インテジャーズ

INTEGERS

数、特に整数に関する記事。

少なくとも一つは必ず無理数なんだ。

Apéryは伝説を残した。

integers.hatenablog.com

その後、2000年を過ぎたあたりにRivoalという天才が彗星の如く現れ、

\zeta(5), \zeta(7), \zeta(9), \dots の中には無理数が無数に存在する

ということを証明した(Ballと共著でInvent. Mathに掲載されている)。Rivoalは

\zeta(5), \zeta(7), \zeta(9), \dots, \zeta(21) の中に少なくとも一つ無理数が存在する

ということも証明し、それを受けてZudilinは

\zeta(5), \zeta(7), \zeta(9), \zeta(11) の中に少なくとも一つ無理数が存在する

ということを証明した。

初めてこれらの結果を見た者は「そんなこと一体どうやって示すんだ!?」と思うことだろう。ただ、それらの証明は非専門化には少々アクセスしにくいレベルの高さにある。

そんな状況の中、Zudilinが1月30日に次のようなプレプリントを発表した。

W. Zudilin, "One of the odd zeta values from \zeta(5) to \zeta(25) is irrational. By elementary means", preprint.

\zeta(11) \to \zeta(25)と精度は落ちるが、それでも「少なくとも一つは無理数」系の結果を非常に初等的に証明できることを発見したというのだ。

果たして、あなたはこの論文を読まずにいられるだろうか。

定理 (Zudilin) \zeta(5), \zeta(7), \zeta(9), \dots, \zeta(25) の中に少なくとも一つ無理数が存在する。

この記事ではZudilinのプレプリントに則って、この定理の証明を解説する。現状理解できていない部分があります(能力不足を反省)。

構成

s7以上の奇数とする。正整数nに対して

\displaystyle R_n(t) := \frac{\displaystyle (n!)^{s-5}\prod_{j=1}^n(t-j)\prod_{j=1}^n(t+n+j)\cdot 2^{6n}\prod_{j=1}^{3n}(t-n-\frac{1}{2}+j)}{\displaystyle \prod_{j=0}^n(t+j)^s}

として、r_n, \hat{{ }r}_n

\displaystyle r_n := \sum_{\nu=1}^{\infty}R_n(\nu), \quad \hat{{ }r}_n := \sum_{\nu=1}^{\infty}R_n\left(\nu-\frac{1}{2}\right)

と定める。

超幾何型の級数を用いる方法である。これは奇数ゼータのみの線形結合を作りやすい利点がある一方、解析パートがハードになりがちであった。しかしながら、今回の証明では 鞍点法も複素積分も用いない!(が、この部分に私がわかっていない箇所がある)。また、従来の手法では微分で\zeta(3)を消す感じであったが、(半整数シフトして)数列を二つ構成することによって、組み合わせて\zeta(3)を消している!!

部分分数分解と整数性

補題1 P(t)を複素係数多項式とし、t_1, \dots, t_qは相異なる複素数、s_1, \dots, s_qは正整数とする。このとき、
\displaystyle S(t) = \frac{P(t)}{(t-t_1)^{s_1}(t-t_2)^{s_2}\cdots (t-t_q)^{s_q}}
\displaystyle S(t) = \sum_{j=1}^q\sum_{i=1}^{s_j}\frac{b_{i, j}}{(t-t_j)^i}
と部分分数分解できる。ここで、
\displaystyle b_{i, j} = \frac{1}{(s_j-i)!}\frac{d^{s_j-i}}{dt^{s_j-i}}\left(S(t)(t-t_j)^{s_j}\right) \Bigg|_{t=t_j}
で与えられる。

証明. 分解できることは部分分数分解 - INTEGERSの定理よりわかる。b_{i, j}の公式はTaylor展開係数の標準的な表示にすぎない。 Q.E.D.

d_n:=\mathrm{lcm}[1, 2, \dots, n]とする。

補題2 k_1, \dots, k_q\{0, 1, \dots, n\}に属する相異なる数とし、s_1, \dots, s_qを正整数とする。このとき、分解
\displaystyle \frac{1}{\displaystyle \prod_{j=1}^q(t+k_j)^{s_j}} = \sum_{j=1}^q\sum_{i=1}^{s_j}\frac{b_{i, j}}{(t+k_j)^i}
について
\displaystyle d_n^{s-i}b_{i, j} \in \mathbb{Z} \quad (j=1, \dots, q, i=1, \dots, s_j)
が成り立つ。ここで、s:=s_1+\cdots +s_qである。

証明. 分解の左辺をS(t)とする。q=1のときは主張は自明に成立するため、q \geq 2とする。jについて情報は対等であるため、j=1のときに示せば十分である(これは記号の煩雑さを避けるためだけの仮定)。m \geq 0に対してライプニッツの公式の証明と二項定理 | 高校数学の美しい物語の「2つめの拡張」より

\begin{align} \frac{1}{m!}\frac{d^m}{dt^m}\left(S(t)(t+k_1)^{s_1}\right) &= \frac{1}{m!}\frac{d^m}{dt^m}\left(\prod_{j=2}^q(t+k_j)^{-s_j}\right) \\ &= \sum_{\substack{l_2+\cdots +l_q=m \\ l_2, \dots, l_q \geq 0}}\prod_{j=2}^q(-1)^{l_j}\binom{s_j+l_j-1}{l_j}(t+k_j)^{-(s_j+l_j)}\end{align}

と計算できる。よって、補題1の表示より、i=1, \dots, s_1に対して

\displaystyle b_{i, 1} = \sum_{\substack{l_2+\cdots +l_q=s_1-i \\ l_2, \dots, l_q \geq 0}}\prod_{j=2}^q(-1)^{l_j}\binom{s_j+l_j-1}{l_j}\frac{1}{(k_j-k_1)^{s_j+l_j}}

が得られた。j=2, \dots, qに対して \frac{d_n}{k_j-k_1} \in \mathbb{Z}であり、\sum_{j=2}^q(s_j+l_j) = s-iなので主張の成立がわかる。 Q.E.D.

命題1 補題1によってR_n(t)
\displaystyle R_n(t) = \sum_{i=1}^s\sum_{k=0}^n\frac{a_{i, k}}{(t+k)^i}
と分解されるが*1
\displaystyle d_n^{s-i}a_{i, k} \in \mathbb{Z}, \quad (i=1, \dots, s, k=0, \dots, n)
が成り立つ。

証明. 次の6つの有理関数の部分分数分解を考える:

\begin{align} F_1(t) &:= \frac{n!}{\prod_{j=0}^n(t+j)} = \sum_{k=0}^n\frac{(-1)^k\binom{n}{k}}{t+k} \\
F_2(t)&:=\frac{\prod_{j=1}^n(t-j)}{\prod_{j=0}^n(t+j)}=\sum_{k=0}^n\frac{(-1)^{n+k}\binom{n+k}{n}\binom{n}{k}}{t+k} \\
F_3(t) &:=\frac{\prod_{j=1}^n(t+n+j)}{\prod_{j=0}^n(t+j)} = \sum_{k=0}^n\frac{(-1)^k\binom{2n-k}{n}\binom{n}{k}}{t+k} \\
F_4(t) &:=\frac{2^{2n}\prod_{j=1}^n(t+\frac{1}{2}-j)}{\prod_{j=0}^n(t+j)} = \sum_{k=0}^n\frac{(-1)^{n+k}\binom{2n+2k}{2n}\binom{2n}{n+k}}{t+k} \\
F_5(t) &:=\frac{2^{2n}\prod_{j=1}^n(t-\frac{1}{2}+j)}{\prod_{j=0}^n(t+j)} = \sum_{k=0}^n\frac{\binom{2k}{k}\binom{2n-2k}{n-k}}{t+k} \\
F_6(t) &:=\frac{2^{2n}\prod_{j=1}^n(t+n-\frac{1}{2}+j)}{\prod_{j=0}^n(t+j)}=\sum_{k=0}^n\frac{(-1)^k\binom{4n-2k}{2n}\binom{2n}{k}}{t+k}
\end{align}

これらは全て補題1よりF_i(t)(t+k)\Big|_{t=-k}を計算すれば導出できる*2。全ての係数が整数であることに注意する。このとき、

\displaystyle R_n(t) = F_1(t)^{s-5}F_2(t)F_3(t)F_4(t)F_5(t)F_6(t)

が成り立つので*3、上記部分分数分解を代入して展開し、補題2を適用すればよい(部分分数分解の一意性)。 Q.E.D.

奇数ゼータの一次結合

次の補題は偶数ゼータが現れないないことを保証する。

補題3 命題1の部分分数分解に対して、
a_{i, k} = (-1)^{i-1}a_{i, n-k}, \quad (i=1, \dots, s, k=0, \dots, n)
が成り立つ。これより、iが偶数であれば
\displaystyle \sum_{k=0}^na_{i, k}=0
が成り立つ。

証明. R_n(-t-n) = -R_n(t)が成り立つ。理由:

\displaystyle \prod_{j=1}^t(-t-n-j) = (-1)^n\prod_{j=1}^n(t+n+j)

\displaystyle \prod_{j=1}^t( (-t-n)+n+j) = (-1)^n\prod_{j=1}^n(t-j)

\displaystyle \prod_{j=1}^{3n}( (-t-n)-n-\frac{1}{2}+j) =  (-1)^{3n}\prod_{j=1}^{3n}(t+2n+\frac{1}{2}-j) \stackrel{j\mapsto 3n-j+1}{=} (-1)^{3n}\prod_{j=1}^{3n}(t-n-\frac{1}{2}+j)

\displaystyle \prod_{j=0}^n(-t-n+j)^s = (-1)^{s(n+1)}\prod_{j=0}^n(t+n-j) = (-1)^{s(n+1)}\prod_{j=0}^n(t+j)

であるので、sが奇数であることより従う

そうして、

\displaystyle R_n(-t-n) = \sum_{i=1}^s\sum_{k=0}^n\frac{a_{i, k}}{(-t-n+k)^i} = \sum_{i=1}^s\sum_{k=0}^n\frac{(-1)^ia_{i, k}}{(t+n-k)^i}= \sum_{i=1}^s\sum_{k=0}^n\frac{(-1)^ia_{i, n-k}}{(t+k)^i}

と計算できるので、部分分数分解の一意性よりa_{i, k}=(-1)^{i-1}a_{i, n-k}が従う。よって、

\displaystyle \sum_{k=0}^na_{i, k} = (-1)^{i-1}\sum_{k=0}^na_{i, n-k} = (-1)^{i-1}\sum_{k=0}^na_{i, k}

となって、後半の成立がわかる。 Q.E.D.

命題2 d_n^{s-i}a_i \in \mathbb{Z}, \ (i=3, 5, \dots, s) および d_n^sa_0, d_n^s\hat{{ }a}_0 \in \mathbb{Z}が成り立つような有理数 a_3, \dots, a_s, a_0, \hat{{ }a}_0が存在して、
\displaystyle r_n = \sum_{\substack{i=3 \\ i: \text{奇数}}}a_i\zeta(i) + a_0, \quad \hat{{ }r}_n = \sum_{\substack{i=3 \\ i: \text{奇数}}}a_i(2^i-1)\zeta(i) + \hat{{ }a}_0
が成り立つ。

証明. 0 < z < 1に対して、r_n(z):=\sum_{\nu=1}^{\infty}R_n(\nu)z^{\nu}とし、i \geq 1に対してポリログを\mathrm{Li}_i(z) := \sum_{l=1}^{\infty}\frac{z^l}{l^i}と定義する。このとき、R_n(\nu)の部分分数分解表示を代入することにより

\begin{align} r_n(z) &= \sum_{\nu=1}^{\infty}R_n(z)z^{\nu} \\ &= \sum_{\nu=1}^{\infty}\sum_{i=1}^s\sum_{k=0}^n\frac{a_{i, k}z^{\nu}}{(z+k)^i} \\ &= \sum_{i=1}^s\sum_{k=0}^na_{i, k}z^{-k}\sum_{\nu=1}^{\infty}\frac{z^{\nu+k}}{(\nu+k)^i} \\ &= \sum_{i=1}^s\sum_{k=0}^na_{i, k}z^{-k}\left(\mathrm{Li}_i(z)-\sum_{l=1}^k\frac{z^l}{l^i}\right) \\ &= \sum_{i=1}^s\mathrm{Li}_i(z)\Biggl(\sum_{k=0}^na_{i, k}z^{-k}\Biggr)-\sum_{i=1}^s\sum_{k=0}^n\sum_{l=1}^k\frac{a_{i, k}z^{-(k-l)}}{l^i}\end{align}

と計算できる。ここで、s \geq 7であることからR_n(t)の無限遠点における留数が0であることに注意すると、留数定理によって

\displaystyle \sum_{k=0}^na_{1, k} = \sum_{k=0}^n\mathrm{Res}_{t=-k}R_n(t) = -\mathrm{Res}_{t=\infty}R_n(t) = 0

が得られる。よって、因数定理によりzに関する多項式 f(z)が存在して

\displaystyle \sum_{k=0}^na_{1, k}z^{-k} = z^{-n}(z-1)f(z)

と書ける。一方、\mathrm{Li}_1(z) = -\log(1-z)なので、

\displaystyle \lim_{z \to 1^-}\mathrm{Li}_1(z)\Biggl(\sum_{k=0}^na_{1, k}z^{-k}\Biggr) = 0

である。よって、上記計算においてz \to 1^-とすることによって

\displaystyle r_n = \sum_{i=2}^s\Biggl(\sum_{k=0}^na_{i, k}\Biggr)\zeta(i) - \sum_{i=1}^s\sum_{k=0}^na_{i, k}\sum_{l=1}^k\frac{1}{l^i}

が得られた。

\displaystyle a_i := \sum_{k=0}^na_{i, k} \ (i=2, \dots, s),\quad a_0:=\sum_{i=1}^s\sum_{k=0}^na_{i, k}\sum_{l=1}^k\frac{1}{l^i}

とすれば、補題3よりi2以上の偶数のときはa_i=0となり、0 \leq k \leq n, i \geq 1に対して

\displaystyle d_n^i\sum_{l=1}^k\frac{1}{l^i} \in \mathbb{Z}

であることから、d_n^{s-i}a_i \in \mathbb{Z}, \ (i=3, 5, \dots, s) および d_n^sa_0 \in \mathbb{Z}が成り立つ。

次に、\hat{{ }r}_n(z) := \sum_{\nu=-m}^{\infty}R_n(\nu-\frac{1}{2})z^{\nu}, \widehat{\mathrm{Li}}_i(z):=\sum_{l=1}^{\infty}\frac{z^l}{(l-\frac{1}{2})^i}と定義する。ここで、m=\lfloor \frac{n-1}{2} \rfloorであり、t=-1/2, -3/2, \dots, -m-1/2R_n(t)=0なので、\hat{{ }r}_n(1)=\hat{{ }r}_nであることに注意する。このとき、

\begin{align} \hat{{ }r}_n(z) &= \sum_{\nu=-m}^{\infty}R_n(\nu-\frac{1}{2})z^{\nu} \\
&= \sum_{\nu=-m}^{\infty}\sum_{i=1}^s\sum_{k=0}^n\frac{a_{i, k}z^{\nu}}{(\nu+k-\frac{1}{2})^i} \\
&= \sum_{i=1}^s\sum_{k=0}^na_{i, k}z^{-k}\sum_{\nu = -m}^{\infty}\frac{z^{\nu+k}}{(\nu+k-\frac{1}{2})^i} \\
&= \sum_{i=1}^s\sum_{k=0}^ma_{i, k}z^{-k}\sum_{\nu=-m}^{\infty}\frac{z^{\nu+k}}{(\nu+k-\frac{1}{2})^i}+\sum_{i=1}^s\sum_{k=m+1}^na_{i, k}z^{-k}\sum_{\nu=-m}^{\infty}\frac{z^{\nu+k}}{(\nu+k-\frac{1}{2})^i} \\
&= \sum_{i=1}^s\sum_{k=0}^ma_{i, k}z^{-k}\left(\sum_{l=k-m}^0\frac{z^l}{(l-\frac{1}{2})^i}+\widehat{\mathrm{Li}}_i(z)\right) + \sum_{i=1}^s\sum_{k=m+1}^na_{i, k}z^{-k}\left(\widehat{\mathrm{Li}}_i(z)-\sum_{l=1}^{k-m-1}\frac{z^l}{(l-\frac{1}{2})^i}\right) \\
&= \sum_{i=1}^s\widehat{\mathrm{Li}}_i(z)\Biggl(\sum_{k=0}^na_{i, k}z^{-k}\Biggr)+\sum_{i=1}^s\sum_{k=0}^ma_{i, k}z^{-k}\sum_{l=k-m}^0\frac{z^l}{(l-\frac{1}{2})^i} + \sum_{i=1}^s\sum_{k=m+1}^na_{i, k}z^{-k}\sum_{l=1}^{k-m-1}\frac{z^l}{(l-\frac{1}{2})^i}\end{align}

と計算される。よって、

\displaystyle \widehat{{ }a}_0 := \sum_{i=1}^s\sum_{k=0}^ma_{i, k}\sum_{l=k-m}^0\frac{1}{(l-\frac{1}{2})^i} + \sum_{i=1}^s\sum_{k=m+1}^na_{i, k}\sum_{l=1}^{k-m-1}\frac{1}{(l-\frac{1}{2})^i}

とおくと、\widehat{\mathrm{Li}}_1(z) < 2\mathrm{Li}_1(z)なので、z \to 1^-とすることによって先ほどと同様にi=1の項は消えて

\displaystyle \hat{{ }r}_n = \sum_{\substack{i=3 \\ i: \text{奇数}}}a_i(2^i-1)\zeta(i) + \hat{{ }a}_0

が得られる(i \geq 2に対して\widehat{\mathrm{Li}}_i(1) = (2^i-1)\zeta(i))。0 \leq k \leq m, \ i \geq 1に対して

\displaystyle d_n^i\sum_{l=0}^{m-k}\frac{(-1)^i}{(l+\frac{1}{2})^i} \in \mathbb{Z}

であり、m+1 \leq k \leq n, \ i \geq 1に対して

\displaystyle d_{n-1}^i\sum_{l=1}^{k-m-1}\frac{1}{(l-\frac{1}{2})^i} \in \mathbb{Z}

であることから*4、補題3より d_n^s\hat{{ }a}_0 \in \mathbb{Z}がわかる。 Q.E.D.

解析

補題4 次の漸近公式が成り立つ:
\displaystyle n! \sim \sqrt{2\pi n}\left(\frac{n}{e}\right)^n, \quad \binom{2n}{n} \sim \frac{2^{2n}}{\sqrt{\pi n}}, \quad (n \to \infty).

証明. スターリングの公式 - INTEGERSから従う。 Q.E.D.

\displaystyle \prod_{j=0}^{6n}(t-n+\frac{1}{2}j) = \prod_{j=1}^{3n}(t-n-\frac{1}{2}+j) \times \prod_{j=0}^{3n}(t-n+j)

であり

\displaystyle \prod_{j=0}^{3n}(t-n+j) = \prod_{j=1}^n(t-j)\prod_{j=0}^n(t+j)\prod_{j=1}^n(t+n+j)

であるので、

\displaystyle R_n(t) = \frac{\displaystyle 2^{6n}(n!)^{s-5}\prod_{j=0}^{6n}(t-n+\frac{1}{2}j)}{\displaystyle \prod_{j=0}^n(t+j)^{s+1}}

と書ける。また、t=1, 2, \dots, n, \ 1/2, 1/3, \dots, n-1/2R_n(t)=0なので、

\displaystyle r_n=\sum_{\nu=n+1}^{\infty}R_n(\nu) = \sum_{k=0}^{\infty}c_{n, k}, \quad \hat{{ }r}_n = \sum_{\nu=n+1}^{\infty}R_n\left(\nu-\frac{1}{2}\right) = \sum_{k=0}^{\infty}\hat{{ }c}_{n, k}

と書ける。

補題5 c_{n, k}, \ \hat{{ }c}_{n, k}は全てのk \geq 0に対して正であり、
\displaystyle \frac{c_{n, k}}{\hat{{ }c}_{n, k}} \sim \frac{6n+2k+2}{2k+1}\left(\frac{n+k}{2n+k+1}\right)^{\frac{s+1}{2}}, \quad (n \to \infty)
が成り立つ。

証明. 正であることは以下の表示から即座にわかる:

\displaystyle c_{n, k} =R_n(n+1+k) = \frac{2^{6n}(n!)^{s-5}\prod_{j=0}^{6n}(k+1+\frac{1}{2}j)}{\prod_{j=0}^n(n+k+1+j)^{s+1}} = \frac{(n!)^{s-5}(6n+2k+2)!\{(n+k)!\}^{s+1}}{2(2k+1)!\{(2n+k+1)!\}^{s+1}} ー①,

\displaystyle \hat{{ }c}_{n, k} = R_n(n+\frac{1}{2}+k)=\frac{2^{6n}(n!)^{s-5}\prod_{j=0}^{6n}(k+\frac{1}{2}+\frac{1}{2}j)}{\prod_{j=0}^n(n+k+\frac{1}{2}+j)^{s+1}}.

また、

\displaystyle \frac{c_{n, k}}{\hat{{ }c}_{n, k}} = \frac{\prod_{j=0}^{6n}(2k+2+j)}{\prod_{j=0}^{6n}(2k+1+j)}\left(\frac{\prod_{j=0}^n(n+k+\frac{1}{2}+j)}{\prod_{j=0}^n(n+k+1+j)}\right)^{s+1}

であり、

\displaystyle \prod_{j=0}^n(n+k+\frac{1}{2}+j) = 2^{-(n+1)}\frac{(4n+2k+1)!!}{(2n+2k-1)!!} = 2^{-2(n+1)}\frac{(4n+2k+2)!(n+k)!}{(2n+k+1)!(2n+2k)!}

および

\displaystyle \prod_{j=0}^n(2n+k+1+j) = \frac{(2n+k+1)!}{(n+k)!}

なので、補題4より

\begin{align} \frac{c_{n, k}}{\hat{{ }c}_{n, k}} &= \frac{6n+2k+2}{2k+1}\left\{2^{-2(n+1)}\frac{\binom{4n+2k+2}{2n+k+1}}{\binom{2n+2k}{n+k}}\right\}^{s+1} \\ &\sim \frac{6n+2k+2}{2k+1}\left\{2^{-2(n+1)}\cdot \frac{2^{4n+2k+2}}{\sqrt{\pi(2n+k+1)}}\cdot \frac{\sqrt{\pi (n+k)}}{2^{2n+2k}}\right\}^{s+1}\\ &\sim \frac{6n+2k+2}{2k+1}\left(\frac{n+k}{2n+k+1}\right)^{\frac{s+1}{2}} \end{align}

が得られる。 Q.E.D.

命題3 g(x)
\displaystyle g(x):=\frac{2^6(x+3)^6(x+1)^{s+1}}{(x+2)^{2(s+1)}}
とし、多項式
x(x+2)^{\frac{s+1}{2}}-(x+3)(x+1)^{\frac{s+1}{2}}
は唯一つの正の実根をもち、それをx_0とする。このとき、
\displaystyle \lim_{n \to \infty}r_n^{\frac{1}{n}}=\lim_{n \to \infty}\hat{{ }r}_n^{\frac{1}{n}}=g(x_0)
および
\displaystyle r_n \sim \hat{{ }r}_n, \quad (n \to \infty)
が成り立つ。

証明. q := \frac{s+1}{2} \geq 4とおいて、f(x)

\displaystyle f(x) := \frac{x+3}{x}\left(\frac{x+1}{x+2}\right)^q

とする。

f(x)の対数微分をとると

\displaystyle \frac{f'(x)}{f(x)} = \frac{1}{x+3}-\frac{1}{x}+q\left(\frac{1}{x+1}-\frac{1}{x+2}\right) = \frac{(q-3)x^2+3(q-3)x-6}{x(x+1)(x+2)(x+3)}

となり、(q-3)x^2+3(q-3)x-6は正の根は唯一つだけもつので、それをx_1とおくと

x 0 \cdots x_1 \cdots \infty
f(x) \infty \searrow f(x_1) \nearrow 1

と増減表が書ける。従って、f(x)=1となるようなx > 0が唯一つ存在し、それがx_0である。f(1) = 4\cdot \left(\frac{2}{3}\right)^q < 1なので、0 < x_0 < 1である。

主張 k_0(n)= x_0n+O(\sqrt{n}), (n \to \infty)なる漸近挙動を示す正整数k_0(n)(k_0と略記)が存在し、
\displaystyle \lim_{n \to \infty}r_n^{\frac{1}{n}} = \lim_{n \to \infty}c_{n, k_0}^{\frac{1}{n}}, \quad \lim_{n \to \infty}\hat{{ }r}_n^{\frac{1}{n}} = \lim_{n \to \infty}\hat{{ }c}_{n, k_0}^{\frac{1}{n}}
\displaystyle \lim_{n \to \infty}c_{n, k_0}^{\frac{1}{n}} =\lim_{n \to \infty}\hat{{ }c}_{n, k_0}^{\frac{1}{n}},\quad \lim_{n \to \infty}\frac{r_n}{\hat{{ }r}_n}=\lim_{n \to \infty}\frac{c_{n, k_0}}{\hat{{ }c}_{n, k_0}}
が成り立つ。

主張の証明. 厳密な理解が現状得られていないため省略する。 論文から読み取れる証明の概略は、①を使うと c_{n, k+1}/c_{n, k} \fallingdotseq f(k/n)^2がわかるためc_{n, k}k_0/n \fallingdotseq x_0なるk_0番目付近で最大となり、r_nの漸近挙動にはc_{n, k_0}のみが寄与するというもの。また、補題5より\hat{{ }c}_{n, k+1}/\hat{{ }c}_{n, k} \fallingdotseq c_{n, k+1}/c_{n, k}なので\hat{{ }r}_nの漸近挙動にも\hat{{ }c}_{n, k_0}のみが寄与する。 主張の証明終わり.

主張、①、補題4より

\begin{align} &\lim_{n \to \infty}r_n^{\frac{1}{n}} = \lim_{n \to \infty}c_{n, k_0}^{\frac{1}{n}} \\ &= {\scriptsize \lim_{n \to \infty}\Biggl\{(\sqrt{2\pi n})^{s-5}\left(\frac{n}{e}\right)^{(s-5)n}\sqrt{2\pi(6n+2k_0+2)}\left(\frac{6n+2k_0+2}{e}\right)^{6n+2k_0+2}(\sqrt{2\pi(n+k)})^{s+1}\left(\frac{n+k_0}{e}\right)^{(s+1)(n+k_0)}} \\
&\quad \quad \quad {\scriptsize \frac{1}{2\sqrt{2\pi(2k_0+1)}}\left(\frac{e}{2k_0+1}\right)^{2k_0+1}\frac{1}{(\sqrt{2\pi(2n+k_0+1)})^{s+1}}\left(\frac{e}{2n+k_0+1}\right)^{(s+1)(2n+k_0+1)}\Biggr\}^{\frac{1}{n}}}\\ 
&= \frac{(2x_0+6)^{2x_0+6}(x_0+1)^{(s+1)(x_0+1)}}{(2x_0)^{2x_0}(x_0+2)^{(s+1)(x_0+2)}} = \frac{2^6(x_0+3)^6(x_0+1)^{s+1}}{(x_0+2)^{2(s+1)}}f(x_0)^{2x_0} = g(x_0)\end{align}

と極限を計算できる。ここで、一番長い部分の計算においては、(s-5)+6+2x_0+(s+1)(x_0+1) = 2x_0+(s+1)(x_0+2)に注意して、nを分配してk_0/n \to x_0に注意して極限をとればよい。そうして、主張および補題5から

\displaystyle \lim_{n \to \infty}\frac{r_n}{\hat{{ }r}_n}=\lim_{n \to \infty}\frac{c_{n, k_0}}{\hat{{ }c}_{n, k_0}} = \lim_{n \to \infty}\frac{6n+2k_0+2}{2l_0+1}\left(\frac{n+k_0}{2n+k_0+1}\right)^q = f(x_0)=1

を得る。 Q.E.D.

証明の完了

s=25をとる。命題3よりr_n \sim \hat{{ }r}_nであり、補題5よりr_n > 0なので、十分大きいnに対して

\displaystyle 7r_n-\hat{{ }r}_n = r_n\left(7-\frac{\hat{{ }r}_n}{r_n}\right) > 0

が成り立つ。また、命題2より

\displaystyle 7r_n-\hat{{ }r}_n = \sum_{\substack{i=5 \\ i: \text{奇数}}}^{25}b_i\zeta(i)+b_0, \quad b_0, b_5, \dots, b_{25} \in \mathbb{Z}/d_n^{25}

と書ける。\zeta(5), \zeta(7), \dots, \zeta(25)が全て有理数であったと仮定する。その分母の最小公倍数をaとすれば、十分大きいnに対して

ad_n^{25}(7r_n-\hat{{ }r}_n)は正整数 ー②

が成り立つ。

さて、数値計算を行うとx_0=0.00036713...であり、命題3より

\displaystyle \lim_{n \to \infty}(7r_n-\hat{{ }r}_n)^{\frac{1}{n}} = \lim_{n \to \infty}r_n^{\frac{1}{n}}\left(7-\frac{\hat{{ }r}_n}{r_n}\right)^{\frac{1}{n}} = g(x_0) = \exp (-25.292363...)

であることがわかる。よって、

7r_n-\hat{{ }r}_n = e^{-25.292363...n+o(n)}

である。また、数列lcm[1,2,…,n]のgrowthと素数定理 - INTEGERSの定理より、25(1+\varepsilon) < 25.292363...であるように\varepsilonをとると(例えば\varepsilon=0.011)、十分大きいnに対して

d_n < e^{(1+\varepsilon)n}

が成り立つので、

\displaystyle 0 < ad_n^{25}(7r_n-\hat{{ }r}_n) < ae^{25(1+\varepsilon)n-25.292363...n+o(n)} \xrightarrow{n \to \infty} 0.

よって、十分大きいnに対して②は成立しないことになり矛盾する。すなわち、背理法によって\zeta(5), \zeta(7), \dots, \zeta(25)の少なくとも一つは無理数でなければならないことが示された。 Q.E.D.

*1:和の順番は補題1と入れ替わっている(指数部分のsが一定であるために可能)。

*2:F_4(t)以降の計算には二重階乗の計算を行えばよい。

*3:F_4(t)を得る部分ではj \mapsto n-j+1と変数変換を行う。

*4:2l-1 < nである。