インテジャーズ

インテジャーズ

数、特に整数に関する記事。

ディリクレの算術級数定理のL関数を用いない証明

記念すべき250記事目ということで、整数論における極めて有名な次の定理の証明を解説します:

Dirichletの算術級数定理 a, bを互いに素な自然数とする。
このとき、an+b (n \in \mathbb{N})の形で表される素数は無数に存在する。

いきなり、証明を読みたい方は「非自明指標に対する級数と漸近公式」に飛んでください。

初等的証明が知られているケース

b=1のときには円分多項式を用いた初等的な証明が知られており、
integers.hatenablog.com
の中で、(おまけ)として解説しています。

その他の散発的なケースとして、3n+2型、4n+3型、6n+5型、8n+5型素数の無限性については初等的な証明が知られています:
tsujimotter.hatenablog.com

算術級数定理の証明を知るのに困難はない。

算術級数定理はDirichletによって1837年に証明されました。彼はDirichlet指標\chiに対するDirichlet L関数L(s, \chi)を導入し、それがRiemannゼータ関数の時と同様にEuler積表示

\displaystyle L(s, \chi) = \sum_{n=1}^{\infty}\frac{\chi (n)}{n^s}=\prod_p\frac{1}{1-\frac{\chi (p)}{p^s}}

を持つことを示しました。そうして、L(s, \chi)の解析関数としての情報から算術級数定理を証明し、それは整数論に解析学的手法(特にL関数)を持ち込んだ画期的な出来事であったのです(この研究はRiemannの素数研究(1859)以前の話で、実数範囲の解析のみでなされています。ゼータを複素関数として扱うとより色々なことが分かるという段階へ到達するにはRiemannという天才の出現を待つ必要がありました)。

これは当時としては画期的だったと思われますが、その証明を学ぶのに現代においては全く困難はありません。算術級数定理の証明が書かれている定評のある日本語の文献が既に多数存在し、どれも短いページ数でまとめられているからです。

私の手元にあるものをいくつか挙げると(どれも古くて名著ですが)、高木貞治『初等整数論講義』の附録§59、河田敬義『数論』第6章、Serre (彌永健一訳)『数論講義』第6章などがあります。特にSerreがコンパクトにそれだけを主題にまとめていて(22ページ*1 )、オススメです。

高木貞治『初等整数論講義』は素数定理については「その証明は複雑であるから, 本書に述べることはできない.」と書いてあり、はるかに簡単なはずのBertrandの仮説(本ではTschebyschefの定理)についても「これも粗雑であるが, 証明は随分むずかしい.」などと書いていて証明を割愛しており、むしゃくしゃするのですが、算術級数定理については「Dirichletの証明はむずかしいが, 現在ほかに簡単な証明がないから, ここでは定理を紹介するだけにしておかなければならない」などと言いつつも、附録にちゃんと証明を書いてくれているツンデレ仕様です。

ちなみに、『初等整数論講義』は"附録"が一番面白い本だと思っています。算術級数定理だけではなく、二次体の類数公式の証明なども載っています。僕もいつか付録が一番面白い本を書いてみたいです。

また、Web上にも算術級数定理の証明を日本語でまとめたPDFなどが転がっています(普段は定理の主張ばかりを書き並べている*2Wikipediaでさえ証明を書いています→算術級数定理 - Wikipedia)。

従って、わざわざインテジャーズに算術級数定理の証明を載せる必要はないことが示されました。

L関数を用いない証明が存在する。

「Dirichletの証明はむずかしいが, 現在ほかに簡単な証明がないから, ここでは定理を紹介するだけにしておかなければならない」という文を引用しましたが、幾つかの別証明が存在しています。

素数定理は元々Riemannゼータ関数の複素関数としての情報から証明されたものでしたが、ErdösとSelbergによってゼータ関数や複素解析を用いない初等的証明がなされたことを思い出しましょう。
integers.hatenablog.com

その証明は例えばAbelの総和法
integers.hatenablog.com
が大活躍する「漸近公式を次々に示していくことによる証明法」だったと言えるでしょう。以下、「漸近公式手法」と表現することにします。

素数定理はかなり深い定理なのであって、そのようなものが「漸近公式手法」で証明されることは幾分驚くべきことだったわけですが、それは算術級数の場合にも応用できて然るべきです。実際、Selbergは素数定理の初等的証明と同時期に次の論文を発表しています:

A. Selberg, "An elementary proof of Dirichlet's theorem about primes in an arithmetic progression", Ann. of Math. Second Series, Vol. 50, No. 2 (1949), 297-304.

これは漸近公式手法による素数定理の証明を真似て算術級数定理を証明した論文で、DirichletのL関数は用いません。しかし、素数定理の漸近公式手法による証明が簡単ではなかったことを思い出すと、この論文も決して読みやすくはなく、難解です。

算術級数定理の主張は無限性という定性的なものであって、素数定理レベルの定量的なことを要求されてはいません。なので、素数定理の証明に比べれば簡単になっていて欲しいのですが、Selbergの論文はそうなってはいないのです。

実はSelbergと同時期にShapiroという人が算術級数定理の別証明を発表しています:

H. N. Shapiro, "On primes in arithmetic progressions (II)", Ann. of Math. Second Series, Vol. 52, No. 1 (1950), 231-243.

この論文における証明も漸近公式手法による証明なのですが、Selbergの論文との比較で言えば、より簡単な証明となっています(あくまで個人的感想です。Selbergの手法は素数定理の証明の類似の議論であるためオーバーキル感が否めませんし、その割に主結果も弱いです。ちなみに、論文(Ⅰ)はSelbergの内容に近いです)。

前節で算術級数定理のL関数を用いた証明を紹介する意義がないことを示しましたが、こちらの証明は(Apostolの有名な教科書で紹介されているものの)日本語の記事として紹介されていることは少ないと思うので、この記事で紹介したいと思います。これで、算術級数定理の証明もインテジャーズ内でself-containedに習得でき、なおかつ他の文献には余り書いてないことを紹介したいという個人的欲求も満たされます笑。

算術級数版Mertensの定理

素数の無限性の証明は多数知られていますが、単に素数の無限性のみを示すのではなく少し強い形で証明しておいて、その系として素数の無限性を導出するというタイプの証明も存在します。例えば、

\displaystyle \sum_p \frac{\log p}{p} = \infty ー①

\displaystyle \sum_p \frac{1}{p} = \infty ー②

を示す証明法があげられます(和は素数全体をわたる。以下、pと書けば素数)。一つ目の発散よりも二つ目の発散の方が強い結果です(二つ目が発散すれば一つ目は自動的に発散する)。これらの証明については

integers.hatenablog.com

の最後の方で解説しています。

Dirichletの算術級数定理のDirichletによる証明はL関数のs \to 1における挙動をみるもので、結果としては無限性より強い

\displaystyle \sum_{p \equiv b \bmod{a}}\frac{1}{p} = \infty

を示すことができます。というより、これを示すことによって算術級数定理を導出します。ここで、a, bは互いに素な自然数。実際にはもう少し精密に

\displaystyle \sum_{p \equiv b \bmod{a}}\frac{1}{p^s} \sim \frac{1}{\varphi (a)}\log \frac{1}{s-1} \ \ (s \to 1)

という漸近公式を示せます(\varphi (a)はEulerのトーシェント関数)。これはDirichlet密度(=Kronecker式密度=解析的密度)が正で1/\varphi (a)に等しいことを言っています。それがbに寄らないことは美しい結果であり、そのことが最近の仕事である
integers.hatenablog.com
の不思議さを理解する上での基礎的知識となります。なお、自然密度が存在すればDirichlet密度と自然密度は一致するという定理がありますが、その証明も余り見ない(Serreでは省略されている)ので別の記事で書くかもしれません。

さて、今回紹介するShapiroの証明では、逆数和の発散を示すのではなく、それより少し弱い

\displaystyle \sum_{p \equiv b \bmod{a}}\frac{\log p}{p} = \infty

を示すことを目指します。算術級数定理を導くにはこれで十分なのです。

①、②はそれぞれMertensの第一定理、第二定理と呼ばれるより精密な漸近公式に拡張できました:
integers.hatenablog.com
integers.hatenablog.com

実際には、Shapiroが証明したのはMertensの第一定理の算術級数版とでも言うべきものであって、この記事で示す最終目標は次の定理になります:

定理1 a, bを互いに素な自然数とする。このとき、x \to \inftyにおける漸近公式
\displaystyle \sum_{p \leq x, \ p \equiv b \bmod{a}}\frac{\log p}{p} = \frac{1}{\varphi (a)}\log x + O(1)
が成り立つ。

一見すると、Dirichletの方法では算術級数に関する素数の逆数の和の発散まで言えるのに対し、Shapiroの方法では①型の発散しか言っておらず、弱い結果しか得られないように見えます。しかしながら、実際にはMertensの第一定理から第二定理を導いたときと全く同じ手法により、定理1にAbelの総和法を一回適用することによって次の定理を示すことができます:

定理3 a, bを互いに素な自然数とする。このとき、x \to \inftyにおける漸近公式
\displaystyle \sum_{p \leq x, \ p \equiv b\bmod{a}}\frac{1}{p} = \frac{1}{\varphi (a)}\log \log x+A_{a, b}+O\left( \frac{1}{\log x} \right)
が成り立つ。ここで、A_{a, b}a, bのみに依存する定数である。

これは、単に算術級数に関する素数の逆数の和の発散を示しているだけではなく、より精密な漸近公式を与えており、Shapiroの方法も強力であることが分かります。

初等的証明と言えるか?

(注)この節は別証明に意義を感じない人にとっては苦痛(無意味)な議論がなされているため、読み飛ばすことをお勧めします。

SelbergおよびShapiroの証明は初等的な証明ですが、「Dirichletの算術級数定理の初等的証明」と呼ぶには違和感があります。というのも「素数定理の初等的証明」のときとは状況が異なるからです(『初等的』とは)。

素数定理の場合は知られていた証明がRiemannゼータ関数を複素関数として扱い複素関数論を利用することによって証明するものであったため、ゼータ関数も複素関数論も用いないErdös-Selbergによる証明を「初等的」と呼んだわけですが、Dirichletによる算術級数定理の証明はL関数を用いるものの、本質的にはその変数sに関しては実数範囲の考察だけで十分でした。つまり、「初等的」という言葉は相対的に用いる概念だと思うのですが、素数定理の時に比べてLを使う証明と漸近公式手法による証明の間の差(比?)が小さいのです。

SelbergもShapiroも彼らの証明がいかに初等的であるかを競うような側面を見せており、例えば「有限和しか用いない」というものがあります。それは確かにDirichletの証明より初等的であるというアピールポイントにはなるかもしれません。以下で紹介するShapiroの方法では無限和を用いていますが、それは彼の論文の§2~§4の内容であって、§5ではその証明を有限和のみで記述し直すということをやっています。しかし、その議論によって到達するのは「証明が複雑になる」ことだけかもしれません。初等的をアピールしすぎることによって簡単さを著しく破壊することは好まれることではないと思います。ところが、簡明さを支持しだすと(これまた素数定理のときとは違って)、Dirichletによるオリジナル証明がこの上なく簡単・明瞭なのです(複素関数論も不要!)。

更に、最初の節で紹介したan+1型素数や幾つかの散発的な例における初等証明は文句なく初等的なのであって、それらと漸近公式手法を比較すれば明らかに後者は「高等な」証明です。有限和しか用いないとアピールしようとも、漸近公式を多数扱っている時点で「極限概念」は恐らく使っており、素数定理の場合には主張そのものが極限概念に支えられているため致し方なかったのですが、定性的な主張である算術級数定理の証明に絶対に極限概念を要するかどうかは疑問です。

というわけで、SelbergやShapiroによる証明は単に「別証明」と表現するのがよく、「初等的な算術級数定理の証明」とは言わない方がよいというのが私の考えです。一方で、「L関数を用いない証明」という表現は積極的に使用してよいと思います。

高木貞治『初等整数論講義』には「その証明が初等的でないのが遺憾であるが, 数学の現状ではやむを得ないのである.」という文がありますが、高木先生の怒りを鎮めることは未だに出来ていないのです。

さて、Shapiroの証明ではDirichletの証明と同じくDirichlet指標及びその直交関係式は基本事項として利用します。従って、
integers.hatenablog.com
の内容は既知として以下の文章を書き進めます。

「初等的アピール」として、実数値のDirichlet指標(それは二次指標に対応する)のみで算術級数定理を証明できるというものがあります。Selbergの証明がそれで、L関数による証明やShapiroの証明では複素数値Dirichlet指標も使っています。でも、そのぐらいはよいでしょう(簡単なので。複素関数論レベルの知識が必要になるわけではない)。

素数定理の「ゼータの言葉での翻訳」が「\zeta (1+it) \neq 0」であったのに対し*3、算術級数定理の「ゼータの言葉での翻訳」は次の定理になります:

定理3 \chiを非自明なDirichlet指標とする。このとき、
L(1, \chi ) \neq 0
が成り立つ。

この定理が肝心要であり、証明が大変な部分でもあります。また、多数の証明が知られています。例えば、高木貞治『初等整数論講義』や河田敬義『数論』では二次体に対する類数公式を別トピックとして証明しておき、それを証明に利用しています。それは大掛かりな証明に見えますが、Serre『数論講義』で採用されている証明は驚くべきほど簡単な証明です。Web上に見られる算術級数定理の解説記事でもその証明を掲載していることが多いみたいです。それは関数

\displaystyle \zeta_a(s) := \prod_{\chi \in \mathcal{DC}(a)}L(s, \chi)

s=1における挙動を見るもので、複素関数論的な証明と言えるでしょう*4

漸近公式手法による証明ではL(s, \chi)s \to 1を考えるということはしないですが、上記定理は必要になります。つまり、関数としてのLは用いないけれども、s=1における値(所謂L-value)

\displaystyle L(1, \chi) = \sum_{n=1}^{\infty}\frac{\chi (n)}{n}

は用いるのです(\chiは非自明指標)。「L関数は使わないって言ったじゃないか!この嘘つき!」と言われるかもしれませんが、別にL関数を知らなくても上の級数をA_{\chi}とでも書いてやれば証明ができるので嘘ではないです。とは言っても実際にはL関数の値なのでL(1, \chi)という記号は使うことにします。Shapiroの証明では

\displaystyle L'(1, \chi)=-\sum_{n=1}^{\infty}\frac{\chi (n)\log n}{n}

も用いますが、それが本当にL(s, \chi)の微分のs=1の値になっていることを確認する必要はありません。

ただ、一番重要である定理3の証明を複素関数論チックな証明に頼ってしまうと別証明である意義がかなり薄れてしまいます。が、ご安心ください。Shapiroは定理3についても漸近公式手法のみで証明してくれています。

Selbergは実数値指標に対する定理3のみで算術級数定理を証明しており(Lemma 1)、それには彼オリジナルのエレガントな証明を与えています(平方剰余の相互法則や二次体論的な手法による証明)。

この記事では算術級数定理の証明を紹介していますが、より定量的な定理である算術級数の素数定理についても素数定理のときと同様に初等的な証明が可能かどうかが気になると思いますが、それは主題からは外れるため、脚注にて若干補足しておきます*5。なお、算術級数定理のときとは異なり、これは「初等的」と呼んでよいものです(通常の証明は複素関数論を用いるため)。

複素関数論を用いれば算術級数の素数定理の証明も大分簡単に出来る時代になっているので、そちらについては別の記事で紹介する予定です。

非自明指標に対する級数と漸近公式

以下、漸近公式は全てx \to \inftyで考えます。

命題1 aを自然数、\chiaを法とする非自明なDirichlet指標とする。x_0は 正の実数。また、\varphi \colon \mathbb{R}_{> 0} \to \mathbb{R}_{\geq 0}x \geq x_0C^1級かつ\varphi'(x)が負であるような関数とする。このとき、y > x \geq x_0に対して
\displaystyle \sum_{x < n \leq y}\chi (n)\varphi (n)=O(\varphi(x))
が成り立つ。和のnは自然数を動く。

証明. \displaystyle S(x) := \sum_{n \leq x}\chi (n)とおく*6。このとき、\chiが非自明であることから

\displaystyle S(a)=\sum_{n=1}^a\chi (n) = 0

が成り立つ(これは指標の直交関係式*7より分かる。Dirichlet指標の定義より(n, a) > 1ならば\chi (n)=0であることにも注意)。よって、\chi\bmod{a}で周期的であることから任意の自然数nに対してS(na)=0が成り立ち、三角不等式から

\displaystyle |S(x)| \leq \varphi (a)

が任意のxで成立する。特に、S(x)=O(1)である。ここで、Abelの総和法を用いることにより*8

\begin{align}\sum_{x < n \leq y}\chi (n)\varphi (n) &= S(y)\varphi (y)-S(x)\varphi (x) -\int_x^yS(t)\varphi'(t)dt \\ &= O(\varphi(y) )+O(\varphi(x) )+O\left( \int_x^y(-\varphi'(x) )dt\right) \\ &=O(\varphi(x) )\end{align}

と計算できる。 Q.E.D.

系1 命題1と同じ設定で、更に\displaystyle \lim_{x \to \infty}\varphi (x)=0が成り立つと仮定する。このとき、\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}\chi (n)\varphi (n)は収束し、漸近公式
\displaystyle \sum_{n \leq x}\chi (n)\varphi (n) = \sum_{n=1}^{\infty}\chi (n)\varphi(n)+O(\varphi (x))
x \geq x_0で成り立つ。

証明. 追加された仮定を満たすとき、命題1より考えている級数がCauchy列をなすことが分かる。つまり、収束する。そうして、再び命題1より

\begin{align}\sum_{n=1}^{\infty}\chi (n)\varphi (n) &= \sum_{n \leq x}\chi (n)\varphi (n)+\lim_{y \to \infty}\sum_{x < n \leq y}\chi (n) \varphi (n) \\ &=\sum_{n \leq x}\chi (n)\varphi (n)+\lim_{y \to \infty} O(\varphi(x) ) \\ &=\sum_{n \leq x}\chi (n)\varphi (n)+O(\varphi (x) )\end{align}

と計算できる(最後のy \to \inftyとする部分はyに寄らないので消すことができる)。 Q.E.D.

系2(=級数の定義) \chiを非自明なDirichlet級数とする。このとき、級数
\begin{align}L(1, \chi ) &:= \sum_{n=1}^{\infty}\frac{\chi (n)}{n} \\ L'(1, \chi ) &:= -\sum_{n=1}^{\infty}\frac{\chi (n)\log n}{n} \\ L(1/2, \chi) &:= \sum_{n=1}^{\infty}\frac{\chi (n)}{\sqrt{n}}\end{align}
は収束し、x \geq 1に対して次の各漸近公式が成り立つ:
\begin{align}\sum_{n \leq x}\frac{\chi (n)}{n} &= L(1, \chi)+O(x^{-1}),\\ \sum_{n \leq x}\frac{\chi (n)\log n}{n} &= -L'(1, \chi) + O\left( \frac{\log x}{x} \right), \\ \sum_{n \leq x}\frac{\chi (n)}{\sqrt{n}}&=L(1/2, \chi)+O(x^{-\frac{1}{2}}).\end{align}

証明. それぞれ、\displaystyle \varphi(x) = \frac{1}{x}, \ \frac{\log x}{x}, \ \frac{1}{\sqrt{x}}とすればよい。 Q.E.D.

Shapiroによる算術級数定理の証明

以下、自然数aを固定し、aを法とするDirichlet指標を

\chi_1, \chi_2, \dots, \chi_n

と表すことにします(\chi_1は自明指標)。和に出てくるpは素数を表します。

補題1 baと互いに素な自然数とする。このとき、
\displaystyle \sum_{p \leq x, \ p \equiv b\bmod{a}}\frac{\log p}{p} = \frac{1}{\varphi(a)}\log x+\frac{1}{\varphi(a)}\sum_{i=2}^{\varphi(a)}\overline{\chi_i}(b)\sum_{p \leq x}\frac{\chi_i(p)\log p}{p} + O(1)
が成り立つ。

証明. Dirichlet指標に対する直交関係式より*9

\displaystyle \sum_{p \leq x} \left( \sum_{i=1}^{\varphi (a)}\overline{\chi_i}(b)\chi_i(p) \right) \frac{\log p}{p} = \varphi(a)\sum_{p \leq x, \ p \equiv b \bmod{a}}\frac{\log p}{p}

が成り立つ。一方、自明指標の定義から

\displaystyle \sum_{p \leq x} \left( \sum_{i=1}^{\varphi (a)}\overline{\chi_i}(b)\chi_i(p) \right) \frac{\log p}{p} = \sum_{p \leq x, \ (p, a)=1}\frac{\log p}{p} + \sum_{i=2}^{\varphi(a)}\overline{\chi_i}(b)\sum_{p \leq x}\frac{\chi_i(p)\log p}{p}

であり、一つ目の和については

\displaystyle \sum_{p \leq x, \ (p, a)=1}\frac{\log p}{p} =\sum_{p\leq x}\frac{\log p}{p} - \sum_{p \leq x, \ p \mid a}\frac{\log p}{p} = \log x + O(1)

が成り立つ。ここで、最後の変形において、p \mid aなる素数pが有限個しかないこととMertensの第一定理を用いた。これらを組み合わせることにより結論を得る。 Q.E.D.

補題2 \chiを非自明なDirichlet指標とする。このとき、
\displaystyle \sum_{p \leq x}\frac{\chi (p)\log p}{p} = -L'(1, \chi)\sum_{n \leq x}\frac{\mu (n)\chi (n)}{n} + O(1)
が成り立つ。

\mu (n)はMöbius関数です:
integers.hatenablog.com

この補題の証明はMertensの第一定理の証明と似ています。

証明. \Lambda (n)を、Mertensの第一定理で紹介したVon-Mangoldt関数とし、

\displaystyle \sum_{n \leq x}\frac{\chi (n)\Lambda (n)}{n}

を二通りで計算してそれらの計算結果を合わせることにより証明する。まず、Von-Mangoldt関数の定義から

\displaystyle  \sum_{n \leq x}\frac{\chi (n)\Lambda (n)}{n} = \sum_{p^i \leq x, \ i \geq 1}\frac{\chi (p^i)\log p}{p^i} = \sum_{p \leq x}\frac{\chi (p)\log p}{p} + \sum_{p^i \leq x, \ i \geq 2}\frac{\chi (p^i)\log p}{p^i}

と変形できるが、Mertensの第一定理の証明と同様にして、その記事の補題1を使えば、二つ目の和はO(1)であることが分かる。つまり、

\displaystyle \sum_{n \leq x}\frac{\chi (n)\Lambda (n)}{n} = \sum_{p \leq x}\frac{\chi (p)\log p}{p}+O(1)

を得る。一方、Mertensの第一定理の補題2にMöbiusの反転公式(その一)を適用することによって

\displaystyle \Lambda (n) = \sum_{d \mid n}\mu (d)\log \frac{n}{d}

と表示できるので、

\displaystyle \sum_{n \leq x}\frac{\chi (n)\Lambda (n)}{n} = \sum_{n \leq x}\frac{\chi (n)}{n} \sum_{d \mid n}\mu (d)\log \frac{n}{d} \stackrel{n=cd}{=}  \sum_{d \leq x}\frac{\mu (d)\chi (d)}{d}\sum_{c \leq \frac{x}{d}}\frac{\chi (c)\log c}{c}

と変形できる。系2より(x/d \geq 1に注意)

\displaystyle \sum_{c \leq x/d}\frac{\chi (c)\log c}{c} = -L'(1, \chi)+O\left( \frac{\log x/d}{x/d} \right)

なので、

\displaystyle \sum_{n \leq x}\frac{\chi (n)\Lambda (n)}{n} = -L'(1, \chi )\sum_{d \leq x}\frac{\mu (d)\chi (d)}{d} + O\left( \sum_{d \leq x}\frac{1}{d}\frac{\log x/d}{x/d} \right)

を得る。ここで、

\displaystyle \sum_{d \leq x}\frac{1}{d}\frac{\log x/d}{x/d} = \frac{1}{x} \sum_{d \leq x} (\log x-\log d) = \frac{1}{x}\left( [x]\log x-\sum_{d \leq x}\log d\right) = O(1)

と変形できることに注意する。ただし、[x]はGauss記号であり、アーベルの総和法の漸近公式1より

\displaystyle \sum_{d \leq x}\log d = x\log x-x+O(\log x)

であることを用いた。以上で証明が完了する。 Q.E.D.

補題3 \chiを非自明なDirichlet指標とする。このとき、
\displaystyle L(1, \chi)\sum_{n \leq x}\frac{\mu (n)\chi (n)}{n} = O(1)
が成り立つ。\mu (n)はMöbius関数。

integers.hatenablog.com

において、Möbiusの反転公式(その二)というものがありましたが、完全乗法的な数論的関数a(n) 付きのものを使います*10

Möbiusの反転公式(その二')
関数F, G\colon \mathbb{R}_{\geq 1} \to \mathbb{C}\displaystyle G(x) = \sum_{n \leq x}a(n)F\left( \frac{x}{n} \right)なる関係にあることと、\displaystyle F(x) = \sum_{n \leq x}\mu (n)a(n)G\left( \frac{x}{n} \right)なる関係にあることは同値である。
ただし、数論的関数a(n)は任意の自然数n, mに対してa(nm)=a(n)a(m)を満たし、a(1)=1なる数論的関数とする。

証明. 最初の式を仮定する。仮定している関係はG(x/n)に対しても成り立つので、

\displaystyle \sum_{n \leq x}\mu (n)a(n)G\left( \frac{x}{n} \right) = \sum_{n \leq x}\mu (n)a(n) \sum_{d \leq \frac{x}{n}}a(d)F\left( \frac{x}{nd} \right) = \sum_{m \leq x} \left( \sum_{n \mid m}\mu (n) \right) a(m)F\left( \frac{x}{m} \right)

が成り立つ。右辺の括弧内の和はMöbius関数の補題1よりm=1のときのみ生き残るので、右辺は結局F(x)に等しいことがわかる。逆も同様に示せる。 Q.E.D.

補題3の証明. a(n)=\chi (n)F(x)=xとして、Möbiusの反転公式(その二')を適用すると、

\displaystyle x = \sum_{n \leq x}\mu (n)\chi (n)G\left( \frac{x}{n} \right)

を得る。ここで、系2より

\displaystyle G(x) = \sum_{n \leq x}\chi (n)\frac{x}{n} = x \sum_{n \leq x}\frac{\chi (n)}{n} = xL(1, \chi)+O(1)

である。よって、

\displaystyle x = \sum_{n \leq x}\mu (n)\chi (n) \left( \frac{x}{n}L(1, \chi)+O(1) \right) = xL(1, \chi)\sum_{n \leq x}\frac{\mu (n)\chi (n)}{n} + O(x)

を得る。両辺xで割れば所望の漸近公式となる。 Q.E.D.

定理3を仮定した算術級数定理の証明. 定理3と補題3を組み合わせると、非自明なDirichlet指標\chiに対して

\displaystyle \sum_{n \leq x}\frac{\mu (n)\chi (n)}{n} = O(1)

が成り立つことが分かる。これと、補題2を組み合わせると

\displaystyle \sum_{p \leq x}\frac{\chi (p)\log p}{p} = O(1)

となる。よって、補題1の漸近公式から

\displaystyle \sum_{p \leq x, \ p \equiv b \bmod{a}}\frac{\log p}{p} = \frac{1}{\varphi (a)}\log x+O(1)

が導かれ、定理1の証明が完了する。それは当然、算術級数定理をも含んでいる。 Q.E.D.

L(1, χ) ≠ 0の漸近公式手法による証明

以下、定理3を漸近公式手法によって証明します。まずは、非自明なDirichlet指標\chiが実数値である場合(すなわち、二次指標に対応するDirichlet指標の場合)に証明しましょう。

命題2 s, tを正の実数とし、x:=stとする。また、f(n), g(n)を数論的関数とする。このとき、
\displaystyle \sum_{ij\leq x}f(i)g(j) = \sum_{n \leq s}f(n)G\left( \frac{x}{n} \right) +\sum_{m \leq t}g(m)F\left( \frac{x}{m} \right) -F(s)G(t)
が成り立つ。ここで、正の実数yに対して
\displaystyle F(y):= \sum_{n \leq y}f(n), \ G(y) := \sum_{n \leq y}g(n)
である。

証明. まずは、右辺の最初の二つの和を次のように変形する:

\displaystyle \sum_{n \leq s}f(n)G\left( \frac{x}{n} \right) = \sum_{i \leq s}\sum_{j \leq \frac{x}{i}}f(i)g(j),

\displaystyle \sum_{m \leq t}g(m)F\left( \frac{x}{m} \right) = \sum_{j \leq t}\sum_{i \leq \frac{x}{j}}f(i)g(j).

これらの和はij \leq xを満たすような格子点(i, j)(i, jは自然数)を渡るものであるが、二つの和において共通する格子点での和が

\displaystyle F(s)G(t) = \sum_{i \leq s, \ j \leq t}f(i)g(j)

なので、包含原理によって所望の等式を得る。 Q.E.D.

補題4 \chiを実数値のみを取るようなDirichlet指標とする。数論的関数A(n)
\displaystyle A(n) := \sum_{d \mid n}\chi(d)
と定義すると、任意の自然数nに対して
A(n)\geq 0
が成り立ち、nが平方数ならば
A(n) \geq 1
が成り立つ。

証明. pを素数、eを自然数とする。このとき、

\displaystyle A(p^e) = \sum_{i=0}^e\chi (p^i) = 1+\sum_{i=1}^e\chi (p)^i

が成り立つ。\chiは実数値なので、\chi (p) = 0, \pm 1である(1の冪乗根であって、実数であるようなものは\pm 1しかないことに注意)。よって、

\displaystyle A(p^e)=\begin{cases}1 & (\chi (p)=0) \\ e+1 & (\chi (p)=1) \\ 0 & (\chi (p)=-1, \ e \equiv 1 \pmod{2}) \\ 1 & (\chi (p)=-1, \ e \equiv 0 \pmod{2})\end{cases}

が成り立つ。つまり、nが素数冪のときは示された。また、A(n)は乗法的である。すなわち、n, mが互いに素な自然数のとき

\displaystyle A(nm) = \sum_{d \mid n}\sum_{d' \mid m}\chi (dd') = \sum_{d \mid n}\sum_{d' \mid m}\chi (d) \chi (d') = \left( \sum_{d \mid n}\chi (d) \right) \left( \sum_{d' \mid m}\chi(d') \right) = A(n)A(m)

が成り立つので、n=p_1^{e_1}\cdots p_k^{e_k}nが素因数分解されていれば

A(n)=A(p_1^{e_1})\cdots A(p_k^{e_k})

と分解される。従って、先ほどの素数冪の場合の計算から主張の成り立つことが分かる。 Q.E.D.

定理4 \chiを非自明な実数値Dirichlet指標とする。この\chiに対して、補題4のようにして定義される数論的関数A(n)を用いて、B(x)
\displaystyle B(x) := \sum_{n \leq x}\frac{A(n)}{\sqrt{n}}
と定義する。このとき、\displaystyle \lim_{x \to \infty}B(x) = \inftyであり、漸近公式
\displaystyle B(x) = 2\sqrt{x}L(1, \chi) + O(1)
が成り立つ。

定理4より非自明な実数値Dirichlet指標に対してはL(1, \chi ) \neq 0であることが従います。

証明. 補題4より

\displaystyle B(x) \geq \sum_{n \leq x, \ n=m^2}\frac{1}{\sqrt{n}} = \sum_{m \leq \sqrt{x}}\frac{1}{m}

と評価できるので、調和級数が発散することから\displaystyle \lim_{x \to \infty}B(x) = \inftyが従う。

また、

\displaystyle B(x) = \sum_{n \leq x}\frac{1}{\sqrt{n}}\sum_{d \mid n}\chi (d) = \sum_{ij \leq x}\frac{\chi (j)}{\sqrt{ij}}

と表示できるので、命題2においてs=t=\sqrt{x}\displaystyle f(n)=\frac{\chi (n)}{\sqrt{n}}\displaystyle g(n)=\frac{1}{\sqrt{n}}とすることにより

\displaystyle B(x) = \sum_{n \leq \sqrt{x}}\frac{\chi (n)}{\sqrt{n}}G\left( \frac{x}{n} \right) + \sum_{n \leq \sqrt{x}}\frac{1}{\sqrt{n}}F\left( \frac{x}{n} \right) - F(\sqrt{x})G(\sqrt{x})

が成り立つ。ここで、アーベルの総和法の漸近公式6および系2より

\begin{align}G(x) &= \sum_{n\leq x}\frac{1}{\sqrt{n}} = 2\sqrt{x}+b+O(x^{-\frac{1}{2}}), \\ F(x) &= \sum_{n \leq x}\frac{\chi (n)}{\sqrt{n}} = L(1/2, \chi)+O(x^{-\frac{1}{2}})\end{align}

である(bはある定数)から、

\begin{align} F(\sqrt{x})G(\sqrt{x})&=(2x^{\frac{1}{4}}+b+O(x^{-\frac{1}{4}}) )(L(1/2, \chi)+O(x^{-\frac{1}{4}}) ) \\
&= 2L(1/2, \chi)x^{\frac{1}{4}}+O(1)\end{align}

を得る。従って、

\begin{align}B(x) &= \sum_{n \leq \sqrt{x}}\frac{\chi (n)}{\sqrt{n}}\left( 2\sqrt{\frac{x}{n}}+b+O\left( \sqrt{\frac{n}{x}}\right) \right) + \sum_{n \leq \sqrt{x}}\frac{1}{\sqrt{n}}\left(L(1/2, \chi)+O\left( \sqrt{\frac{n}{x}} \right) \right)\\
&\ \ \ \ -2L(1/2, \chi)x^{\frac{1}{4}}+O(1) \\ &= 2\sqrt{x}\sum_{n \leq \sqrt{x}}\frac{\chi (n)}{n}+b\sum_{n \leq \sqrt{x}}\frac{\chi (n)}{\sqrt{n}} + O\left( \frac{1}{\sqrt{x}}\sum_{n \leq \sqrt{x}}|\chi (n) | \right) \\  & \ \ \ \ +L(1/2, \chi)\sum_{n \leq \sqrt{x}}\frac{1}{\sqrt{n}}+O\left( \frac{1}{\sqrt{x}}\sum_{n \leq \sqrt{x}}1 \right) -2L(1/2, \chi)x^{\frac{1}{4}}+O(1) \\  &= 2\sqrt{x}L(1, \chi)+O(1) \end{align}

と計算できる。ただし、最後の変形で系2および直前のG(x), F(x)に関する漸近公式を用いた。 Q.E.D.

後は非自明指標\chiが複素数値の場合に示せばよいです。

補題5 \chiが非自明なDirichlet指標で、L(1, \chi)=0を満たすと仮定する。このとき、漸近公式
\displaystyle L'(1, \chi)\sum_{n \leq x}\frac{\mu (n)\chi (n)}{n} = \log x+O(1)
が成り立つ。

証明. Möbiusの反転公式(その二')においてa(n)=\chi (n)F(x)=x\log xとすることにより、

\displaystyle x\log x=\sum_{n \leq x}\mu (n)\chi(n)G\left( \frac{x}{n} \right)

を得る。ここで、

\begin{align}G(x) &= \sum_{n \leq x}\chi (n)\frac{x}{n}\log \frac{x}{n} = x\log x \sum_{n \leq x}\frac{\chi(n)}{n}-x \sum_{n \leq x}\frac{\chi(n)\log n}{n} \\ &= x\log x(L(1, \chi)+O(x^{-1}) )+x\left(L'(1, \chi)+O\left( \frac{\log x}{x} \right) \right) \\ &= xL'(1, \chi)+O(\log x)\end{align}

である。ただし、系2およびL(1, \chi)=0を用いた。従って、

\begin{align}x\log x &= \sum_{n \leq x}\mu (n)\chi(n)\left( \frac{x}{n}L'(1, \chi(n) )+O\left(\log \frac{x}{n}\right)\right) \\ &= xL'(1, \chi)\sum_{n \leq x}\frac{\mu(n)\chi(n)}{n}+O\left( \sum_{n \leq x}(\log x-\log n) \right) \\ &= xL'(1, \chi)\sum_{n \leq x}\frac{\mu(n)\chi(n)}{n}+O(x)\end{align}

を得る。最後の変形については補題2の証明を参照せよ。xで割れば所望の漸近公式となる。 Q.E.D.

N(a)aを法とする非自明なDirichlet指標\chiであって、L(1, \chi)=0が成り立つようなものの個数としましょう。\chiaを法とする非自明なDirichlet指標とすると\overline{\chi}もそうですが、

L(1, \chi)=0 \Longrightarrow L(1, \overline{\chi})=0

が成り立ちます。よって、定理4によって実数値指標に対してはL(1, \chi)の非零性が既に示されているため、N(a)は偶数であることがわかります。あとはN(a)=0を示せばよいです。

補題6 自然数aに対して、次の漸近公式が成り立つ:
\displaystyle \sum_{p \leq x, \ p \equiv 1 \bmod{a}}\frac{\log p}{p} = \frac{1-N(a)}{\varphi (a)}\log x+O(1).

証明. 補題1においてb=1とすることにより

\displaystyle \sum_{p \leq x, \ p \equiv 1 \bmod{a}}\frac{\log p}{p}=\frac{1}{\varphi (a)}\log x+\frac{1}{\varphi (a)}\sum_{i=2}^{\varphi (a)}\sum_{p \leq x}\frac{\chi_i(p)\log p}{p} + O(1)

が成り立つ。補題2より

\displaystyle \sum_{p \leq x}\frac{\chi_i(p)\log p}{p}=-L'(1, \chi_i)\sum_{n \leq x}\frac{\mu(n)\chi_i(n)}{n}+O(1)

であるが、L(1, \chi_i)=0ならば補題3より

\displaystyle \sum_{p \leq x}\frac{\chi_i(p)\log p}{p}=O(1)

であり、L(1, \chi_i)\neq 0ならば補題5より

\displaystyle \sum_{p \leq x}\frac{\chi_i(p)\log p}{p}=-\log x +O(1)

なので、

\displaystyle  \sum_{p \leq x, \ p \equiv 1 \bmod{a}}\frac{\log p}{p}=\frac{1}{\varphi (a)}\log x+\frac{1}{\varphi (a)}(-N(a)\log x+O(1) ) = \frac{1-N(a)}{\varphi (a)}\log x+O(1)

を得る。 Q.E.D.

もし、N(a) \neq 0であったとすると、N(a)は偶数なので、1-N(a) < 0となります。すると、補題6の右辺はx \to \infty-\inftyへ発散することになりますが、それは明らかにあり得ません。従って、N(a)=0が示されました。

*1:証明はすっきりしていますが、Dirichlet級数の一般論の説明に紙数を要するケースが多いです。

*2:しかも成り立たない事実が書かれていることも多い。

*3:integers.hatenablog.com

*4:この関数はDedekindゼータ関数\zeta_{\mathbb{Q}(\zeta_a)}(s)と有限個のEuler因子の差を除いて一致します。つまり、直感通り"厳密な類数公式までが必要なわけではない"ということです。

*5:素数定理の初等的証明は2-stepsからなり、まずSelbergの漸近公式

\displaystyle \vartheta (x)\log x+\sum_{p \leq x}\vartheta\left(\frac{x}{p}\right)\log p=2x\log x+O(x)
を証明して、その後にSelbergの漸近公式から素数定理を導出するというものでした。Selbergの証明手法を真似ることによって、算術級数版Selbergの漸近公式
\displaystyle \vartheta(x;a,b)\log x+\sum_{p \leq x, \ p \nmid a}\vartheta\left(\frac{x}{p};a,\frac{b}{p}\right)\log p=\frac{2}{\varphi (a)}x\log x+O(x)
も漸近公式手法によって初等的に証明することができます(それはSelbergおよびShapiroの論文(I)で証明されています)。ここで、\displaystyle \vartheta(x;a,b):=\sum_{p\leq x, \ p \equiv b \bmod{a}}\log pです。が、彼らはそこから算術級数の素数定理を導出することについては別の論文に持ち越しています。Selbergは
A. Selberg, "An elementary proof of the prime number theorem for arithmetic progressions", Can. J. Math 2 (1950), 66-78.
において彼のオリジナルの素数定理の初等的証明と同じ手法で算術級数版Selbergの漸近公式から算術級数の素数定理を証明しています(ただし、実数値Dirichlet指標に対する定理3は用いる)。一方、Shapiroは論文(Ⅱ)の§1、§6において、論文(Ⅱ)の主結果(定理1)と算術級数版Selbergの漸近公式を組み合わせると「an+1型素数の場合の素数定理」に帰着でき、それは更に「素イデアル定理」に帰着されることが書かれています(定理1は定理3を用いることに注意)。そうして、素イデアル版Selbergの漸近公式
\displaystyle \vartheta_K(x)\log x+\sum_{N\mathfrak{p} \leq x}\vartheta_K\left(\frac{x}{N\mathfrak{p}}\right)\log (N\mathfrak{p})=2x\log x+O(1)
を論文
H. N. Shapiro, "An elementary proof of the prime ideal theorem", Comm. Pure Appl. Math, 2 (1949), 309-323.
で証明し(Kは代数体、\mathfrak{p}は素イデアル、Nはノルム)、Erdösの一般論
P. Erdös, "On a Tauberian theorem connected with the new proof of the prime number theorem", J. Ind. Math. Soc., 13 (1949), 133-147.
を用いることによって素イデアル定理の初等的証明を導き、算術級数定理の素数定理の初等証明を与えています(しかしながら、素イデアル定理は主張がそもそも"初等的"の範疇を超えている気がします)。着目すべきは定理3を使うことです。これは素数定理の初等的証明のときとは決定的に異なる点です。素数定理の初等的証明では、Selbergの漸近公式から素数定理が導出されました。ということは、素数定理のゼータによる翻訳である「\zeta (1+it) \neq 0」は別途必要ではなく、それはSelbergの漸近公式と同値な内容だったのです(これが初等的証明の存在意義の一つと捉えることもできます)。すると、算術級数の素数定理についても算術級数版Selbergの漸近公式のみから導出され、それは本質的に定理3を含んでいるという状況も期待されたのではないでしょうか?しかしながら、SelbergおよびShapiroはどちらもそれを示すことは出来ていません。これは後にGranvilleによって公理論的に研究されており、
A. Granville, "On elementary proofs of the prime number theorem for arithmetic progressions, without characters", In Proceedings of the Amalfi Conference on Analytic Number Theory, Sep. 25-29, 1989, 157-195, Salerno, Italy, 1992, Universitá di Salerno.
Selberg型公式から何を導くことが出来るかが解明されています。そうして、SelbergとShapiroがやった通り、確かに定理3は別に用意しておく必要があったのです(実数値指標のみで十分ではあるが)。つまり、標語的に言えば
Selbergの漸近公式 \Longleftrightarrow 素数定理
であり、
算術級数版Selbergの漸近公式 + L(1, \chi) \neq 0 \Longleftrightarrow 算術級数の素数定理
となります。

*6:nは自然数のみを動き、x1未満なら和は0とする。

*7:ディリクレ指標 - インテジャーズの命題3の一つ目の式。

*8:\chi (n)が複素数値の場合も考えており、Abelの総和法の記事では実数列\{a_n\}に対してstateしていたが、複素数列であっても全く同様に成立する。

*9:ディリクレ指標 - インテジャーズの命題4。

*10: (その三)ではa(n)が付いていましたが、(その二)については今まで使わなかったため、付けていませんでした。