n^+および\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_n^-を考える。この二つの級数がどちらも収束すると仮定すると、

\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}\left|a_n\right| = \sum_{n=1}^{\infty}a_n^+-\sum_{n=1}^{\infty}a_n^-

より\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_nが条件収束であることに矛盾し、片方が収束して他方が発散すると仮定すると、

\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_n = \sum_{n=1}^{\infty}a_n^++\sum_{n=1}^{\infty}a_n^-

より\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_nが収束することに矛盾する。すなわち、これら二つの級数はともに発散することがわかる(直前の式は所謂"不定形"となる)。

任意の実数rを考えよう。これより、\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_nを再配列してrに収束させる。

\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_n^+が発散するので、n_1が存在して

\displaystyle \sum_{n=1}^{n_1-1}a_n^+ \leq r < \sum_{n=1}^{n_1}a_n^+

が成り立つ(n_1=1のときは\displaystyle \sum_{n=1}^{n_1-1}a_n^+:=0とする。以下、同様)。

次に、\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_n^-が発散するので、n_2が存在して

\displaystyle \sum_{n=1}^{n_1}a_n^++\sum_{n=1}^{n_2-1}a_n^- \geq r > \sum_{n=1}^{n_1}a_n^++\sum_{n=1}^{n_2}a_n^-

が成り立つ。

次にn_3が存在して

\displaystyle \sum_{n=1}^{n_1}a_n^++\sum_{n=1}^{n_2}a_n^-+\sum_{n_1+1}^{n_3-1}a_n^+ \leq r < \sum_{n=1}^{n_1}a_n^++\sum_{n=1}^{n_2}a_n^-+\sum_{n_1+1}^{n_3}a_n^+

が成り立ち、n_4が存在して

\displaystyle \sum_{n=1}^{n_1}a_n^++\sum_{n=1}^{n_2}a_n^-+\sum_{n_1+1}^{n_3}a_n^++\sum_{n_2+1}^{n_4-1}a_n^- \geq r > \sum_{n=1}^{n_1}a_n^++\sum_{n=1}^{n_2}a_n^-+\sum_{n_1+1}^{n_3}a_n^++\sum_{n_2+1}^{n_4}a_n^-

が成り立つ。この操作を永遠に繰り返す。得られる級数を

S_{n_1}+S_{n_2}+S_{n_3}+S_{n_4}+\cdots

と表現することにすると、

\displaystyle \left|\sum_{j=1}^{k}S_{n_j}-r \right| \leq \left|a_{n_k}\right|

が成り立っている。\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_nが収束するので、\displaystyle \lim_{n \to \infty}a_n = 0であることに注意すると

\displaystyle \sum_{j=1}^{\infty}S_j=r

が示され、これは\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}a_nの再配列になっている(0である項はダブっているかもしれないが問題ない)。 Q.E.D.

*1:おそらく、Dirichletが1829年にこの事実を指摘し(発見は1827年?)、Riemannが証明(1852-53?, 1857?)。出版されたのは死後。どちらの研究もFourier級数の文脈。