インテジャーズ

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数、特に整数に関する記事。

超越数論の古典的定理

超越数論の古典的な結果のうち、比較的大きな定理を鑑賞しましょう。ここでは証明は紹介しません。

Lindemann-Weierstrassの定理

Lindemann-Weierstrassの定理 (1885) nを正整数とし、\alpha_1, \dots, \alpha_n\mathbb{Q}上一次独立な代数的数とする。このとき、e^{\alpha_1}, \dots, e^{\alpha_n}\overline{\mathbb{Q}}上代数的独立である。

これは、Lindemannが彼の仕事のもとで予想したものであり、Weierstrassが1885年に証明を詳述したためにこのように呼ばれています。

LWの定理の言い換え1 a_1, \dots, a_n0でない代数的数とし、\alpha_1, \dots, \alpha_nを相異なる代数的数とする。このとき、
\displaystyle a_1e^{\alpha_1}+\cdots +a_ne^{\alpha_n}\neq 0
である。

a_1, \dots, a_nを「少なくとも一つが0ではない代数的数」としても主張としては同じです。

同値であることの証明.*1 Lindemann-Weierstrassの定理 \Longrightarrow 言い換え1: \mathbb{Q}上ベクトル空間 \mathbb{Q}(\alpha_1, \dots, \alpha_n )の基底を\beta_1, \dots, \beta_mとする。このとき、

\displaystyle \alpha_i = c_{i1}\beta_1+\cdots +c_{im}\beta_m, \quad c_{ij} \in \mathbb{Q}, \ 1 \leq i \leq n, 1 \leq j \leq m

と書け、\alpha_1, \dots, \alpha_nは相異なるという仮定から各ベクトル(c_{i1}, \dots, c_{im}), \ (1\leq i \leq n)は相異なる。背理法で証明するために

\displaystyle  a_1e^{\alpha_1}+\cdots +a_ne^{\alpha_n}=0

と仮定すると、

\displaystyle a_1(e^{\beta_1})^{c_{11}}\cdots (e^{\beta_m})^{c_{1m}}+\cdots +a_n(e^{\beta_1})^{c_{n1}}\cdots (e^{\beta_m})^{c_{nm}}=0

となる。c_{ij} < 0であるもの全てに対して両辺をe^{-c_{ij}\beta_j}倍することによって、任意のi, jについてc_{ij} \geq 0であると仮定してよいので、これはLWの定理によって e^{\beta_1}, \dots, e^{\beta_m}\overline{\mathbb{Q}}上代数的独立であることに矛盾する。

言い換え1 \Longrightarrow Lindemann-Weierstrassの定理の証明: e^{\alpha_1}, \dots, e^{\alpha_n}が代数的従属であったと仮定する。つまり、0でない代数的数係数多項式

\displaystyle F(x_1, \dots, x_n) = \sum_{i=1}^m a_ix_1^{c_{i1}}\cdots x_n^{c_{in}}

が存在して、F(e^{\alpha_1}, \dots, e^{\alpha_n})=0が成り立つ。\alpha_1, \dots, \alpha_n\mathbb{Q}上一次独立という仮定から c_{i1}\alpha_1+\cdots+c_{in}\alpha_nは各1 \leq i \leq mに対して相異なるため、指数法則でF(e^{\alpha_1}, \dots, e^{\alpha_n})=0を書き直すと言い換え1に矛盾することがわかる。 Q.E.D.

これが次と同値であることは明らかです:

LWの定理の言い換え2 \alpha_1, \dots, \alpha_nを相異なる代数的数とする。このとき、e^{\alpha_1}, \dots, e^{\alpha_n}\overline{\mathbb{Q}}上一次独立である。

Lindemann-Weierstrassの定理の系

系1 a_1, \dots, a_n0でない代数的数とし、\alpha_1, \dots, \alpha_n0でない相異なる代数的数とする。このとき、\displaystyle a_1e^{\alpha_1}+\cdots +a_ne^{\alpha_n}は超越数である。

証明. もし、a_1e^{\alpha_1}+\cdots +a_ne^{\alpha_n}=-a_0が代数的数であれば、言い換え1より a_0 \neq 0であり、

\displaystyle a_0e^0+a_1e^{\alpha_1}+\cdots +a_ne^{\alpha_n}=0

は言い換え1に矛盾する。 Q.E.D.

次は系1の系ですが、よくHermite-Lindemannの定理と呼ばれます。

系2 (Hermite-Lindemannの定理) \alpha0でない代数的数であれば、e^{\alpha}は超越数である。

系3 ネイピア数e及び円周率\piは超越数である。

証明. 系2において \alpha=1とした場合がeの超越性。\piが代数的数であると仮定する。このとき、i\piも代数的数であり、系2より e^{i\pi}=-1が超越数となって矛盾する。よって、\piは超越数である。 Q.E.D.

e\piの超越性証明は既に解説記事を書いていますが、Lindemann-Weierstrassの定理はこれらの証明手法を精密化することにより証明されます(すなわち、本質的には同じ証明)。

integers.hatenablog.com
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Hermite-Lindemannの定理の言い換えを行いましょう。一つ目の言い換えは自明な言い換えです:

HLの定理の言い換え1 \alpha0でない複素数とする。このとき、\alphae^{\alpha}のうち少なくとも一方は超越数である。

HLの定理の言い換え2 0, 1でない代数的数\alphaと対数関数の任意の枝に対して、\log \alphaは超越数である。

同値であることの証明. HLの定理 \Longrightarrow 言い換え2: 0, 1でない代数的数\alphaに対して\beta:=\log \alphaが代数的数であると仮定する。このとき、\beta \neq 0であり、e^{\beta}=\alphaは代数的数である。これはHLの定理に矛盾する。

言い換え2 \Longrightarrow HLの定理: 0でない代数的数\alphaに対して \beta:=e^{\alpha}が代数的数であったと仮定する。このとき、\beta \neq 0, 1であり、\log \beta = \alphaとなる対数関数の枝を取れば、これは言い換え2に矛盾する。 Q.E.D.

次の言い換え3は言い換え2の言い換えです。

HLの定理の言い換え3 \alpha0, 1ではない代数的数とする。このとき、1\log \alpha\overline{\mathbb{Q}}上一次独立である。これは、対数関数の任意の枝に対して成立する。

\exp\log01でない代数的数を代入すると超越数であることが分かりましたが、他の馴染み深い幾つかの関数達の代数的数における値の超越性もLindemann-Weierstrassの定理からわかります。

系4 0でない代数的数\alphaに対して \sin \alpha, \cos \alpha, \tan \alpha, \sinh \alpha, \cosh \alpha, \tanh \alphaは全て超越数である。

証明. Eulerの公式、系1、LWの定理の言い換え1、2などからわかる。 Q.E.D.

Gelfond-Schneiderの定理

Hilbertの第7問題を解決したのがGelfond-Schneiderの定理です。すぐ後で見るように2^{\sqrt{2}}が超越数であることを含む結果ですが、Hilbertが2^{\sqrt{2}}が超越数であることを示すことはRiemann予想やFermatの最終定理を証明することよりも難しいだろうという旨の発言をしたというエピソードは有名です。ちなみに、GelfondとSchneiderは独立の仕事です。

Gelfond-Schneiderの定理 (1934) \alpha, \beta\alpha \neq 0, 1及び\beta \not \in \mathbb{Q}を満たすような代数的数とする。このとき、\alpha^{\beta}は超越数である。

\alpha^{\beta}:=e^{\beta \log \alpha}であり、「\logの枝の取り方に依らずに\alpha^{\beta}は超越数となる」というのが正確な主張の意味です。

GSの定理の言い換え1 \lambda, \beta\lambda \neq 0, \ \beta \not \in \mathbb{Q}を満たすような複素数とする。このとき、e^{\lambda}, \ \beta, e^{\beta \lambda}の少なくとも一つは超越数である。

GSの定理の言い換え2 \alpha, \beta0でない代数的数とし、\alpha \neq 1であるとする。このとき、\log \beta/\log \alpha \not \in \mathbb{Q}であれば、\log \beta/ \log \alphaは超越数である。これは、二つある\logについて任意の枝で成立し、それぞれの枝の選択が一致している必要はない。

GSの定理の言い換え3 \alpha, \beta0でない代数的数であるとする。このとき、\log \alpha\log \beta\mathbb{Q}上一次独立であれば、\log \alpha\log \beta\overline{\mathbb{Q}}上一次独立である。これは、二つある\logについて任意の枝で成立し、それぞれの枝の選択が一致している必要はない。

同値であることの証明. Gelfond-Schneiderの定理 \Longrightarrow 言い換え1: \alpha:=e^{\lambda}とすると、\alpha \neq 0, 1である。\alpha\betaが代数的数であると仮定する。このとき、\log \alpha=\lambdaとなるような枝を取れば \alpha^{\beta}=e^{\beta \lambda}であり、Gelfond-Schneiderによってこれは超越数である。

言い換え1 \Longrightarrow 言い換え2: \displaystyle \lambda:=\log \alpha, \ \beta':=\frac{\log \beta}{\log \alpha}とし、\beta' \not \in \mathbb{Q}とする。e^{\lambda}=\alpha 及び e^{\beta'\lambda}=e^{\log \beta}=\betaは代数的数なので、言い換え1より \beta'は超越数である。

言い換え2 \Longrightarrow Gelfond-Schneiderの定理: \beta':=\alpha^{\beta}=e^{\beta \log \alpha}とし、\log \beta'の方の\logの枝を\log \beta'=\beta \log \alphaとなるように選択する。\beta'が代数的数であると仮定する。\log \alpha \neq 0であり、\displaystyle \beta=\frac{\log \beta'}{\log \alpha} \not \in \mathbb{Q}なので、言い換え2より \betaは超越数である。これは\betaが代数的数であるという仮定に矛盾する。よって、\beta'は超越数である。

言い換え3は言い換え2の単なる言い換えである。 Q.E.D.

Gelfond-Schneiderの定理の系

系5 \ e^{\pi}, \ 2^{\sqrt{2}}, \ \sqrt{2}^{\sqrt{2}}, \ \log_{10}2は超越数である。

証明. \sqrt{2}\log_{10}2が無理数であることは簡単にわかるので、2^{\sqrt{2}}, \ \sqrt{2}^{\sqrt{2}}の超越性はGelfond-Schneiderの定理から、\log_{10}2の超越性はGSの定理の言い換え2から従う。\log(-1)=-i\piとなるような\logの枝を取る。このとき、

\displaystyle (-1)^i=e^{i\log(-1)}=e^{\pi}

なので、Gelfond-Schneiderの定理より e^{\pi}は超越数である。 Q.E.D.

\sqrt{2}^{\sqrt{2}}を使った有名なトリックがありますが、この数が実際に超越数であることがわかります。
tsujimotter.hatenablog.com

Bakerの定理

この節で紹介するBakerの定理は古典的超越数論における最重要定理です。

Bakerの定理 (1966) \alpha_1, \dots, \alpha_n0でない代数的数とする。このとき、\log \alpha_1, \dots, \log \alpha_n\mathbb{Q}上一次独立であれば、1, \log \alpha_1, \dots, \log \alpha_n\overline{\mathbb{Q}}上一次独立である。

ここで、n個ある\logについて任意の枝で成立し、それぞれの枝の選択が一致している必要はありません。次のように枝の選択についての記述を避けることもできます:

Bakerの定理の言い換え 集合\mathcal{L}
\displaystyle \mathcal{L}:=\{\lambda \in \mathbb{C} \mid e^{\lambda} \in \overline{\mathbb{Q}}\}
と定義する。このとき、\lambda_1, \dots, \lambda_n \in \mathcal{L}\mathbb{Q}上一次独立であれば、1, \lambda_1, \dots, \lambda_n\overline{\mathbb{Q}}上一次独立である。

Bakerの定理はHermite-Lindemannの定理とGelfond-Schneiderの共通の一般化であることがわかります(cf. HLの定理の言い換え3、GSの定理の言い換え3)。

Bakerの定理の系

系6 \alpha_1, \dots, \alpha_nを代数的数とし、\log \alpha_1, \dots, \log \alpha_nを考える(各\logの枝はそれぞれ任意に取る)。このとき、\log \alpha_1, \dots, \log \alpha_n\overline{\mathbb{Q}}-線形結合は0でなければ超越数である。

証明. nに関する帰納法で証明する。n=1のときはHLの定理の言い換え2より成立する。n-1のときに成立すると仮定して、nの場合に証明する。

\displaystyle \Lambda := a_1\log \alpha_1+a_2\log \alpha_2+\cdots +a_n\log \alpha_n\neq 0, \quad a_1, \dots, a_n \in \overline{\mathbb{Q}}

を考えて、\Lambdaが超越数であることを証明すればよい。もし、\log \alpha_1, \dots, \log \alpha_n\mathbb{Q}上一次独立であれば、Bakerの定理によって 1, \log \alpha_1, \dots, \log \alpha_n\overline{\mathbb{Q}}上一次独立であるため、\Lambdaは超越数であることがわかる(背理法)。次に、\log \alpha_1, \dots, \log \alpha_n\mathbb{Q}上一次従属であると仮定する。適当に番号を付け替えることによって、

\log \alpha_n \in \mathrm{Span}\langle \log \alpha_1, \dots, \log \alpha_{n-1}\rangle_{\mathbb{Q}}

であると仮定してよい。このとき、\log \alpha_n\log \alpha_1, \dots, \log \alpha_{n-1}\mathbb{Q}-線形結合で書いて、\Lambdaの定義式に代入して整理すれば

\displaystyle \Lambda = b_1\log \alpha_1+b_2\log \alpha_2+\cdots +b_{n-1}\log \alpha_{n-1}\neq 0, \quad b_1, \dots, b_{n-1} \in \overline{\mathbb{Q}}

となり、帰納法の仮定からこれは超越数である。 Q.E.D.

系7 \alpha_1, \dots, \alpha_n, \beta_0, \dots, \beta_n0でない代数的数とする。このとき、e^{\beta_0}\alpha_1^{\beta_1}\cdots \alpha_n^{\beta_n}は超越数である。ここで、各複素数冪についてそれぞれ自由に\logの枝を取ってよい。

証明. \alpha_{n+1}:=e^{\beta_0}\alpha_1^{\beta_1}\cdots \alpha_n^{\beta_n}が代数的数であると仮定する。このとき、\log \alpha_{n+1}の枝を適切に取れば

\displaystyle \beta_1\log \alpha_1+\cdots +\beta_n\log \alpha_n-\log \alpha_{n+1} = -\beta_0 \neq 0

が成り立つが、これは系6に矛盾する。 Q.E.D.

系8 \alpha_1, \dots, \alpha_n, \beta_1, \dots, \beta_nが代数的数であって、\alpha_1, \dots, \alpha_nはどれも0, 1ではなく、1, \beta_1, \dots, \beta_n\mathbb{Q}上一次独立であると仮定する。このとき、\alpha_1^{\beta_1}\cdots \alpha_n^{\beta_n}は超越数である。ここで、各複素数冪についてそれぞれ自由に\logの枝を取ってよい。

n=1の場合がGelfond-Schneiderの定理となっています。

証明. 1を除いた\beta_1 \dots, \beta_n\mathbb{Q}上一次独立であるときに

\Lambda := \beta_1\log \alpha_1+\cdots +\beta_n\log \alpha_n \neq 0

であるという主張を示せばよい。理由: この主張が証明されたとする。本来の仮定「1, \beta_1, \dots, \beta_n\mathbb{Q}上一次独立である」の元で \alpha_{n+1}:=\alpha_1^{\beta_1}\cdots \alpha_n^{\beta_n}が代数的数であると仮定する。自明に\alpha_{n+1} \neq 0であり、主張より\alpha_{n+1} \neq 1である。このとき、\beta_{n+1}:=-1として主張のn+1の場合を適用すると

\displaystyle \beta_1\log \alpha_1+\cdots +\beta_n\log \alpha_n-\log \alpha_{n+1} \neq 0

でなければならないが、これが0となるように\log \alpha_{n+1}の枝を取れるので矛盾する。よって、\alpha_{n+1}は超越数である 

主張は帰納法で証明する。n=1の場合は自明。n-1のときに成立すると仮定して、nのときを証明する。もし、\log \alpha_1, \dots, \log \alpha_n\mathbb{Q}上一次独立であれば、Bakerの定理によって \Lambda \neq 0がわかる。\log \alpha_1, \dots, \log \alpha_n\mathbb{Q}上一次従属なら、適当に番号を付け替えることによって、有理数 c_1, \dots, c_{n-1}が存在して

\log \alpha_n = c_1\log \alpha_1+\cdots +c_{n-1}\log \alpha_{n-1}

と書けると仮定してよい。このとき、

\displaystyle \Lambda = \beta_1'\log \alpha_1+\cdots +\beta_{n-1}'\log \alpha_{n-1}, \quad \beta_i'=\beta_i+c_i\beta_n \ (1 \leq i \leq n-1)

と書ける。\beta_1, \dots, \beta_n\mathbb{Q}上一次独立なので \beta_1', \dots, \beta_{n-1}'\mathbb{Q}上一次独立であり、帰納法の仮定より \Lambda \neq 0が従う。 Q.E.D.

昔の記事

integers.hatenablog.com

に書いてあるルートの\mathbb{Q}上一次独立性の結果を用いると、例えば 2^{\sqrt{2}}3^{\sqrt{3}}5^{\sqrt{5}}7^{\sqrt{7}}の超越性などがわかります。

系9 \alpha, \betaは代数的数で、\beta \neq 0とする。このとき、e^{\alpha \pi+\beta}は超越数である。

証明. \log (-1)=i\piとなるような枝を取ると、e^{\alpha \pi+\beta}=e^{\beta}(-1)^{-i\alpha}となるので、系7よりこれは超越数である(\alpha=0の場合はHermite-Lindemannの定理)。 Q.E.D.

系10 0でない任意の代数的数\alphaと任意の\logの枝に対して、\pi+\log \alphaは超越数である。

証明. \pi+\log \alpha = -i\log (-1)+\log \alphaと書けるので、系6よりこれは超越数である。ただし、\log \alpha = -\pi < 0となることはないことに注意。 Q.E.D.

*1:A \Longrightarrow Bの証明を記述するとき、Aを仮定した上で、Bの主張における記号設定下で議論しているものとします。