インテジャーズ

INTEGERS

数、特に整数に関する記事。

2018-01-01から1年間の記事一覧

代数的数の加減乗除

定義 零でない有理数係数一変数多項式の根となるような複素数のことを代数的数とよぶ。代数的数について、を根に持つ零でない有理数係数一変数多項式の中で次数が最小でモニックなものをの最小多項式といい、の最小多項式の次数をの次数とよぶ。定理 を代数…

高木貞治の論文"Zur Theorie der natürlichen Zahlen"を読む

高木貞治博士の論文を読むシリーズ第二弾です。第一弾はintegers.hatenablog.comでした。今回は高木博士が50代後半の時に出版された論文Teiji Takagi, Zur Theorie der natürlichen Zahlen, Proceedings of the Imperial Academy of Japan, Vol. 7, (1931), …

抽象的素数大富豪

素数大富豪についてはintegers.hatenablog.comをご覧ください。最初に出た素数大富豪の公式ルールは2014年9月19日公開のhttps://t.co/K5Tf8SeNHWでした。しかし、twitterか何かで「素数大富豪のルールガバガバだな」というような文を見かけたので、ルールを…

アックス−グロタンディークの定理

体と正整数に対して、写像が多項式写像であるとは、が存在してが成り立つときにいいます。この記事ではTaoの記事とそのコメント欄を参考に次の定理のSerreの議論に基づいた証明を解説します。定理(Ax, Grothendieck) 多項式写像が単射であれば全射である。Hi…

自然数の複雑度

自然数の複雑度とは、足し算と掛け算と括弧の使用のみを許してをだけで表示するのに必要なの個数の最小値のことを言います。例えば、との複雑度はです。の複雑度をと表すことにしましょう。 Question1 という表示があるが、は一般に成り立つだろうか? 複雑…

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はひっくり返した数を足して立方数となるような最小の素数です:にLychrelプロセスを一回実施した結果は回文数ではないですが、偶然回文数の三乗になっていますね。を素数とその反転の和で書く方法はなど他にもありますが、同じような表示を持つ次の立方数は…

差分形式と離散ストークスの定理

Stokesの定理の離散版(の一つ)について軽くまとめます。通常のStokesの定理についてはtsujimotter.hatenablog.comをご覧ください*1。 超立方体と差分形式 を正整数とし、次元Euclid空間を考える。 と に対して、をで定める。を固定して全てのを考えた達のな…

楔数

相異なる三つの素数の積として表される整数のことを楔数といいます。最小の楔数はです。ひっくり返しても楔数であるような最小の整数はです()。最小の連続楔数は。最小の三連続楔数は)。四連続楔数は存在しません(四連続整数は少なくとも一つがの倍数で平方…

多項式に関する簡単な問題2

昔紹介した問題*1問題 を正整数とする。有界なる変数複素係数多項式は定数に限ることを示せ。の最もシンプルだと感じた証明を書いておきます。ただし、一変数の場合への帰着のみ書きます(一変数の場合は簡単)。証明. 変数多項式はで有界であると仮定する。を…

20-21世紀の素数年

20世紀の素数年 21世紀の素数年 ところでお気づきだろうか? これらを全て足したは素数である。

112359550561797752809×99=11123595505617977528091

は倍すると両端にをくっつけた数になるという性質を持っています: 一般の進法でこの性質を考えると、が成り立つようなを求めるという問題が得られます(は正整数では非負整数)。変形すれば、となります。のときはという条件になりますが、実際にはなので解な…

素数を二つ紹介

みんな素数。 を番目の素数とするとです。みんな素数。題名に反して十の素数を紹介してしまいました☆

Schinzelの仮説H

次のような予想があります。Schinzelの仮説H 次数が以上の個の整数係数多項式 に対して、が全て素数となるような正整数が無数に存在するための必要十分条件は次の三条件を満たすことである: (I) の先頭項は正である. (II) はにおいて既約. (III) 各素数毎に…

最近購入したトランプとノート

表題の通り最近購入したトランプとノートを紹介します。ついでにどうでもよい情報ですが、私が愛用している筆記具はサラサクリップ黒0.5(ボールペン)です*1。www.zebra.co.jp BICYCLEのトランプ 素数大富豪プレイヤーとして格好良いトランプを一組持っておき…

奇数の完全数に関するHeath-Brownの手法

奇数の完全数が存在するかしないかというのは未解決問題です。integers.hatenablog.comしかしながら部分的な研究成果は多数あって、例えば1913年にDicksonが「与えられた個数の素因数を持つような奇数の完全数は有限個しか存在しない」ということを証明しま…

HAPPY BIRTHDAY

三つの平方数の平均値 Brocard-Ramanujan方程式の解は三つと強く予想されており、その三つの平方数はでした。integers.hatenablog.com実はこの三つの平方数の平均がRamanujanのタクシー数になることは記憶に値します。 ピアノの話 実家のアップライトピアノ…

鳩ノ巣原理

鳩ノ巣原理(pigeonhole principle)、鳩の巣原理、Dirichletの(箱入れ)原理(box principle)、Dirichletの抽斗論法、部屋割り論法などと呼ばれる次の原理*1は有名です。鳩ノ巣原理 を正整数とする。羽以上の鳩を個の鳩ノ巣に入れるとき、少なくとも一つの鳩ノ…

105に関するエルデシュの予想や剱岳など

という整数について、これまでに二つ記事を書いたことがあります。integers.hatenablog.comintegers.hatenablog.com今日は更に二つほど紹介しようと思います。 Ramanujanの公式 Ramanujanの発見した次の公式にが登場します。証明. は素数をわたるものとして…

リスーピアに行ったよ☆

リスーピアに初めて遊びに行ってきました。リスーピア - 施設案内 - パナソニックセンター東京 - コーポレートショウルーム - 企業情報 - Panasonic数字列を入力するとそれが円周率の小数点以下何桁目に現れるかを表示してくれるものがあったので、試しに好…

仮面ライダーの話数の数式とインテジャーズ

仮面ライダービルドの話数に現れる数式に関するINTEGERS記事の紹介です。

メルセンヌお助け数

Mersenne数の記事integers.hatenablog.comで紹介したようにMersenneは間違いをおかしていて、例えば、は素数でないにも関わらず素数だと予想していました。 ところで、は二進法で表示するとがそれぞれ個、個並ぶ数ですが、他の進法で考えるとが個または個並…

少なくとも一つは必ず無理数なんだ。

Apéryは伝説を残した。integers.hatenablog.comその後、2000年を過ぎたあたりにRivoalという天才が彗星の如く現れ、 の中には無理数が無数に存在するということを証明した(Ballと共著でInvent. Mathに掲載されている)。Rivoalは の中に少なくとも一つ無理数…

明示的ABC予想

ABC予想について述べた記事integers.hatenablog.comにおいて「強い予想」として次を述べていました:予想 任意のABCトリプルに対して不等式が成り立つ。この予想は A. Granville, T. J. Tucker, "It’s as easy as abc", Notices of the AMS, 49 (2002), 1224…

スターリングの公式

スターリングの公式のRobbinsによる初等的な証明の解説記事。

凸多角形を分割したときの小凸多角形の辺数の平均について

凸n角形(3 <= n <= 7])を二つ以上の凸多角形に分割するとき、各小多角形の辺の数の平均は6より小さいことを示せ。

Carlitzの恒等式

は関-Bernoulli数*1とする。このとき、次の恒等式が成り立つ: 証明*2. 次のように母関数を計算する:これはとの入れ替えで不変である。 Q.E.D. *1:この記事では. *2:by Prodinger.

eが二次の有理数係数方程式を満たさないことの証明

が無理数であることはintegers.hatenablog.comで証明しており、が超越数であることもintegers.hatenablog.comで証明していますが、この記事では古くから知られている*1「が二次の有理数係数方程式を満たさないことの初等的証明」を紹介します。これは、の無…

ハイパーグラフ除去補題ー4

定義 記事3の正則化補題の記号・仮定・帰結を考え、とする。各に対して、のアトムをとる。このとき、(これは空集合かのアトム)がgoodであるとは、任意のおよびに対して次の二つの評価が成り立つときにいう: −① −②が負となるような状況は扱わない。, のアト…

素数魔方陣ー2

Rudolf Ondrejkaの素数魔方陣 という素数は、の素数魔方陣*1のうち定和が最小となるようなものの中心の数です。 この素数魔方陣はRudolf Ondrejkaによって発見されたものです。 大きいサイズの素数魔方陣の存在性 ちなみに、魔方陣があった場合、それを構成…

鞄とその和集合の比較ー1

Cauchy-Davenportの定理 を素数とし、を巡回群の空でない部分集合とする。をと定義する。このとき、次が成り立つ:Cauchy-Davenportの定理 これより、であればの任意の元はの元との元の和として表すことができることがわかる。証明. とする。主張 が成り立つ…