Ramanujanの見つけた魅力的な数列が乗法性
が満たすことをRamanujanの見つけた魅力的な数列 - INTEGERSで紹介しました。実はこれに合わせて、素数と自然数
に対して
が成り立つことをRamanujanは1916年の論文で予想しました。これらは予想が提出されてから一年後の1917年にMordellによって証明されました*1。
この二つの事実から、任意のの値は素数
に対する
さえ分かれば計算できることが分かります。また、
に付随する
関数を
と定義するとき、Euler積表示
を持つことが分かります。実際、素数冪に関する漸化式を用いることによって素数に対して
がにおいて成り立つので、
そうして、の乗法性からRiemannゼータ関数のEuler積表示の証明と同様に考えることによって
が得られます*2。
互いに素でない場合の乗法性が成り立たないことによってRiemannゼータ関数やDirichlet関数のときとは違って最後の等比級数の和の変形が
に対しては実行出来ないですが、代わりに素数冪に対する漸化式を用いることによって上述のように新しい種類のEuler積表示が得られることをRamanujanが発見したのです。この新しいEuler積表示は分母が
に関する二次式(
)となっていることから「二次のゼータ」と呼ばれます*3。
これらは1917年には正しい事実となったわけですが、Ramanujanは60年近く未解決であった難問を同時に提出していました。それが所謂Ramanujan予想です:
の判別式が
であることから、Ramanujan予想は
の根が虚数であることと同値であり、更にはその根の絶対値が
と言っても同値であり、
の零点の実部が
であることとも同値であることが分かります。
これは結局1974年のDeligneによるWeil予想の解決に伴って解決されることとなりました。なお、これよりは
で絶対収束することが分かります。
(おまけ)
との整合性
を紹介しました。実際には、次が成り立ちます:
定理Pはどうやって証明するかというと、定理Nを証明してその系として導出します。そういう意味では全く無意味なことなのですが、定理Pから定理Nを導出してみましょう。
(約数総和関数のときと同様)も乗法性を持つので、
に関しても素数冪の漸化式
が成り立つことを示せばおしまいです。これは
と容易に確認できます。