インテジャーズ

INTEGERS

数、特に整数に関する記事。

2016-01-01から1年間の記事一覧

数列の漸近挙動に関するポアンカレの定理

数列の漸近挙動に関するポアンカレの定理

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Googleアナリティクスを全く活用していないことに気づいたので、さっき少しチェックしてみたら自分の記事を引用しているYahoo知恵袋の質問がありました。detail.chiebukuro.yahoo.co.jpこの質問の式は見たことがなかったのですが、とりあえず面白いので紹介…

アペリー数

アペリー数の定義、数値例、Gesselの定理とその証明

一年生の夢とLucasの合同式

一年生の夢(Freshman's dream)とはのことを言います。中学生が展開を習ったときにが正しいところをと間違えてしまうことはよく見かける光景だと思います。ちなみに二年生の夢(sophomore’s dream)もあるのですが、こちらは正しい式です:mathtrain.jp 一年生…

代数学の基本定理の位相空間論的証明

代数学の基本定理 (Gauss) 定数でない複素係数多項式は少なくとも一つの複素数根をもつ。この記事ではSenによる証明を紹介します。補題 が位相空間の間のproperな連続写像であり、がHausdorff局所コンパクト空間であるならば、は閉写像である。ここで、がpro…

ζ(3)の二項係数を用いた級数表示

Markov-Apéryの定理の証明

クロネッカーの稠密定理とワイルの一様分布定理

この記事では有名なKroneckerの稠密定理とWeylの一様分布定理を解説します。高木貞治『解析概論』において (証明はむつかしいが, が無理数ならば, 単位円周上の定点を起点として同じ向きに長さがなる弧を取れば, 点は円周上に稠密に分布される). という記述…

ストーン・ワイエルシュトラスの定理

Weierstrassの多項式近似定理ワイエルシュトラスの多項式近似定理 - INTEGERSは1937年にStoneによって拡張されました(通称Stone-Weierstrassの定理)。それを述べるために言葉の導入から始めましょう。をコンパクト位相空間とします。このとき、連続関数空間…

ディリクレの近似定理

有理数と無理数を分かつもの。それは「近似の精度」である。Dirichletの近似定理 を実数とする。このとき、任意の自然数に対して整数が存在して、およびが成り立つ。証明. をと分ける。を考える。このとき、鳩ノ巣原理からが存在して、とは同じ小区間に属す…

ワイエルシュトラスの多項式近似定理

この記事では、Weierstrassの多項式近似定理の証明を解説します:定理 (Weierstrass, 1885) を区間上で定義された実数値連続関数とする()。このとき、任意のに対して多項式が存在して、が成り立つ。証明は何通りもありますが、Bernsteinによるものを解説しま…

211^2=44444+77:二つのレプディジット数の和として表される平方数

本日arXivに投稿されたプレプリントB. Goddard, J. Rouse[1607.06681] Sum of two repdigits a squareによれば、二つの二桁以上のレプディジット(十進法表記で同じ数を並べてできる数)の和として表される平方数はに限ることを証明したと主張しています。証明…

Carlemanの不等式

この記事ではCarlemanの不等式の証明を解説します:定理 (Carleman, 1922) を正の実数列であって、が収束するようなものとする。このとき、不等式が成り立つ。証明は色々知られていますが、かなり初等的なものを紹介します。 準備 補題 自然数に対して、等式…

(Z/nZ)*の群構造

この記事ではの群構造についてまとめています。 1.1 と素因数分解されているとき、中国剰余定理によってが成り立つので、を得る。すなわち、問題はのときに帰着される(は自然数)。 1.2 のとき、が成り立つ。証明. 奇数が存在して、と書けることを示せばよい…

22/7:円周率近似値の日

7/22はが円周率の近似値であることから円周率近似値の日などと呼ばれていますが、違和感はありますね(22月7日の方がふさわしい)。昔、この日に日食があったときに試験を5分で終わらせて日食を見たのを覚えています。tsujimotterさんが二年前に記事を書かれて…

多項式に関する簡単な問題

以前出題した問題の答を書いておきます: integers.hatenablog.com定理 を有理数体を含む体とする。が条件任意のに対し、が成り立つ。を満たすとき、が成り立つ。 証明1 とする。とを定義すると、と書けるとき、である。一変数の場合は定理が成り立つことは…

約数個数関数の上からの評価

自然数の約数の個数をで表します。は次の公式で求めることができます:公式 とが素因数分解されているとき、が成り立つ。cf.) mathtrain.jp以前の記事でを用いた例としてサブライム数 - INTEGERSがあります。の上からの評価として、自明な評価がありますが、…

レピュニット

のようにを繰り返し並べて出来る整数のことをレピュニット(Repunit)といいます(Repeated unitの略)*1。特に、は素数です。このような素数をレピュニット素数と呼びましょう。以外にレピュニット素数はあるでしょうか? 下から順に素因数分解してみましょう。…

Grahamの第一論文を読む -①

Grahamのエジプト分数に関する有名な結果の証明を完全に理解しようというプロジェクトを勝手に実施中です。このプロジェクトは integers.hatenablog.comからスタートしました。Grahamの定理の証明は非常に初等的な手法で実行されるのですが、Brownの判定法in…

十分大きい任意の整数は相異なるn乗数の和で表すことができる。

この記事では次の定理の証明を解説します*1:定理 (Sprague, 1947) を自然数とする。このとき、ある整数が存在して、より大きい整数は全て相異なる乗数の和として表すことができる。ただし、この記事全体において乗数と言えば「自然数の乗数」を意味するもの…

平面2進数(=物智(butchi)数)

butchi氏が卒業論文で研究したという平面2進数(=物智(butchi)数)というものを何度かbutchi氏から聞いたことがありました。butchi氏自身による解説等がHPにあります:平面的2進数(Butchi数)だふやふさんという方がこのbuichi数に関する記事*1を書いているの…

128より大きい任意の整数は相異なる平方数の和として表すことができる。

と言えばですが、「相異なる平方数の和として表すことができない最大の整数」という特徴を持っています。すなわち、相異なる平方数の和として表すことができない自然数は有限個しか存在せず、それは次の個の整数です:Lagrangeの四平方の定理は「全ての自然…

6より大きい任意の整数は相異なる素数の和として表すことができる

は相異なる素数の和としては表すことができません。一方、次の定理が成り立ちます:定理 (Richert, 1949) より大きい任意の整数は相異なる素数の有限個の和として表すことができる。証明. 素数は無数に存在するので、次の主張を示せば十分。で小さい方から数…

東大の碁石の問題

タイトルの問題は東大文系2001 白石180個と黒石181個の合わせて361個の碁石が横に一列に並んでいる。碁石がどのように並んでいても、次の条件を満たす黒の碁石が少なくとも1つあることを示せ。 (*)その黒の碁石とそれより右にある碁石をすべて除くと、残り…

butchi氏の準加算について

日曜数学者のbutchi氏が準加算なるものを考察していらっしゃるため、ここにまとめを作っておきます。議論の場となれば幸いです。注意 当ブログでは基本的に自然数といえば正の整数を意味していますが、この記事においては以上の整数を自然数とよぶことにし、…

数列の完全性に関するBrownの判定法

今、我々はGrahamの定理の証明を理解することを目標としています: integers.hatenablog.comこの記事では証明のための準備として、数列の完全性に関するBrownの判定法を紹介します。定義 正の実数からなる数列に対し、集合をで定める(の相異なる項の有限和と…

エジプト分数とグラハムの定理

正の有理数であって、分子がであるものをエジプト分数、または単位分数といいます。リンド・パピルスの記録によれば、古代エジプト人はエジプト分数を好み、与えられた正の有理数をのようにエジプト分数の和に分解していたようです(エジプト分数分解)。ただ…

Leyland素数

京都大学の入試問題としても出題された、「素数を用いてと表すことのできる素数はのみである」ということに関連する記事を以前書きました:integers.hatenablog.com上記記事では巡回和素数という方向性の一般化を提案しましたが、この記事ではを素数とは限ら…

1/2+1/3+1/6=1 多重調和和の非整数性

実は、今月初めにパソコンが壊れてしまったため、ブログを二週間近く更新出来ませんでした。大変、申し訳ございません。新しいパソコンが届いたので更新を再開しようと思います。以前、調和数がの場合を除いて整数にはならないことを証明しました:16843:ウ…

1 - Σ1/p^2 > 0.54 素数と量子計算

せきゅーんです。「素数と量子計算」という大それたタイトルですが、これらが関係あるのかは私は知りません。というか、量子計算の勉強は私はしたことがありません。今回の記事の目的は、次の不等式を証明することです:次の不等式を示せ:この問題は物理学…

与えられた数の倍数となるような類数をもつ虚二次体の無限性について

前回の記事で虚二次体の類数に関する表を眺めました。integers.hatenablog.com表を見ていると自然に疑問に思うことですが、実は次が証明されています:定理1 与えられた数を類数にもつような虚二次体の個数は有限個である。一方、次は未解決問題だと思いま…