インテジャーズ

INTEGERS

数、特に整数に関する記事。

関-ベルヌーイ数に関するジョンソンの手法

関-Bernoulli数に関するp整数性やpを法とした合同式などを統一的に導出するJohnsonの手法を紹介します。関-Bernoulli数については

integers.hatenablog.com

を参照してください。pは素数です。

Johnsonの主張は、関-Bernoulli数に関するいくつかの古典的定理達は以下に述べる二つの材料をもとに統一的な原理で導出することができるというものです。実際には、二つの材料をmixしたJohnsonの基本p進関係式を要に公式を証明していくという形をとります。上記記事で紹介したvon-Staudt-Clausenの定理の証明はまさしくJohnsonの手法に則った証明と言えるのですが、そこでは証明を省いたAdamsの定理、紹介していなかった(\bmod{p}版)Kummer合同式やCarlitzの定理なども導出できます。この記事ではそれらを含む若干の公式をJohnsonの手法で導きます。

記号

p進整数 x \in \mathbb{Z}_pp進展開を

\displaystyle x=\sum_{n=0}^{\infty}x_np^n,\quad 0 \leq x_n \leq p-1

と書く(x_nは有理整数)。

材料1

1p-1乗根全体のなすp進単数群\mathbb{Z}_p^{\times}の部分群をU_pと表すことにする。1 \leq a \leq p-1なる整数aに対して、そのTeichmüllerリフトを\omega(a)と書くことにすると(\omega(a)_0=a)、群同型

\displaystyle \omega \colon (\mathbb{Z}/p\mathbb{Z})^{\times} \xrightarrow{\cong} U_p

がある。よって、特に U_p \simeq \mathbb{Z}/(p-1)\mathbb{Z}である。p=2のときはTeichmüller指標は普通 \omega\colon (\mathbb{Z}/4\mathbb{Z})^{\times}\xrightarrow{\cong} \{\pm 1\}を考えるが、ここでは上記自明な写像のみ考えることにする。

U_pの群構造から正整数nに対して

\displaystyle \sum_{\xi \in U_p}\xi^n = \begin{cases}0 & (p-1 \nmid n) \\ p-1 & (p-1 \mid n) \end{cases}

が成り立つが、これが一つ目の材料である。

材料2

主役である関-Bernoulli数について、Johnsonの手法に関しては

\displaystyle \frac{te^t}{e^t-1} = \sum_{n=0}^{\infty}\frac{B_n}{n!}t^n

による定義ではなく

\displaystyle \frac{t}{e^t-1} = \sum_{n=0}^{\infty}\frac{B_n}{n!}t^n

による定義を採用する(すなわち、B_1=-1/2の方)。

蛇足
私は普段は前者の流儀を採用しているのですが、その理由の一つにFaulhaberの公式が自然に感じられることをあげられます*1n乗和をkに関する多項式として表す公式ですが、

s_n(k):=1^n+2^n+\cdots +(k-1)^n

の公式よりも

S_n(k):=1^n+2^n+\cdots+k^n

の公式の方が冪乗和の公式としては自然に思える気がするのです(個人の感想)。しかしながら、Johnsonの手法ではs_n(p)p冪で表すため、後者のメジャーな定義の方が議論しやすいです(s_n(p)=S_n(p)-p^nなので実は定義を気にする必要はないのですが)。
蛇足終わり

さて、今回採用の定義におけるFaulhaberの公式は

\displaystyle s_n(k) = \frac{1}{n+1}\sum_{j=1}^{n+1}\binom{n+1}{j}B_{n+1-j}k^j

となるが、これが二つ目の材料である。

Johnsonの基本p進関係式

1 \leq a \leq p-1なる整数aに対して、p進整数t(a)

\displaystyle \omega(a) = a+t(a)p

で定義する。すなわち、\displaystyle t(a) = \sum_{n=1}^{\infty}\omega(a)_np^{n-1}である。このとき、材料1の和をt(a)とFaulhaberの公式を使って次のように計算できる:

\begin{align} \sum_{\xi \in U_p}\xi^n &= \sum_{a=1}^{p-1}\omega(a)^n = \sum_{a=1}^{p-1}(a+t(a)p)^n \\ &=\sum_{a=1}^{p-1}\sum_{j=0}^n\binom{n}{j}a^{n-j}t(a)^jp^j \\ &= s_n(p)+\sum_{j=1}^n\binom{n}{j}\Biggl(\sum_{a=1}^{p-1}a^{n-j}t(a)^j\Biggr)p^j\\ &=\sum_{j=1}^n\binom{n}{j}\Biggl(\frac{B_{n+1-j}}{n+1-j}+\sum_{a=1}^{p-1}a^{n-j}t(a)^j\Biggr)p^j+\frac{p^{n+1}}{n+1}.\end{align}

最後に \frac{1}{n+1}\binom{n+1}{j}=\frac{1}{n+1-j}\binom{n}{j}なる変形を行っていることに注意。両辺をnpで割って材料1を適用することによって、次が得られた。

Johnsonの基本p進関係式 nを正整数とし、修正関-Bernoulli数\widehat{B}_n
\displaystyle \widehat{B}_n:=\begin{cases} B_n/n & (p-1 \nmid n) \\ (B_n+\frac{1}{p}-1)/n & (p-1 \mid n)\end{cases}
と定義する。このとき、次のp進関係式が成立する。
\displaystyle \widehat{B}_n+\sum_{a=1}^{p-1}a^{n-1}t(a)+\sum_{j=2}^n\frac{1}{n}\binom{n}{j}\Biggl(\frac{B_{n+1-j}}{n+1-j}+\sum_{a=1}^{p-1}a^{n-j}t(a)^j\Biggr)p^{j-1}+\frac{p^n}{n(n+1)}=0.

これから色々出るよという話です。

p-orderに関する補題

補題 jが正整数であれば
\displaystyle \mathrm{ord}_p\left(\frac{p^j}{j!}\right) > \frac{p-2}{p-1}j
が成り立つ。

証明. Legendreの公式より

\displaystyle \mathrm{ord}_p(j!) = \frac{j-\sum_{n\geq 0}j_n}{p-1} < \frac{j}{p-1}

なので、

\displaystyle \mathrm{ord}_p\left(\frac{p^j}{j!}\right) = j- \mathrm{ord}_p(j!) > j-\frac{j}{p-1} = \frac{p-2}{p-1}j

を得る。 Q.E.D.

古典的定理達の導出

定理1 nを正整数とする。pが奇素数であれば \widehat{B}_n \in \mathbb{Z}_pが成り立つ。また、2\widehat{B}_n \in \mathbb{Z}_2が成り立つ。

証明. nに関する数学的帰納法で証明する。n=1のときはB_1=-1/2より成立している。n未満で主張が成立すると仮定する。pが奇素数の場合を考える。Johnsonの基本関係式によって示すべきことは

\displaystyle \frac{p^{j-1}}{j!}\frac{B_{n+1-j}}{n+1-j} \ \ (2 \leq j \leq n),\quad \frac{p^n}{n(n+1)}

p整数性である。帰納法の仮定により2 \leq j \leq nに対して

\displaystyle p\frac{B_{n+1-j}}{n+1-j} \in \mathbb{Z}_p

であり、j \geq 2, p \geq 3のとき補題より

\displaystyle \mathrm{ord}_p\left(\frac{p^{j-1}}{j!}\right) > \frac{p-2}{p-1}j-1 \geq \frac{2(p-2)}{p-1}-1 \geq 0

すなわち、

\displaystyle \mathrm{ord}_p\left(\frac{p^{j-1}}{j!}\right) \geq 1

であることから所望のp整数性が従う。p=2の場合であっても \mathrm{ord}_2(2^{j-1}/j!) \geq 0は言えるので、2倍すれば同じ証明が機能する。 Q.E.D.

系1 (von-Staudt-Clausen) nを正整数とする。このとき、
\displaystyle B_{2n}+\sum_{p-1 \mid 2n}\frac{1}{p}
は有理整数である。

証明. 示すべきことは、p-1 \nmid 2nのときB_{2n} \in \mathbb{Z}_pであり、p-1 \mid 2nのときB_{2n}+\frac{1}{p} \in \mathbb{Z}_pとなることであるが、これは定理1より従う。 Q.E.D.

特に、pB_{n(p-1)} \equiv -1 \pmod{p}が成り立つ。

系2 (Adams) nを正整数とする。p-1 \nmid 2nのとき、\mathrm{ord}_p(2n)\leq \mathrm{ord}_p(N_{2n})が成り立つ。ここで、N_{2n}B_{2n}の既約分数表示における分子。

証明. 示すべきことは、p-1 \nmid 2nのとき B_{2n}/2n \in \mathbb{Z}_pとなることであるが、これは定理1より従う。 Q.E.D.

系3 (Carlitz) nを正整数、eを非負整数とする。p^e(p-1)\mid 2nであれば、B_{2n}+\frac{1}{p}-1の既約分数表示の分子はp^eで割り切れる。

証明. 示すべきことは、p-1 \mid 2nのとき (B_{2n}+\frac{1}{p}-1)/2n \in \mathbb{Z}_pとなることであるが、これは定理1より従う。 Q.E.D.

p \geq 5, \ j \geq 3であれば、補題より

\displaystyle \mathrm{ord}_p\left(\frac{p^{j-1}}{j!}\right) > \frac{p-2}{p-1}j-1 \geq \frac{3(p-2)}{p-1}-1 \geq 1

すなわち、

\displaystyle \mathrm{ord}_p\left(\frac{p^{j-1}}{j!}\right) \geq 2

が成り立つので、Johnsonの基本p進関係式より

\displaystyle \widehat{B}_n+\sum_{a=1}^{p-1}a^{n-1}t(a)+\frac{p}{2}B_{n-1}\equiv 0 \pmod{p},\quad p\geq 5, n\geq 2 −①

が得られる。

定理2 kを正整数とするとき、B_{2k+1}=0が成り立つ。

証明. n :=2k+1, \ p \geq 5, \ p-1 \nmid 2kとする。1 \leq a \leq p-1なる整数aに対して、\omega(a)^p=\omega(a)であることから

a^p \equiv a+\omega(a)_1p \pmod{p^2}

が成り立つ。よって、特に

\displaystyle t(a) \equiv \omega(a)_1 \equiv \frac{a^p-a}{p} = aq_p(a) \pmod{p} −②

が得られる(q_p(a)Fermat商)。これより、

t(a)+t(p-a) \equiv -1 \pmod{p}

なので、

\displaystyle \sum_{a=1}^{p-1}a^{2k}t(a) \equiv \sum_{a=1}^{\frac{p-1}{2}}a^{2k}\left(t(a)+t(p-a)\right) \equiv -\sum_{a=1}^{\frac{p-2}{2}}a^{2k} \pmod{p}

であるが、p-1 \nmid 2kであることから

\displaystyle 2\sum_{a=1}^{\frac{p-1}{2}}a^{2k} \equiv \sum_{a=1}^{p-1}a^{2k} \equiv \sum_{\xi \in U_p}\xi^{2k} = 0 \pmod{p}

である。従って、①より

\displaystyle \widehat{B}_{2k+1}+\frac{p}{2}B_{2k} \equiv 0 \pmod{p}

が得られるが、p-1 \nmid 2kよりB_{2k} \in \mathbb{Z}_pであり、p-1 \nmid 2k+1より\widehat{B}_{2k+1} = B_{2k+1}/(2k+1)なので

\displaystyle B_{2k+1} \equiv 0 \pmod{p}

が従う。条件を満たす素数 pは無数に存在するので、B_{2k+1}=0でなければならない。 Q.E.D.

関-Bernoulli数の母関数表示から自明である定理2をJohnsonの手法で証明することは馬鹿げて見えますが、Johnsonの手法はp進的な手法であるにも関わらず pに依らない関-Bernoulli数に関する等式を証明するポテンシャルがあることがわかります。定理2は本当に自明ですが、非自明な等式が果たしてJohnsonの手法から得られるでしょうか?

この疑問についてはここでは置いておくことにして、①、②から次がわかります。

定理3 nを正整数とし、p \geq 5とする。このとき、合同式
\displaystyle \widehat{B}_{2n}+\sum_{a=1}^{p-1}a^{2n}q_p(a) \equiv 0 \pmod{p}
が成り立つ。

w_pWilson商とします。定理3、Fermatの小定理、Lerchの合同式より次の合同式が得らます。

系4 (Carlitz) nを正整数、p \geq 5p-1 \mid 2nとするとき
\displaystyle \frac{B_{2n}+\frac{1}{p}-1}{2n} \equiv -w_p \pmod{p}
が成り立つ。

また、定理3の合同式における和はFermatの小定理によって周期性を持つため、次が従います。

系5 (Kummer) nを正整数とし、p \geq 5とする。このとき、
\displaystyle \widehat{B}_{2n} \equiv \widehat{B}_{2n+p-1} \pmod{p}.

p-1 \nmid 2nのときが有名なKummerの合同式の\bmod{p}の場合です。

最後に、VoronoiとVandiverによって得られた合同式を証明するために、定理3を p-1 \nmid 2nの場合に見かけ上一般的な形に言い換えましょう。

定理4 nを正整数とし、p \geq 5とする。p-1 \nmid 2nであれば、任意の p進単数 u \in \mathbb{Z}_p^{\times}に対して
\displaystyle \frac{B_{2n}}{2n}+u^{2n-1}\sum_{\xi \in U_p}(u\xi)_1\xi^{2n-1} \equiv 0 \pmod{p}
が成り立つ。

証明. u=1の場合は定理3そのものである。u \in \mathbb{Z}_p^{\times}を任意にとる。このとき、\xi \in U_pに対して

(\omega(u_0)\xi)_0 \equiv u_0\xi_0 \pmod{p}

及び

(\omega(u_0)\xi)_1 \equiv (u\xi)_1+(\omega(u_0)_1-u_1)\xi_0 \pmod{p}

が成り立つ。二つ目の式の理由:

(u_0+\omega(u_0)_1p)(\xi_0+\xi_1p) \equiv u_0\xi_0+(\omega(u_0)_1\xi_0+u_0\xi_1)p\pmod{p^2}

であり、

\displaystyle (u\xi)_1\equiv u_1\xi_0+u_0\xi_1 +\left[\frac{u_0\xi_0}{p}\right]\pmod{p}

であることから

\displaystyle (\omega(u_0)\xi)_1 \equiv \omega(u_0)_1\xi_0+u_0\xi_1 +\left[\frac{u_0\xi_0}{p}\right]\equiv (u\xi)_1+(\omega(u_0)_1-u_1)\xi_0 \pmod{p}

が得られる

よって、変数変換 \xi \mapsto \omega(u_0)\xiより

\begin{align} \sum_{\xi \in U_p}\xi_1\xi^{2n-1} &\equiv \sum_{\xi \in U_p}\xi_1\xi_0^{2n-1} = \sum_{\xi \in U_p}(\omega(u_0)\xi)_1(\omega(u_0)\xi)_0^{2n-1} \\ &\equiv u_0^{2n-1}\sum_{\xi \in U_p}(u\xi)_1\xi_0^{2n-1}+u_0^{2n-1}(\omega(u_0)_1-u_1)\sum_{\xi \in U_p}\xi_0^{2n} \pmod{p}\end{align}

と計算できるが、p-1 \nmid 2nなので \displaystyle \sum_{\xi \in U_p}\xi_0^{2n}  \equiv 0 \pmod{p}であり、u=1の場合から一般の場合が従うことがわかった。 Q.E.D.

系6 (Voronoi) n, bを正整数とし、p \geq 5, \ p-1 \nmid 2n, \ p \nmid bとする。このとき、合同式
\displaystyle (b^{2n}-1)\frac{B_{2n}}{2n}\equiv b^{2n-1}\sum_{a=1}^{p-1}\left[\frac{ba}{p}\right]a^{2n-1} \pmod{p}
が成り立つ。

証明. p \nmid bなので、bp進単数である。よって、定理4より

\displaystyle \frac{B_{2n}}{2n}+b^{2n-1}\sum_{\xi \in U_p}(b\xi)_1\xi^{2n-1}\equiv 0 \pmod{p}

が成り立つ。この合同式からこの合同式のb=1の場合の合同式 \times b^{2n}を引くことにより

\displaystyle (b^{2n}-1)\frac{B_{2n}}{2n}\equiv b^{2n-1}\sum_{\xi \in U_p}\left( (b\xi)_1-b\xi_1\right)\xi^{2n-1} \pmod{p}

が得られる。ここで、

\displaystyle (b_0+b_1p)(\xi_0+\xi_1p) \equiv b_0\xi_0+b_0\xi_1p+b_1\xi_0p \pmod{p^2}

より

\displaystyle (b\xi)_1 \equiv b_0\xi_1+b_1\xi_0+\left[\frac{b_0\xi_0}{p}\right]\pmod{p}

なので、

\displaystyle (b\xi)_1-b\xi_1 \equiv b_1\xi_0+\left[\frac{b_0\xi_0}{p}\right] \equiv \left[\frac{b\xi_0}{p}\right] \pmod{p}

と計算できる。よって、所望の合同式が示された。 Q.E.D.

これは次の合同式と同値です。

系6 (Vandiver) n, bを正整数とし、p \geq 5, \ p-1 \nmid 2n, \ p \nmid bとする。このとき、合同式
\displaystyle (1-b^{2n})\frac{B_{2n}}{2n}\equiv b^{2n-1}\sum_{j=1}^{b}\sum_{a=1}^{[jp/b]}a^{2n-1} \pmod{p}
が成り立つ。

証明. (j-1)p \leq ba < jp \Longleftrightarrow \left[\frac{ba}{p}\right]=j-1より、

\displaystyle b^{2n-1}\sum_{a=1}^{p-1}\left[\frac{ba}{p}\right]a^{2n-1} \equiv b^{2n-1}\sum_{j=1}^b(j-1)\sum_{(j-1)p \leq ba < jp}a^{2n-1} \pmod{p}.

また、明らかにp-1 \nmid 2n-1なので \displaystyle \sum_{a=1}^{p-1}a^{2n-1} \equiv 0 \pmod{p}であるから、Voronoiの合同式より

\displaystyle (1-b^{2n})\frac{B_{2n}}{2n}\equiv b^{2n-1}\sum_{j=1}^b(b-j+1)\sum_{(j-1)p \leq ba < jp}a^{2n-1} \pmod{p}.

(j-1)p \leq ba < jp \Longleftrightarrow \left[\frac{(j-1)p}{b}\right] < a \leq \left[\frac{jp}{b}\right]なので、和の順番を変更すれば主張の合同式となる。 Q.E.D.

*1:ちなみに、他の理由の一つとして、尊敬する岩澤先生が著作の中で前者の定義を採用しているというものがあります。