インテジャーズ

INTEGERS

数、特に整数に関する記事。

等間隔に並ぶ素数を追い求めて

Dicksonの予想ととある疑問

素数に関する次のような予想が知られています。自然数はこの記事では正の整数とします。Dicksonの予想 (1904) 自然数に対し、は自然数、は整数とする。もし、「各素数毎に自然数が存在して積はで割り切れない」が成り立つならば、が全て素数となるような自然…

最近の話題

最近の話題 講演 素数の織り成す構造〜ガウスからグリーン・タオへ〜 MATH POWER 2017 - INTEGERSでは時間の都合上、Green-Taoの定理の先にあるものとして未解決問題であるErdős-Turán予想を紹介して終わりました。ここでは既に証明されているGreen-Taoの定…

素数の織り成す構造〜ガウスからグリーン・タオへ〜 MATH POWER 2017

講演スライドを公開します。スライド番号や間違い等は再構成・修正してあります。 スライドはKeynoteで作成し、数式はLaTeXiTを利用して作成しました。 1枚目 2枚目 3枚目 4枚目 5枚目 6枚目*1 7枚目 8枚目*2 9枚目 10枚目 11枚目*3 12枚目*4 13枚目*5 14枚…

グリーン・タオ論文を読み終える

9/6から始めた短期集中連載『等間隔に並ぶ素数を追い求めて』もこの記事で最後となります。integers.hatenablog.comまず、Baudetの予想 = van der Waerdenの定理を証明し、integers.hatenablog.comTaoによる、vdWの定理を用いたSzemerédiの定理の緻密な証明…

グリーン・タオ論文の§10を読む(その二)

この記事でGoldston-Yıldırım型定理Bを証明します。(再掲) Goldston-Yıldırım型定理B (Proposition, 9.6) を正整数とし、をを満たすような相異なる整数とし、とおく。を長さが以上であるような内の区間との共通部分として、と互いに素な整数をとる(以上、以…

グリーン・タオ論文の§10を読む(その一)

§10 Correlation estimates for を読みます。前節において、Goldston-Yıldırım型定理A, Bを証明することに全てが帰着されました。この記事ではGoldston-Yıldırım型定理Aを証明します。ただし、Riemannゼータ関数が関わるコンタワー積分の漸近挙動に関する補…

グリーン・タオ論文の§9を読む(その三)

Goldston-Yıldırım型定理Bを仮定して、が-相関条件を満たすことを証明します。補題 (Lemma 9.9) 正整数パラメータに対して関数 が存在して、次の三条件を満たす: (i)任意の零でない整数に対して である。 (ii)相異なる個の整数を任意にとったときに、が成り…

グリーン・タオ論文の§9を読む(その二)

Goldston-Yıldırım型定理Aを仮定して、が-線形形式条件を満たすことを証明します。命題 (Proposition 9.8) は-線形形式条件を満たす。を代表元をとる関数とする(全成分で代表元をとる写像も同じ記号を用いる)。証明. を正整数とする。分母・分子の絶対値が以…

グリーン・タオ論文の§9を読む(その一)

§9 A pseudorandom measure which majorisies the primes を読みます。(無限版)Szemerédiの定理は整数からなる集合が任意の長さの等差数列を含むための(上漸近密度が正であればよいという)十分条件を与える定理でした。従って、実際に個々のケースで等差数列…

グリーン・タオ論文の§8を読む(その二)

前記事の命題(一般化Koopman-von Neumannの構造定理)の証明はTao(2006)の論文で扱ったエネルギー増加法の考え方で証明されます*1。この考え方に基づいて、構造定理は次の命題に帰着されます。命題 (反復ステップ, Proposition 8.2) を-擬ランダム測度とし、…

グリーン・タオ論文の§8を読む(その一)

§8 A Furstenberg tower, and the proof of Theorem 3.5 を二回に分けて読んでいきます。この記事では、擬ランダム測度に対するSzemerédiの定理 (Thm 3.5)を構造定理 (Prop 8.1)に帰着させます。ここで、改めてTaoによるSzemerédiの定理の証明のスキームを思…

グリーン・タオ論文の§7を読む(その二)

後半で基本Gowers反一様関数達に良い性質を持つ-加法族を付随させる命題を証明します。命題 (Proposition 7.3) を-擬ランダム測度とし、を整数とする。また、は基本Gowers反一様関数、 はパラメータ、は§7(その一)の命題で存在する-加法族であり、とする。こ…

グリーン・タオ論文の§7を読む(その一)

§7 Generalized Bohr sets and -algebras を二記事に分けて読みます。最初は上の-加法族に関する基本用語が述べられていて、Tao(2006) §6(その一)の内容と重複しています。ので、全部省略できますが、前の記事で述べていなかった点を補足しておきます。を上…

グリーン・タオ論文の§6を読む(その二)

後半では基本Gowers反一様関数に関する一様分布性を証明します。定義 を-擬ランダム測度とする。が任意の に対して成り立つような関数 によって と表されるような関数のことを基本Gowers反一様関数とよぶ。とすると、§6(その一)の補題より、十分大きい に対…

グリーン・タオ論文の§6を読む(その一)

§6 Gowers anti-uniformity を二回に分けて読んでいきます。定義1 関数 に対して、のGowers反一様性ノルム をで定義する。はにノルム を付随して得られるBanach空間。感覚としては、Gowers一様性ノルムが小さければ小さいほどGowers一様性が高く、Gowers反…

グリーン・タオ論文の§5を読む(その二)

後半のこの記事では、擬ランダム測度に対する一般化von Neumann定理の主張を述べて、(かつ)の場合の証明をした後に一般の場合を証明します。論理的にはの場合の証明を別途与えることは不要ですが、証明の本質を理解するためにGreen-Taoが書いてくれているの…

グリーン・タオ論文の§5を読む(その一)

§5 Gowers uniformity norms, and a generalized von Neumann theorem を二回に分けて読みます。この記事ではGowers一様性ノルムの定義を行います。Tao(2006)の方でも既に取り扱っていますが、Gowers内積を用いてGowers一様性ノルムを再定義し、Tao(2006)で…

グリーン・タオ論文の§3を読む

§3 Psuedorandam measures を読みます。測度の線形形式条件、相関条件を定義し、擬ランダム測度に対するSzemerédiの定理を定式化します。定義1 (線形形式条件, Definition 3.1) を測度とする。正整数パラメータに対して、が-線形形式条件を満たすとは次が成…

グリーン・タオ論文の§2を読む

§2 An outline of the proof には重要な発想の転換について書かれています。何もないところからいきなり歴史的大難問を解くのは難しいでしょう。今となっては我々はSzemerédiの定理という等差数列に関する大定理を手中にしています。これを足掛かりにGreen-T…

グリーン・タオ論文の§1, 4を読む

それでは記念碑的論文B. Green, T. Tao, The primes contain arbitrarily long arithmetic progressions, Annals of Mathematics. 167 (2), (2008), 481–547.を読んでいきましょう。§1から§4まではイントロ的内容で本格的な証明は§5から始まります。なので、…

タオのセメレディ論文の§10を読む(その二)

この記事でSzemerédiの定理の証明が完結します。 §6(その一)の補題3直後の式、Cauchy-Schwarzの不等式、前記事④より、任意のに対してが成り立つ。従って、Markovの不等式より −①である。に対してをと定義する。このとき、各に対して −②が成り立つ。理由: に…

タオのセメレディ論文の§10を読む(その一)

Taoの論文の最終節: §10 Recurrence for almost periodic functions に入ります。Szemerédiの定理の証明で残っているのは(再掲) 一様概周期関数の回帰性 (Theorem 3.3) を整数とする。非負値有界関数 は或る に対して1. 2. 3. を満たすと仮定する。このとき…

タオのセメレディ論文の§9を読む(その二)

この記事では、前記事の命題の証明を完成させます。定義 をの部分集合とし、とする。に対して とすると、はHilbert空間になる*1。に対して-ノルム はで与えられる。前記事の第四帰着を更にもう一段階帰着させます。第五帰着 前記事命題の設定のもと、任意の…

タオのセメレディ論文の§9を読む(その一)

§9 Compactness on atoms, and an application of van der Waerden's theorem を二回に分けて読んでいきます。残すところは構造化回帰定理(Thm 3.3)のみですが、これは§9と§10の二節を使って証明されている最も難しい部分となります。この記事ではKeyとなる…

タオのセメレディ論文の§8を読む

§8 Proof of the structure theorem では前節のエネルギー増加法を用いて構造定理(Thm 3.5)を証明します。命題 (構造定理ダイコトミー, Lemma 8.1) を整数とし、非負値有界関数 は或るに対して条件を満たすと仮定する。を任意の関数とする。また、は整数で、…

タオのセメレディ論文の§7を読む

§7 The energy incrementation argument ではエネルギーを定義し、構造定理(Thm 3.5)と構造化回帰定理(Thm 3.3)の証明で用いるエネルギー増加法を抽象的な形で用意します。定義 (エネルギー) 関数の組 と 上の-加法族 に対して、エネルギー をと定義する。§6…

タオのセメレディ論文の§6を読む (その三)

前の記事では一様概周期関数に対して良い上の-加法族が存在することを示しましたが、この記事では複数の一様概周期関数によって生成される上の-加法族について議論します。定義 (Definition 6.4) 整数 に対して、上の-加法族が-コンパクトであるとは , が存…

タオのセメレディ論文の§6を読む (その二)

この記事では、一様概周期関数に対して良い振る舞いをする上の-加法族の存在を示します。命題 (Proposition 6.2) を一様概周期関数*1とし、とする。このとき、とのみに依存する-加法族が存在して、となる任意の非負整数 となる任意の実数 に対して のアトム…

タオのセメレディ論文の§6を読む (その一)

§6 Factors of almost periodic functions に入ります。まず、上の-加法族の基本事項をまとめます。定義1 (Definition 6.1) の部分集合族*1が上の-加法族であるとは、 が成り立つときにいう*2。また、包含関係について極小となる空でないの元をのアトムと呼…

タオのセメレディ論文の§5を読む (その二)

§5 Almost periodic functions の後半です。構造定理(Thm 3.5)は前半で導入した一様概周期性と§4で導入したGowers一様性のある種の双対性と思うことができます。ここでは二つの双対性(命題1&命題2)を示しますが、命題1はSzemerédiの定理の証明には使わな…